21.なんて物を…!
「う~ん、テオドール様に相談しちゃえば一発で即解決とはいかないねぇ、これ」
「むしろ令嬢達の格好の獲物になるよね、きっと…」
「ですよねー…」
テオに相談して噂の否定なしに令嬢達に彼自身が制裁を行えば、噂の信憑性が増して更に行為が悪化する可能性が高い。
彼との関係を暴露したからこその結論と謂える。
けれど、議論としては振り出しに戻ったようなものだ。
「…それでも、相談するのが一番…」
「それもそうなんだよねぇ。でも、今回の件で関係がほぼ明るみになるけれど公爵家としてはいいのかなぁ」
「…何も聞いていないんです。彼自身のこととか、家のこととか」
今知っている事の殆ども第三騎士団のフィン副団長さんに教えてもらった物ばかり。
貴族としての彼も、騎士としての彼も、家族としての彼も全然知らない。
「ちなみにどこまで知ってるの?」
「えーっと…テオドール・リィ・アルガータ、公爵家次男で第三近衛騎士団騎士団長。…以上ですね」
「僕より知らないねぇ、びっくりだよ」
「恋人なんだよね…?」
「アハハ……はあ…」
本当にあの人は自身について私に何も教えてくれない。年齢も、誕生日も、好きなものも、家族についても。
そして私のことについても何も尋ねてくれない。年齢も、誕生日も、好きなものも、家族についても。
お互いに何も知ろうとしないままで、はたして恋人と言えるのだろうか。
「う~ん、僕の知っていることだけだけど、伝えておくね。先ず、テオドール様には兄と姉が一人ずつ居て、嫡男である兄が公爵家を継ぐ予定だねぇ。それでお姉さんの方は、ユーグワスリン侯爵家に嫁いでいるはずだよぉ。だから将来、テオドール様は公爵家が所有している爵位のひとつを継ぐことになるかなぁ」
お兄さんとお姉さんが居たんだ。
でも、テオの我が儘な所は末っ子っぽいかも。
「…ありがとうございます、勉強になります…」
「うん、どういたしましてぇ」
「…ねえ、テオドール騎士団長様に直接聞いたりしないの?」
「聞いたことない、ですね」
「どうして?」
どうして、か…。
本当にどうしようもない理由なんだよね…。
「…どうせ短い付き合いになる、と割り切っていたので」
「うん?本当にどういう事?」
「プロポーズの言葉が信じられなくて、王都に戻ったら貴族令嬢に目移りして私のことすぐに忘れると思ってて…魔法省で働き始めてからは正直、便利屋扱いされてるなって感じていて…」
「…どうしてそんな風に感じたのか、聞いてもいい~?」
食事とかお酒とか転移魔法とかポーションとか色々あるけど、これを全部言うとテオ自身の評判が大暴落すると思う。
この世界の恋人達がどんなことをするのが普通なのか、私知らないわ、そういえば。
私の考えが異常なのか、それともテオ自身に問題があるのか分からなくなってきた…。
「…質問に質問を重ねるのは失礼だと分かっているのですが。ユリアさん、ユリアさんは好きな人にどんなことをされたら嬉しいですか?」
「え、えっとねー、可愛いって褒められるのとかー、変化にすぐ気づいてくれるとか!…あ!あと、プレゼントくれるのも嬉しいよね!」
良かったー!!!私がおかしいんじゃなくて!!!
そういうところはどこの世界も共通なんだよ!やっぱり!なのに、何もしないでこっちが惚れると思い込んでるのホントに腹立つ!
私はこれ以上、彼の言動に対して黙っていることが我慢できなかった。
「そうですよね!デートの誘いすらなく、褒めるのは料理だけ!それなのにどうして信用できます?!」
「それ本当?!」
「本当です!!毎日毎日、朝から昼食作って持って行っているのに、お礼なんて一回も言われたことないし、こっちから聞かないと味の感想すら言わないんですよ!あの人!」
「最っ低!!!そんな人だったなんて信じらんない!!!」
「でしょう?!それでプロポーズされたって、何の冗談?って感じですよ!!」
唐突に始まったテオへの日頃の愚痴は大いに盛り上がった。
今まで誰にも言えなかったことをユリアさんに言えたうえに同意してくれてすっきりした。
ただ傍で聞いていた男性二人は内心、「「確かに少しどうかと思う部分はあるけど、そこまで言わなくても…」」とテオドールに同情するとともに、女性二人に引いていたのだった。
「プレゼントを渡すのだって、もっとムードってものがあると思うの!!」
「ムードは大事よね!それで、プレゼントは何を貰ったの?」
「あ、これです!」
服の下に隠して今も付けているネックレスを取り出す。
テオと同じ色彩のネックレス。
小振りでシンプルなデザインなので普段使いしやすいし、センスもいい。
そこだけは褒めてもいいかもしれない。
「これ可愛い!」
「そうなんですよ!なので気に入ってるんです」
「それに、テオドール騎士団長様の瞳と髪色よね!」
「そ、そうですけど…!」
「独占欲がすごいねー!!!」
「そんなんじゃないと思いますよ?!」
「いやーどうだかねー!」
渡された時、私も同じことを感じたけれど、他人に言われるのは恥ずかしい!
必死に否定するけれど、ユリアさんは揶揄ってくるだけで全然聞いてくれない。
「もう!本当に違います!」
「あながち間違ってないと思うよ?」
「ほらー!省長もこう言ってるよー?」
「省長!何でそう考えたのか説明して下さい!」
だってあのテオだよ?
絶対、適当に渡したに違いないんだから!
「うん。だって、ネックレスを贈る意味って“貴方は私だけのもの”とか“永遠に傍に居たい”とかだもん。あと直球なのだと“束縛”とか“独占”だよ?公爵家の一員である彼がそれを考慮せずに選ぶとは思えないなぁ」
私だけのものに、傍に居たい、独占、束縛…?!
省長の説明を聞いて口角が引き攣り、笑顔が維持できない。
だって、そんな感情を向けられる覚悟が決まってないんだもの!
「セナ〜?」
「他のご令嬢だったら頬を赤らめる所だよぉ〜?」
「もう!私を揶揄って遊ばないで下さい!」
本当に恥ずかしい…!
今でさえ顔を合わせづらかったのに、次会った時どんな顔をすればいいの…?!
そして。
「…結局どうするんだ…」
この中でマックだけが、現状が何も進展していないことに呆れていたのだった。
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