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この世界の錬金術

「よし、誰にもあわなくてよかった」

「ありがとう、ございました」

「いや、よかったよ、生きていて、でもどうなっているんだい?首は本当につながっているのかい?」


首まわりをじっと見つめる戦士さん。


「う、うーん、首はちょっと切れてて痛いですね、あと、なんか硬い物がついてました」


戦士さんに見てもらうと、首の真後ろから両横くらいまでは少し切れてしまっているようだ。

しかし、とても浅い傷だった。

塗り薬を塗ってもらい、くるくると包帯を首に巻いてもらった。

その間に自分のことを軽く説明する。


「錬金術?じゃぁー、あの牢屋の壁を壊したのもそうなのかい?」

「あー、はい、それで、もしかしたらあの斧の刃も無意識に溶かして(変形させて)しまったのかもしれません」

「んー?錬金術で刃を溶かしたの?」

「え、あ、はい、たぶんですが、硬い物も刃の残骸だと思います」

「え、えっと、錬金術ってそんなんだっけ?」


戦士さんにこの世界の錬金術について説明してもらった。


この世界の錬金術とは。

錬金術とは価値の薄い物を錬り(ねり)上げてお金に替えることを錬金術と呼ぶようだ。

薬草を錬って価値のある薬に替え、それをお金にする、これが錬金術の語源となっている。


「たとえば、街で売ってるポーション、それが一般的な錬金術師だよね」

「ポーション?」

「えっと、飲み薬なんだけどさすがに知ってるよね?」

「あ、あは、はーいはいはい、あれですねぇ」


漫画の知識は豊富だが、ゲームの知識は薄いので聞き馴染みがない。

※どちらかというと泥臭い感じの漫画がお好きだった。


「あとは、魔法のスクロール(巻物)とか、どうやってるか知らないけど、魔力を紙に閉じ込めるなんてすごいよね」

「あは、はは、た、たしかにそれもありましたねぇ」


適当に話を合わせる。


この世界の錬金術をまとめると。

薬剤の作成

魔法スクロールの作成

エンチャント(魔法を道具等に付加)による魔道具の作成

魔道具の魔力調整

道具や野草、宝石までいろいろな物の鑑定 等

いわゆる道具屋さんみたいなもんだった



魔法スクロールは、錬金術師本人が魔法を使えたらその場でも作れるが、

基本的には魔術師から魔力を譲渡してもらい、スクロールに移し、本人以外でも魔法が使える価値あるものにする。


魔道具などのもずっと魔力が続いているわけではないので、魔力の調整(注入や完全に抜いてしまう)も行う。

とにかくいろいろな知識が必要となるなかなか賢い職業のようだ。


「なる、ほど・・・」

「だから、お嬢ちゃんのは錬金術じゃなくて、、、なんだろ?」

「わかりません!」


しかしお得意の、木を繊維に替えるのというのはこの世界の錬金術師に近いのではなかろうか。


そんな錬金術雑談をしていると廊下のほうから足音が『コツコツ』と聞こえてきた。


「しっ!静かに!」


戦士さんが口の前に手を持ってくる。

突然のことでびっくりして逆に声が出ない、よかった。

外の足音は、奥の部屋に消えていった。


「ふぅ、別の宿泊者だったみたいだね、でも、この街にいるのは危険だね、生きていることを知られたらまた捕まっちゃうかも」

「え?あ!蘇生してもらったって言えばいいんじゃないですか?」

「いやいや、犯罪者を蘇生するのは認可を受けた人じゃないといけないんだよ、それに、たぶん君は今この街では蘇生禁止だと思うよ」

「そう、なんですね」

「あ、ごめんね、君が犯罪者じゃないってことはわかってるからね!」


いや、犯罪者である。

でも、ここは黙っておこうとおもった。


「よし、僕が連れ出してあげるよ、絶対に安全なとこまで守ってあげるから!」

「え!いいんですか?」

「あぁ、最後まで守りたいんだ、今回みたいにならないようにね!」


大胆な告白だった。

前世では異性に興味を持つどころか、どうせ私なんかと卑下し、恋愛なんて自分には関係ないと思っていた。

正直ドキッとしたが、すぐにその意味はそのままの意味だと解釈した。


「じゃぁ、お願いします!でも、皆さんと別行動になってしまってもいいんですか?」

「ん?あぁ!大丈夫だよ、そもそも僕も1人なんだ、この街にきたのもこのカッコイイ兜を買うためだったからね!」


部屋の中でも兜をかぶっている戦士さんは、クイっと兜をさらに深くかぶりなおす。


「それにもう報酬ももらったし、特にここにいる理由もないからね!」


すごく頼もしく見えた。

初めて誰かに守ってもらえると思うと、なんだか申し訳なくも思えた。


「じゃぁ、眠いかもしれないけど、すぐに出発しようか?」

「はいっ!」


処刑台で結構寝たので割りと元気だった。


--街の裏のほう--


「うーん、裏門は正門と違って人手が薄いと思ったけど、今日はやけにしっかり見張りがいるなぁ」


二人のせいだ。

怪しい男に偽金脱走犯、しばらくは警戒は続くであろう。

※通常裏門は衛兵やおえらいさんしか通りませんし、通せません。


「あの、街の外で人が少ない方角ってどちらですか?」

「え?うーん、この時間ならだいたいどこも出入り口の衛兵しかいないと思うけど、しいていうなら入り口のない東と西側かな?」

「では、西側が近いのでそちらに移動して壁を開けましょう」

「そ、そうか!でも、音が出ないようにできるのかい?」

「う、うーん、やるしかないですね」


--西側の暗いところ--


「ここでやりましょう、戦士さんは周りを見ていてください」

「は、はい!」


壁に手をあて、錬金術を使う。

だが、牢屋をやぶったように壁を石ころに替えると、音が衛兵に聞こえてしまうかもしれない。

それに、壁の一部を変換した場合、他の壁がくずれる可能性もある。

錬金術師は考えた、そして答えを出す。


「へ、へへ、戦士さん、、、、合図したら、、、、走りましょう、、、、」

「え?ええ?」


錬金術を使う。


『ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ!!』


街全体に響き渡る金貨の音。

それと同時に金貨の雨の中を走り抜ける二人。


やったのだ、西側の壁のほとんどを錬金術で金貨に替えた。

逆に大きな音を立てて、騒ぎを大きくする、そしてそちらに目が向いている隙きに逃げる作戦だ。

大量の大金貨、一般人や門の衛兵などは偽物かどうかより、まずは飛びつくであろう。


「お、おじょうちゃーーん!な、なんてことをおおおお!」

「へ、へへ・・・・ふげっ!」


またしてもすっ転んだ、すぐさま戦士さんの脇腹に抱え込まれ、そのまま暗闇に消えていく二人。

錬金術師のとんでも作戦は見事に成功した。


この金貨はすべて回収され、街が雇った錬金術師が鑑定し、街が雇った鍛冶師によりすべての金貨に魔法印を加えられた。

壁はすべて修繕され、さらに街も潤ったのだとか。

のちに街の西側は(もともと閑散としていた場所)ゴールドウォール街として賑わったらしい。


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