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12.寂しくないし、そんな簡単にはいかない…!!!

テオがいない家が少し暗く感じるのはなぜだろう。



また独りぼっちになってしまった。

けれどこれで良かったはずだから後悔はしていない。


また朝のトムおじいちゃんのお墓参りを再開した。

彼がいた時は忙しくて何日かに一回くらいしか出来ていなかったけど、今は沢山時間があるから。




朝は簡単に済ませて森に入ってポーションの素材を集めていく。


帰ってきてからは仕分けをして軽い昼食を摂る。食べ終わったらポーション作りをして日が暮れたら夕食を食べてお風呂に入り、読書をして就寝する。


また違う日には魔物を狩って街にポーションと共に売りに行く。



そうして、私の生活は少しずつ元の日常に戻っていった。



彼がいなくなったことで底を尽いていた貯金も少しずつ戻ってきている。




…そう、戻っただけだ。トムおじいちゃんが亡くなって、テオを助けるまでのあの日々に。





暗くなってばかりじゃだめだよね!もっと楽しいことを考えないと!


醤油があったなら味噌もあるよね!


そう思って味噌や日本食に関係のある食材を探しに転移魔法でまた港町にやってきていた。



以前来た時は彼がいたので庶民的な区画やお店は見て回れなかったので、そういうところを重点的に探していく。魚介類も少なくなっているのでついでに買い足しておく。


久しぶりにお刺身が食べたくなったので、彼と一緒に言ったお店にまた行ってお刺身を味わう。



あの時の彼は面白かった。

生の魚を食べたことがなかったからか、すごく真剣な、覚悟を決めた顔で口に運んでいた。


一度食べるとそれからはおいしそうに味わって刺身を何度も手に取っていた。



その後は露店を回っていく。

イカやエビを塩で焼いただけのシンプルな串焼き、そこにさっぱりとした酸味のあるジュースを流し込む。



あの時の彼は庶民的なエールを飲んでいたけれど、口に合わなかったからか眉間に皺を寄せていたな。


彼と過ごした思い出ばかりが浮かんできて楽しいと同時に一人なんだと再認識してすごく虚しくなる。





…帰ろう。



予定よりだいぶ早いが、買い物を引き上げて転移魔法で家に帰る。


帰ってからは買ってきた魚介類の下処理をしていく。

終わったらゆっくりお風呂に浸かって早い夕食を食べていつものように読書をして就寝する。





一人暮らしを再開して数か月が経った。

正直この生活にも慣れたし、寂しさもあまり感じていない。



ついでに貯金も元の金額に戻った。

よく頑張った、私。


今日も朝からトムおじいちゃんのお墓参りをしてから朝食を摂って森に入っていく。


ある程度ポーションの材料を集めて家に帰って来ると、玄関にお客さんが来ていて呼び鈴が鳴っていた。






慌ててドアを開けると、そこには。



「久しぶりだな、セナ」

「…おかえりなさい、テオ。」

「ただいま戻った」


はにかむような笑顔をしたテオが立っていた。




正直すごく嬉しい。寂しく感じないなんて嘘だ。

本当は毎日すごくすごく寂しかった。


そしてこんなに早く会えるとは思っていなかったからか、久しぶりに見る彼は文句の付けようがないイケメンだった。



…でも、一体どうしたのだろうか?


「どうしているんですか?何かありましたか?」

「…帰らない方が良かったみたいな言い方だな。」

「いえいえそんなことはないですよ?会えて嬉しいです。」

「そうか、会えて嬉しいか。」



あ、しまった!


すぐに自身の失言に気が付いたが、もう遅いようだった。今の失言で彼がにやけた表情になってしまっている。これは揶揄ってくる事間違いなしだ。


こういう時は慌てて否定するよりサラッと肯定して流してしまった方がいいとあの時に学んだ。


「はい、嬉しいですよ。テオは嬉しくないんですか?」

「…そうか。私も嬉しい。会いたかった」


私がすんなり肯定したことに驚いていたが、すぐにまた嬉しそうな笑顔になって同意し、抱きしめてきた。


ハグされることは全くもって想定していなかったので是非ともいきなりはやめて頂きたい。あなたはとんでもないイケメンであると自覚してから行動するべきだと思う。



けど、彼の体温に一人ではないんだと実感してすごく安心した。





「とりあえず、中に入りましょう?」


流石にいつまでも玄関で抱き合っているわけにもいかないので離れてもらい、部屋に戻って紅茶を入れる。茶葉はあの時いい物に変えてからはずっと同じままだ。


紅茶を出すと彼は優雅に嗜んでいる。これを見ると本当に貴族なんだと再認識する。


「それで、どうしたんですか?」


私は先程言った質問を再度彼に投げかけた。

すると持っていたカップをソーサーに置いて視線を合わせてきた。


その視線に身体が固まってしまう。


…久しぶり過ぎるイケメンに対して少し身構えてしまうは仕方ないと思ってほしい。


心の中で言い訳をする私に対して彼は先程に質問に答えてくれる。


「ああ、お礼をと思ってな」

「お礼、ですか?」

「ああ。改めて礼を言う。助けてくれたこと感謝している、ありがとう」

「いえいえ!どういたしまして!」


…貴族からのお礼は期待してもいいんですよね?いいんですよね?!


さっきと打って変わって心の中を狂喜乱舞させていると「これだ」という言葉と共にテーブルの上にドンッ!と、重そうな袋が乗せられた。


この時点で踊り狂いそうなほどテンションが上がっていたが、流石に自重した。ドン引きされる趣味はないので。


そしてここで食いつくような態度も出さない。戸惑っています。という雰囲気を出すのだ。


「えっと…。これは…。」

「金だな。私の治療費や生活費などが入っている」


はい!分かってます!!お金大好き!!!


袋の中身がすっごく気になる。いくらあるのか知りたい!開けたい、開けたい!




ここで言っておくと別にセナは守銭奴というわけではない。

むしろおいしい物や欲しい物には基本躊躇いなく使うタイプである。


しかしこの世界に来てすぐのお金がないその日暮らしの生活やテオが来たことにより貯金がなくなったことで安心のためにお金を貯めておきたいだけである。


だからといってお金にがっつくような姿は見られたくはないのだ。


これ以上は我慢できないとセナは判断しておずおずとテオを上目遣いで見上げて尋ねる。


「えっと…開けてみてもいいですか?」

「ああ」

「ありがとうございます」


態度には表さないようにいっくらかな、いっくらかな!とワクワクしながら袋を開けると、やはりそこには沢山の硬貨が入っていた。大体いくらぐらいになるのかを頭の中で計算していく。


そして事実を知ってしまった。




これ、そんなに多くない…と。



これには王家からの報奨金も入っているので決して金額が少ないわけではない。むしろ一般市民に渡すには多いくらいである。


しかしここでのテオの生活は療養に剣や魔法の訓練、食事、読書、お茶会、買い物、晩酌、睡眠である。


食事もスパイスや新鮮な魚介類など場合によっては貴族よりもいい物を口にしていたし、活版印刷技術がまだないこの世界で暇つぶし用に買ってきていた本や気に入って毎日飲んでいたお酒も相当値が張るものだ。


その他を加味するとプラマイゼロ、若しくは自身の人件費を考えるとマイナスである。


「…これ、全部ですか…?」

「ああ」


彼のしたことを考えれば、本当にこれで全部なのかを確認してしまっても仕方がないことだろう。


勝手に期待しすぎたのと、もてなし過ぎたせいで盛り上がっていたテンションもダダ下がりしてしまった。


まあ?お礼は気持ちが大事なのであって、金額ではないからね?そうだもんね?


思い込むようにして自身の感情の乱高下をどうにか鎮めていく。

ついでに深呼吸も忘れない。



その時のテオは、袋を開けて深呼吸をしているセナを不思議そうに見つめていた。


彼はセナが毎日のように嗜好品のお酒やお菓子を嗜めているからお金には困っていないと思っているし、そんな彼女の金銭事情を鑑みて一般市民は自分が思っているより裕福なのだと勘違いを起こしている。


それなのになぜこの金額の硬貨を見てこんな反応をするのか全く訳が分からないでいたのだ。


実際は貯金を全て切り崩していたし、毎日のポーション製作や森での素材調達の時には魔物を狩るなど、彼の知らないところで資金調達をやっていたのだ。


すごくお金に困っているというわけではないが、裕福かと聞かれればNO!と答えるくらいには仕事をしっかりと熟している。


落ち込んでいてもどうにもならないので、さっさとこの話は流してしまおう…。


「…こんな大金持ったままは怖いので、しまいますね。本当にすいません、ありがとうございます。」

「構わない」


彼に断りを入れて硬貨の入った袋をアイテムボックス仕舞う。これで一旦、お金のことから離れることが出来るだろう。


というよりも、今日テオはここに泊まっていくつもりだと思われるので、今から昼食の準備と夕食も考えなくてはいけない。


もしかしてもしかするかも…という気持ちを込めて一応聞いておこう。


「今日、泊っていきますか?」

「ああ、また世話になる」

「いえいえ、ゆっくりして下さい。…お昼は食べましたか?」

「実はまだだ。セナの料理が久しぶりに食べたくてな」

「…分かりました。今から作りますので、少々お待ちください。」

「頼む」



もしかしてなんてなかった!


来るなら来ると、事前にアポイントメントを取ってくれ!アポ取り大事!


そんな簡単に貴族が満足する料理なんか出来やしないんだぞ!


心の中ではそう思いながらもキッチンに移動し、今作れるもので彼が喜びそうな唐揚げを作っていく。


鶏肉の代わりに魔物肉を使用し、醤油とお酒にリンゴやショウガ、ニンニクに似た野菜をすりおろしたものを混ぜたタレで漬け込んでおいたものを片栗粉っぽい奴で上げてメインは完成だ。


過去の私ありがとう、唐揚げ食べたいとか思ってくれて。


ただ、一人前分しか漬け込んでいなかったので絶対に足りない。

こういう時は定期的に港町で買ってストックしている魚介類を出してしまおう。アヒージョとかアクアパッツァとか作っておけばそれっぽくなるよね?ね?!



後はスープにサラダとパンを添えたら、上等でしょう!


「出来ましたよ。さあ召し上がれ!」

「旨そうだ、頂こう」




そうして何とか昼食は喜んでもらえたが、夕食は何も仕込んだものが残っていないので片付け後すぐに彼が満足すること間違いなしのカレーを準備し始める。


すりおろし野菜を大量に入れることで二日目のカレー風に仕上げていく。そのおかげか、カレーはおかわりまでしていた。


しかし晩酌用のお酒はなかったので、ちょっとだけ不満そうだった。「なら自分で買って来い!」と出来れば言いたかった…。






それからはテオの予定に合わせて1か月に一回のペースでセナがテオを転移魔法で迎えに行って1泊したのち、翌日にまた転移魔法で王都に送るということが続いた。


ついでに言うとその間にテオがセナに食材やお酒を買ってきたり、お金を支払ったりということは全くなかった。

贈り物なんていう気の利いたものも勿論なかったのだった。


セナが「やっぱりあの時帰りたくなかったから好きとか言ったんだな」と勘違いをしても文句は言えないことだろう。






本当にこの男は恋愛になるとダメなのである。

読んでいただきありがとうございます!


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