お金稼ぎ
---食事を終えて---
「ふー!おいしかった!シスターさん、ありがとうございます!」
「おいしかったですねー!」
「・・・えぇ、よかったです・・・」
シスターさんは肉が入ってなかったのを引きずっていた。
3人はお店を出て、しばらく歩く。
「お二人はこれからどうなされるんですか?よければ修道院のほうに泊まれないか私が聞いてみましょうか?」
「いえいえ、さすがに悪いですよ、それに女性が多い場所はちょっと肩身が狭いかな、あはは」
「そうですね、お風呂も食事もお世話になりましたし、宿くらいは・・・戦士さん、お金どうですか・・・?」
戦士さんは少し慌てた様子でゴソゴソとお財布を調べ始める。
もともと持っていたお金と、イノシシ退治の報酬を合わせて数えてみる。
「そ、そうだね、まぁ、宿代くらいはあるかな・・・?今日、だけね・・・!」
「ふぅーんむ、では顔見知りの宿を紹介いたしましょうか、多少安くしてくれるかもしれませんし」
「ありがとうございます、よ、よかったですね戦士さん!」
---無事にちょっと安く宿について---
「ごめんね、一部屋しか借りれなくて・・・」
「あー、いえ、大丈夫ですよ、もう一部屋借りたらご飯食べられなくなっちゃいますし・・・」
シスターさんのおかげで少し安くなったものの、明日の宿はなさそうだ。
ということで、戦士さんは今からでも組合に行き、仕事を探そうと提案する。
「それでなんだけど、しばらくここで働くか、旅費だけ稼いで次の街でまた稼ぐか、なんだけどどっちがいいかな?」
この街を拠点にしてある程度お金を稼ぐか、旅をしてお金が必要になってきた時に稼ぐか。
「うーん、そうですねぇ・・・」
錬金術師は悩む。
神様に言われた通り、物を作って売れば旅費はすぐ稼げそうな気がする・・・が、商売なんてしたこともない。
それにこの世界のことがまだわかってないので、勝手に商売してて怒られたりするのも嫌だ。
もしある程度お金が入っても、この間のように盗賊に襲われて盗まれても嫌だし。
悩みに悩んだ結果。
「いっかい組合に行って、どんな仕事があるか見てみませんか・・・?」
「確かにそうだね、いこっかー」
---そして組合へ----
戦士さんは組合へ入るやいなや受付に行き、うれしそうに身分証明書を提示した。
やはり身分証明書を提示したほうが有利だ、特に確認もされず、いい仕事も受けさせてもらえる。
(あぁ、ここでも証明書が必要なのか・・・私は仕事受けられるかな・・・)
本来はどんな人でも仕事は受けられる、しかし、大きな犯罪歴があったり、手配犯などは突っぱねられる。
そもそも村に入っている時点で大体の人は問題はない。
※犯罪歴などは魔法の刻印が体に押されてたりするよ、するかしないかは割とその時決めるらしい。
「あ、あの、わたし初めてなんですけど、仕事受けられたり、しますか?」
受付さんに聞いてみる錬金術師。
「はい、大丈夫ですよ!ある程度の身元確認と、犯罪歴とかは一応調べますけどねー!」
過去のことを思い出し、びくっとする戦士さんと錬金術師。
錬金術師は偽金を作り脱走した大罪人、今のところ手配書も出ていないが、そのことは本人たちが知るよしもない。
※南の街では死体は身内に回収されたのだと思われている、刃が削れた斧が気になるところだが、
それより壁が金貨になったことのほうが盛り上がっていた。
「まぁ、こんな可愛いおじょーさんが犯罪なんてするわけないよね、あはは!こっちの戦士さんのお連れさんでしょ?どんな仕事がいいですか?」
はぁ・・・と肩をなでおろす二人。
身分証明書の効果は絶大だ。
「あ、あはは、ど、どんな仕事があるんですかねぇ・・・?」
「よかったらあっちの掲示板にも貼ってあるから見てきてくださいねー!」
「そ、そうかー、おじょーちゃん、いこっかー、あははー」
とりあえずこの街ではあまり目立たないようにしようと思った戦士さんだった。
二人は掲示板の前で一通り依頼書を見てみる。
時間帯的に依頼もあまり多くないようだ。
「やっぱり朝一番にこないと報酬の良い依頼は取られちゃってるねぇー」
「そうなんですねぇー、荷物運びに、畑仕事、家の掃除なんてのもあるんですねぇー」
思っていたより身の回りの仕事が多いようだ。
身近な依頼が多い理由は、もし悪人が家の掃除のついでに泥棒を働いたとする、その場合、組合が保証してくれるからだ。
もちろん泥棒を働いた者はタダではすまない、もし捕まれば錬金術師のようになるかもしれない。
もし逃げ果せたとしても、組合の情報網のおかげで他の街でも一切仕事はできないだろう。
何より組合が高額な報酬を出して犯人を探し出す、ちょっと高価な物を盗んで人生を捨てるのは割に合わない。
※高価な宝物、宝石とか美術品にも、誰の物か特定するために魔法印(家紋とか自分独自のサインとか)が押される場合があります。
そのため通常は本人じゃないと売れなかったりする。
ただ、闇市や、魔法印を消すことができる闇魔法使いももちろんいるのです。
「力仕事はもってこいだけど、1食分くらいの報酬しか出ないなぁ」
「あ、これなんかいいんじゃないですか?」
どれどれ、と張り紙を覗き込む戦士さん。
そこには【井戸の清掃・水の浄化、もしくは新しく井戸を掘ってくれるかた募集】と書かれていた。
報酬は銀貨6枚ほど(1泊分くらいかな!)。
「うーん、体力仕事にしては報酬が安すぎないかなぁ・・・?」
「そ、そうなんですね・・・で、でも!私、穴ほり得意ですよ!」
少し考える戦士さん。
確かに錬金術師の力を使えば一瞬で終わる作業、悪くない。
しかし、一瞬で穴を掘り終えてしまったら目立ってしまう、あまりこの街で目立つのは良くないが、
依頼者を確認する、と、さっきの修道院だった。
「あれ?これってさっきの修道院じゃないか」
「へぇー、いいじゃないですか、ご飯のお礼にもなりそうですし!」
「僕、さっきこの修道院の井戸で水浴びしたんだけど・・・悪い物でも入ってたのかな・・・」
戦士さんは体に以上が無いか確かめるがもちろんない。
ということで、この依頼を受けることにした。
---修道院に舞い戻り---
「あれーー?お二人じゃないですか!」
シスターさんが出迎えてくれた。
組合で依頼を受けたことを知らせると、先程の井戸に案内してくれた。
「・・・あの、僕、さっきこの井戸で水浴びしたんですけど、大丈夫ですかね・・・」
「あ、あー!すみません、も、問題ないですよ・・・!いやちょっとね、飲む分にはちょっとどうかなぁ・・・?みたいなねー?はは、ははは・・・」
それはそれで不安になる戦士さん。
話を聞くところによると、井戸の水は飲水(煮沸して)として使えていたのだが、腹痛等の体調不良者が増えたのだとか。
長年使っているため、煮沸しても死なない菌が繁殖してしまった、というところだろうか。
「大丈夫!今のところ死人は出ていませんし、もし何かありましたらこの私が、そう、蘇生魔術の習得を許可された私が蘇生してあげますよ!」
許可されただけで、蘇生魔術を覚えているわけではないシスターさんは自信満々にそう言った。
しかし不安になる一方の戦士さんだった。
そんなことは気にしないシスターさんは、
「ということで、お願いしますね!やはり戦士さんのその筋肉で新しい井戸を掘っちゃう感じですかねー!」
「いやー、そのー、ははは」
「違うのですか?」
筋肉で穴を掘るのではないのなら清掃と浄化をしてくれるのかと考えるシスターさん。
「もしかして、おじょーさん!浄化魔術、つかえちゃったりするんですかー!」
「あー、いえ!戦士さんが掘ります!」
一瞬はしゃいだシスターさんだが、なんだ、と肩をおろす。
「あ、あの、浄化魔術ってシスターさんたちは使わないんですか?」
「専・門・外・です♪」
もちろん使えるシスターさんもいるのだが、ここの修道院ではあまり得意な人がいないようだ。
それに、井戸の中に入って作業するというのがかなり困難らしい、10m以上深い井戸水の中に入り、
汚染されている水全てを(井戸の周りの地中まで浄化しないとまた繁殖するため)浄化するには時間を要する。
体力と精神力、土の奥まで浄化するには高度な技術が必要だ。
それに、水がとても冷たいので、寒い!
しかし、人体についての浄化は割とできる人が多いようで、腹痛等になった人は上位のシスターさんが治してくれたんだとか。
※人体については割と解明されているようで、構造が分かっているのと、お腹の上から触ることができるので魔術も効きやすいです。
「ところで、どうやって掘るんですか?道具も無しに」
顔を向け合わせる二人。
戦士さんは錬金術師の耳元に近づく。
「・・・おじょーちゃん!どうするの!ずっと見られてるよ!」
「・・・ちょっとシスターさんには一瞬向こうむいてもらって・・・」
「いやいや!一瞬で穴できちゃったらそれこそ魔術のこと追求されちゃうよ!」
困る二人。
シスターさんはハテ?という感じで二人を見ている。
しかし、とっさの思いつきでとある案を思いついた錬金術師。
「あ、あはは、きょ、今日はその、水脈の確認でして・・・」
「ほぉ、水脈ですか、確かに掘っても出るとは限りませんからね、しかしどうやって見つけるのです?」
単純に疑問に思ったシスターさんが話しを詰めてくる。
しかし、錬金術師はその次のことも考えていた。
「えっとですね、ダウジングって知ってます?」
「おぉ、ダウジングができるのですかぁ、それは素晴らしいですね!」
できれば知らないでいてほしかった。
戦士さんはあまり知らないようだ。
そして、なんとか時間稼ぎをしようとしたものの・・・。
「ダウジング、ちょっと興味がありますね!さっそく見せてください!」
だめだ、錬金術師と戦士さんはそう思う。
だが、やるしかない。
やっているふりをして今日は乗り切ろう、そう考えた。
とりあえずダウジングの道具を探さねば。
「え、えっと、シスターさん、ちょっと木の枝とか落ちてないですかね?」
「はい?枝なら修道院の裏にたくさん落ちてますよ」
「ちょ、ちょっと待っててくださいねー、はは、はははー」
そういうと、戦士さんを連れて裏庭のほうに歩いていく二人。
戦士さんは不安そうに錬金術師に話しかける。
「おじょーちゃん、ダウジングって魔術じゃないの?見せちゃってもいいのかい?」
「あ、いえ、うーん、どうなんですかね・・・?とりあえず魔術的なことはしないので、道具を用意しましょう」
全然わからない戦士さんはとりあえず言われるがままに木の枝を集める。
2本、ちょうどいいサイズの細い枝があった。
戦士さんに人がいないか見張っていてもらう間に、錬金術師は木の枝をL字に加工する。
L字の短い部分を両手に握り、長いほうが左右に揺れると地下に水脈があるという古代から伝わるダウジング方法だ。
「え?おじょーちゃん、何それ・・・?」
「ダウジングです、とりあえずこれで乗り切りましょう!」
錬金術師はシスターさんがいるほうの庭に、L字を両手に握りながら歩いていく。
その姿を見たシスターさんは怪訝な表情だ。
そう、シスターさんの思っていたのと違った。
「なんですかそれ?」
「え!これ、ダウジングロッドです・・・けど・・・」
「ダウジングってペンデュラムを使うんじゃないのですか?」
※ペンデュラムやペンジュラムと言われてる、宝石がついたペンダントのような物を地図の上などで振り子みたいにゆらゆらさせるダウジング方。
そっちか、と思った錬金術師、確かに漫画でそういうのやってるの見たことある。
もうやるしかないので、とりあえず歩いてみる。
「おじょーちゃん、それどうなるの?」
「地下に水脈があると、この棒が反応して横に開いたりするんですよ」
よくわかっていない戦士さんと、どうなるのかと思うシスターさん。
とりあえず大きな庭をうろうろしてみる錬金術師に、そのあとに続く戦士さん。
「ね、ねぇ!僕にもそれやらせてよ!」
「あ、はい、どうぞ」
ウキウキしながらL字を持ち歩く戦士さん。
もちろん何も反応しない。
そのうちシスターさんも飽きてきたのか中にお茶を汲みに行った。
「よし、戦士さん!シスターさんいません!穴をあけましょう!」
「え?これは?」
「それはもういいです!」
ちょっと残念そうだ。
「これくらいの穴を深く開けて、しばらくして石を落としてみましょう、水の音が聞こえたら水脈です、何もないならすぐ閉じましょう」
「なるほど」
その場でしゃがみ込み、手のひらを地面につけ、自分の手より少し大きいくらいの穴を錬金術で深く掘る。
錬金術師の手元には片手で大の鉱石が握られている。
目の前で見れてちょっとうれしい戦士さん。
しばらく待ってみて、そのあたりにあった石を落としてみる。
『・・・・チョポン・・・』
「聞こえた!水の音だ!」
「はい!」
「どうですかー?」
後ろから聞こえた声に二人はとても驚いた、シスターさんだ。
その瞬間、戦士さん何を思ったのかとっさに拳で穴を塞ぎ、錬金術師も手に持っていた(土を変換した)石を戦士さんの鞄に突っ込んだ。
「ははは、パンチで掘るんですかー?さすがに無理ですよぉほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉええええええ!?」
結局穴はバレた。
「せ、戦士さん、パンチで、これを・・・?」
謎の勘違いをしたシスターさん。
そして、恐る恐る穴を覗く。
「こ、これは、すごいですよ!筋力ですか!?それとも何か筋力が上がる魔術的な!?」
「あ、あの、ちょっと言えないんで、ご内密に・・・」
とりあえず戦士さんが穴を開けたことにしたが、何かを察したシスターさんは優しく頷いてくれた。
「でも、もうちょっと穴を広げないといけないですよね?バケツ入らないし」
「いえ!この機にポンプ式にしてもらいます!」
手押しのポンプもあるようで、それを設置してもらうようだ。
嬉嬉と偉いシスターに報告しに行くシスターさん。
なんとかなったとほっとする。
「はは、よかったね、さすがおじょーちゃんだ」
「ふふ、そうでしょー」
---偉いシスターさんへの報告が終わり---
「この度はありがとうございます、報酬は銀が6枚ほどになりますが」
「あ、ちょっとまってください」
偉いシスターさんの話に割って入るシスターさん。
ふところをごそごそとあさり、お金の入った布袋を取り出す。
「こちらは私が修行の旅でお布施(お祈りで稼いだ)としていただいたものです、
私の命を救っていただいた恩人、少し色をつけてお渡ししてもよろしいでしょうか?」
「いくら入っているのですか?」
偉いシスターさんが尋ねると、袋の中に手をツッコミ、ジャラっと硬貨を全て取り出す。
袋の口を開けて、一枚づつ数えるシスターさん。
「えーっと、銀貨が1枚、2枚・・・・」
銀貨を握りしめて、不器用そうに親指で押し出すよう数えながら袋に戻していく。
全部で8枚袋に入った。
「以上ですね、どうでしょう?もちろん修道院に入るお金はこちらにあります」
と、指の上で転がすように金貨を1枚とりだすシスターさん。
それを偉い人に渡す。
「よろしいでしょう、適切な額だと思います、では、お二人共、ご苦労さまでした」
そういって部屋に戻る偉い人。
シスターさんは袋ごとこちらに渡してきた。
「お疲れ様でした、これ、後でちゃんと銀貨が入ってるか確認してくださいね、宿に帰ってからね!」
「ありがとうございます!」
「でも、せっかくシスターさんが稼いだお金、いいんですか?」
「あぁいいんですよ!どうせ全部修道院に入る予定でしたし、それに、わたくしもホラッ」
またどこからともなく銀貨を取り出す。
抜け目ないというか、バレなきゃいい精神のシスターさんだった。
---宿にて---
「いやー、ちょっと焦ったけど、お金も手に入ってよかったね、おじょーちゃん様々だ!」
「えへへ、でもちょっと旅をするには心もとないですかね?」
そう言って先ほどもらった硬貨の入った袋を取り出し中身を確認する。
銀貨数枚と、金貨が入っている。
「え!あれ!戦士さん!金貨が2枚入ってます!」
「えぇ!なんで!?」
シスターさんは不器用な感じで数えているふりをしていた。
みんなに見えるように、銀貨を1枚ずつ袋に落とすふりをしていたのだ。
実際には先に金貨を落とし、親指で押し出した銀貨は落ちる前に小指で回収され、また手元に戻っていた。
小指側を袋で隠して見えないようにしていたので、全員気づかなかったのだ。
「シスターさん、間違えちゃったのかな・・・」
「うーん、でも数えている時は全部銀貨に見えたし、間違えるかなぁ?」
「あれ?これは?」
袋のそこに手紙が入っていた。
手紙をとりだし読んでみる錬金術師。
手紙にはこう書かれていた。
【お二人さん、この金貨で良い旅を!】
戦士さんに手紙をみせて、ふふっと笑う二人。
明日は次の街へ向かうことにした。




