16.意外と性に合っているかも?
「それではこれより入省試験を開始するわ」
「よろしくお願い致します」
王城を訪れてからたったの一週間で場を整えられてしまった。
トムおじいちゃんに貰った家に結界魔法を厳重にかけて王都にある寮に住むようになり、現在は筆頭魔法士達が普段使用している訓練場で入省試験を受けるところだ。
といっても実力に関してはもうヒュドラ戦で把握されているらしいので簡単に全属性が扱えるかを確認するだけ。
「じゃあまず火魔法からね」
「はい。分かりました」
火、水、風、土、聖、闇、無の魔法を順番に出現させていく。
私の得意魔法である回復魔法と転移魔法の時には「おお!」と言うどよめきが聞こえてきたので、結構自分、すごいのでは?と自画自賛した。
「全属性確認完了、合格ね。特に回復魔法や転移魔法は使い手が少ない状況だからとても助かるわ。私は第八魔法省省長を拝命しているシュフィーナ・セルモルド。これからよろしくね」
「ありがとうございます。これからよろしくお願い致します」
「では、これから魔法省の中を案内するわね」
「はい」
魔法省の施設は騎士団とは反対の方向にあり、建物は意外と武骨な造りをしていた。
なんでも実験中のミスで爆発が発生することもあるらしく、わざわざ見た目にこだわって耐久性を下げるのは馬鹿らしいとのこと。
筆頭魔法士になる人は貴族が多いからもっと貴族らしい思考回路の持ち主ばかりだと思っていたので、これを聞いただけでも自身の筆頭魔法士の印象がガラッと変わった。
魔法省は騎士団と同様に十の管轄に区別されている。
テオが所属している第三騎士団・魔法省は基本的には王太子以外の王子や王女を護衛している。
第一騎士団・魔法省が国王陛下を、第二騎士団・魔法省が王太子を護衛し、その他の騎士団には王城の護衛や魔物討伐などを専門とする部隊が揃っている。
私が所属する事になっている第八魔法省は魔物討伐に必要な魔導具を開発する事を主とした部隊で、当然筆頭魔法士として討伐同行要請が来ることもある。
「ここが貴女が所属する第八魔法省よ」
説明をしてくれているシュフィーナ様の後を付いていくと一つの部屋に到着した。
部屋の中は使用出来ない程に物が山積みになっている執務机と椅子に同様の状態のお客様用のテーブルとソファがあり、床には書類や魔石などが足の踏み場もないほど散乱していた。
流石にここで毎日働くのは嫌だから、先ずは掃除からかな…。
そして汚部屋の奥から出てきたのはこれまたボサボサの髪にヨレヨレの服を身に着けた中年男性と部屋に見合わない清潔感のある可愛らしい女性、それから少し目付きの悪い男性だった。
「おお!ようこそ第五魔法省へ、歓迎するよ!僕は第五省長のサム・シーム、よろしくね」
「私はユリア・ライム!よろしくね!」
「…マック・アーリントン。よろしく」
「…本日からお世話になります、セナと申します。よろしくお願い致します」
「いいよいいよ、そんなに固くならなくて。敬語なんて魔法研究に必要ないしね!」
ユルイ…!でも助かる!貴族対応をずっとするのは大変だし、この状況を改善するのにもこの人の許可が必要だしね。
「…分かりました、楽にさせてもらいます。…で、この惨状は何ですか?」
「あ、はは…。僕掃除が苦手でねぇ…いつの間にかこうなっちゃうんだよね」
「…俺も…」
「私がいくら片付けても二人が汚してしまって…諦めました…」
なるほど?
「でしたら私が片付けても問題ないということですね?」
「うん、むしろありがたいよ!」
でも物が多すぎるからひとりだったら何時間掛かる事か…。
「私も手伝うね!」
「…頑張って」
「マックも一緒にやるのよ!」
「………分かった…」
手伝ってくれるのは本当にありがたい!
「では、掃除から始めさせて頂きます!」
「おー!」
「よろしくねぇ」
「では顔合わせも済んだし、私はそろそろ行くわ。頑張ってね」
「はい!ありがとうございました!」
シュフィーナ様が部屋から出て行った後はサム省長に意見を聞きながら三人でドンドン片づけをしていった。
けれどあまりにも物が多すぎて必要なものの識別だけでお昼までかかってしまった。
「もうそろそろお昼休憩にしようか」
「はい、分かりました。昼食に行ってきます」
「は~い、いってらっしゃい」
昼食に行く準備をしていく。
といっても体についてしまった埃を払うくらいなんだけど。
「ねぇ、一緒に食べない?」
「ごめんなさい。先約がありまして…」
「なら仕方ないね!」
ユリアさんが昼食に誘ってくれたけれど、生憎昼食は手作り弁当を一緒に食べたいとテオから誘われていて弁当を朝早起きして頑張って作って持ってきたのだ。
断りを入れてサム省長とマックを部屋に残して騎士団の建物に向かう。
特に待ち合わせもしていないので多分執務室で仕事をしながら待っていると思う。
第三近衛騎士団の執務室に到着し、ノックをして中を覗き込むと中にはテオだけがおり、書類仕事をしていたようだが、私が来たことで手を止めて顔を上げている。
「失礼致します。お待たせしました。」
「いや、問題ない。」
「どこで食べますか?」
「ここでいいだろう。」
「えっ?いいんですか?」
「特に機密書類もないから問題ない」
「では、お言葉に甘えて…」
テオの提案に従い、ソファに座って持ってきたお弁当を広げていく。それに倣うように彼も前のソファに腰かけた。
今日のお弁当のメインはサンドウィッチで、具材を彼の好きな物ばかりにした。
きっと喜んでもらえるはず。
準備が整うと彼はいつものように無言でサンドウィッチに手を伸ばし、口に運んでいく。
「どうですか?」
「うまいな。」
「それは良かったです。沢山作ってきましたので、いっぱい食べて下さいね。」
そして感想を聞いた私もお弁当のサンドイッチを手に取って食べ始める。
タマゴサンドやカツサンドなどを作って持ってきたけど、やっぱり私的ナンバーワンはレタスとチーズにハムのサンドイッチだ。レタスのシャキシャキ感が癖になる。
彼は以前よりもガッツリとした食べ応えのあるものを好んで食べてるように思う。騎士としての訓練や仕事でカロリーを使っているんだろうな。
食事を摂って雑談を少ししたら団員さん達が戻ってきてしまう前にお暇する。テオにとっても迷惑になってしまうので。
戻ってからは掃除の続きをした。
でも床にまで物が散乱していた部屋を一日で綺麗な状態に戻すのは不可能だった。
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第三章開始です。
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