表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/18

大地の恵み

パチクリ!

深い夢から覚めたような感じがした。

周りを見渡すと、森ほど深くはなく、林のような景色が広がっており、

ひときわ大きな木のそばで寝っ転がっていた。


「わは!生まれ変わった!のかな」


成人済みの前世と比べて、体のサイズがずいぶんと小さくなっているのを感じた。


「あれ!裸!?えっちー!」

「服くらいサービスしてくれてもよかったのに・・・」


そう思ったが、設定としては、亡くなった旅人が大地に吸収されて再び産み落とされた、ということだった。

そう考えるとずいぶん時間が立っているはずだし、服も微生物に分解されているのであろう。


「まぁ、仕方ないか・・・ふぅー」


地面に広がる青々とした草の上に裸のまま寝っ転がり、目をつむる。


「はぁー、なんだか、すごく気分がいいなぁ」

「嫌な記憶はたくさん残ってるけど、もうあんな辛いとこで生活しなくていいって考えたら」


現在の季節は春を過ぎたころであろうか、陽があたたかく、風も心地よい。

借金や仕事、親のことも考えなくてよく、裸で開放的だ。


「よし、なんだかやる気が出てきたなー、うまく行くといいな」

「にしても、裸はまずいなぁ」

「服を手に入れるにしても、まだお金もないし、裸じゃ買いに行けないよーー!」


しばらく悩み、周りにある草や葉を服の代わりにしようと考えていると、ふと思い出した。


「あ、あの人、錬金術で物を作るって話ししてたかも」

「服も作れるのかな」

「・・・どうやって?」


確かに錬金術は知っている、しかし、記憶にあるのは漫画の中の話だ。

使い方など知らない。


とにかくためしてみようと近くにある葉っぱをちぎり、目をつむり念じてみた。


(・・・お願い、服!できて!)


自分の手に持った葉っぱから、熱のようなものを感じ、恐る恐る目をあけてみるとそこには。


「で、できた!服!!ちっ・・・・さいけど・・・・」


無から有を生み出すことはできない、葉っぱ一枚でできる服のサイズは、葉っぱ一枚から取れる素材分が限度。

指先より小さな服が手のひらに乗っていた。


「ま、まぁいいや!つまり、材料がいるってことよね!」

「でも、私の服を作るのにどれくらい必要なんだろう」


一箇所にたくさん葉っぱを集めてサイズが足りなかったらとてもめんどうだ。

地面に手を当てて、念じてみたら自動で服に必要な分の材料を使ってくれるのか?などと考えていたとき、目に入った大きな木。


「木の繊維で糸って作れるのかな?それならだいたいの材料はわかるかもしれないし」

「よし、やってみよう!まず木を繊維にして、糸に・・・?」


やりたいことはわかるが、実際に木の繊維を糸にするところなど見たことがないため、イメージがしにくい。

そうなると、うまくできない気がしてきた。

一度木を薪のように細かくわけ、その後に糸に変換しようか、いや、直接葉っぱから服が出来たんだから直接服を作ろう、

これだけ大きな木なんだから、材料も十分あるだろうし、サイズが大きければ調節もできる。


「よし、服、出来ろーー!!」


目の前にあった大きな木は、一瞬にして消え、足元にはちょうど良いサイズの服と、あまった木材や枝が散らばっていた。

真っ白、というわけにはいかないが、白いワンピースのようなシンプルな服が出来上がっていた。


「やった!よしよし!」

「材料もまだあるし、靴も作れるかな!」


散らばった材料で、靴と、ベルト、腰ほどの長さのフード付きのケープ、少し物が入るショルダーバッグを作成した。


「うーん、まぁ、変じゃないよね?」

「あまった材料どうしようかな」


何か便利な物は作れるだろうか、今作ったら荷物になるかもしれない、少し悩んだあと、1つ気になることが出てきた。


「この木って、もしかしてだけど、私を産んでくれた木・・・じゃないよね?」


周りを見渡しても、人ひとりを生み出せる大きさの木は、自分の服にしてしまった木しかない。


「あぁぁぁぁ・・・でもぉ、地面から産み出された可能性もあるし・・・」


家族ではないが、自分を産んでくれた木を伐採してしまった。

少し申し訳ない気がした。


「・・・うん、これでよし・・・じゃぁ、産んでくれてありがとう、行ってきます!!」


新しい人生の始まりの地には、余った材料で作られたであろう、1mほどの小さな木が生えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ