この世界の精霊について
---夕方くらい---
「いやすみませんほと、私がいなければ次の街についていたでしょうに」
「いえ、急ぐ旅でもないですし、大丈夫ですよ!」
「うんうん、今日はここらで野宿しようか!」
柔らかい草の上に移動し、荷物を置いた。
戦士さんは火をつけるため、石を集め、草に燃え移らないように場所を決め、準備をしている。
錬金術師は少し回復したシスターさんと木の実を集める。
「近くに木の実があってよかったですね!」
「うふふ、見えてないだけで意外とたくさんあるんですよ、あと、この野草は食べられますし、こっちもいけますね!」
シスターさんは薬学の知識があるのか、道中草を食べていたのか、野草にも詳しかった。
---暗くなって---
『ジュゥゥゥゥ・・・』
昨日同様戦士さんが燻製を調理している。
本日は食べられる野草も一緒に炒めているようだ。
ごくりと喉をならす錬金術師の横で、腕を組み、ものすごい形相で調理を見ているシスターさん。
「も、もうちょっとで出来るからね・・・はは」
献立はあまり代わり映えしないが、
燻製と野草炒め
燻製と野草のスープ
デザートの木の実だ。
「いただきます!ズズッ・・・うーん!おいしいですね!野草もシャクシャクしておいしい!(山菜みたい?)」
「野草をいれるだけで全然違う気がするねー、これは覚えておかないと」
「そ、それはよかったですぅ・・・シャクシャク」
シスターさんは修行のため、木の実と炒めた野草だけを食べていた。
その表情は悲しそうだった。
「す、すみません私達だけ・・・」
「いえ、いいんです、修行中の身なので・・・シャクシャク」
「ま、まぁ、木の実とか食べてもいいというのは良かったですね・・・!」
「えぇ、植物は動物と違って精霊由来の物と考えられていますから食べてもいいんだとか、それにさすがに何も食べないのは本当に死んじゃいますからね」
(精霊ってコンパスにも使われてるし、便利な存在なのかなー?)
「精霊ってどんな存在なんですか?」
「僕は見えない虫?みたいな感じなんだけど、確かに深く考えたことはなかったなぁ」
「あはは、見えない虫ですか、面白いですね、でもあながち間違いではないかもしれませんねー」
シスターさんの説明によると、
精霊とは自然そのもの、光や風、水や土、すべて精霊が宿っているのだとか。
(でも、光は太陽が発しているモノだし・・・風も気圧で出来るんだっけ・・・?)
現実的なことを考えていると、シスターさんが
「いま、自然現象は精霊と関係ないでしょ?とか思ってませんでした!?」
「うっ・・・」
見透かされていたようだ。
「わかりますー、全て精霊のたまものと考えるのはちょっと違うんじゃないかって思いますよねー」
「は、はい」
「僕は精霊石のコンパスが、なぜ街の方向を向くのか、この火を付ける時にこするグローブについている石、なぜ火がつくのかよくわからないけど
これは精霊のおかげかなって思ってるよ!」
「はい、とても良い考えだと思います、すべてのモノに精霊が宿り、それに感謝しながら使い、頂く、それが我々の神の教えです」
錬金術師はもっと簡単に考えてもいいのかなと思った。
いや、考える必要もないのかなと。
以前は、考えることが多く、特に悩むこと、嫌なことを思い出してしまうこと、
将来しあわせになりたいと考える余裕もなく、今のこと、現実的なことばかり思い、辛い毎日であった。
今は楽しく生きたい、そして錬金術師はひとつ思いついた。
「なら、この燻製がおいしいのも、お肉の精霊さんのおかげですね、そしてこうやって・・・・」
スープに入っていた燻製を、茹でた野草で包む。
「はい、これなら神様からも見えないですし、これも精霊由来の食べ物です(私が精霊なので)」
「な、なんということを・・・・」
「ははは、いいねー!」
シスターさんは、ごくりと喉をならし、我慢する表情をみせているが口が勝手に開いていく。
「あぁ・・・」
「はい、どーぞぉー」
「あぅん!」
シスターさんは今にも涙がでそうな、そして嬉しそうな表情を浮かべ肉を頬張っていた。
「・・・うんめぇ・・・うぅ・・・」
その後、普通にご飯を食べたシスターさん。
---食事も終わり---
「食事のお礼に、今晩は私が火を見ていますから、お二人はごゆっくりお眠りくださいね!」
食事を食べ、体力が回復したのかシスターさんは張り切っていた。
「ぐぅ、ぐぅ・・・」
しかし、お腹がいっぱいになったせいで朝までゆっくり寝てしまったようだ。
---朝---
「すみません・・・!こんなポンコツシスターで!」
「はは、大丈夫だよ、野宿は慣れてるし、火も僕が見てたからね!」
余計申し訳ないシスターさん。
「はわ~、おはようございます~」
錬金術師もしっかり寝れたようだ。
「さて、今から歩けばお昼前につくだろうけど、どうする?また燻製だけど、朝食も食べるかい?」
「うーん、お昼くらいまでなら全然我慢できますし、先に街まで行きましょうか!」
「お昼は!私がごちそうさせてください!せめてもの、せめてもの恩返しに!」
シスターさんは申し訳なさすぎて力が入っていた。
「じゃ、じゃぁそうしよっか」
「はい、お言葉に甘えて!」
歩き始める3人。
---街道が見えてきた---
「お、無事に街道に出たね!」
「おぉ、素晴らしいです戦士さん、旅慣れてるって感じがしますね、ほんとお二人には感謝です」
「はは、それはどうも」
「はぁ、やっと街だぁ、シャワ、じゃなくて体を拭きたいですね」
「そうですね、街に付いたら先に水浴びさせてもらいましょう」
---そして街の入口---
「お、ふたりとも見えてきたよ!」
「わ、わぁ、やっとついたぁ・・・」
「ふぅ、よかったです、やっと修行の旅も終わりです(途中で帰ってきたのはだまっておこう)」
3人は街の入口にたどり着いた。
南の街と比べ、少し小さいが人通りは多い。
入口では衛兵が検査をしている。
「次!」
シスターさんが先頭に立った。
「こんにちわ」
「おや、シスターさん!無事帰ってきたみたいだね、お疲れ様」
「はい、それでこちらのお二人は道中で助けていただいた方です、一緒にお通しさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、もちろんいいが、一応仕事なので軽く検査をしてもいいかい?」
「えぇ、僕は構いませんよ!」
なぜか強気な戦士さん、それには理由があった。
戦士さんは自分の荷物から自慢気に身分証明書を提出した。
「これでっ!ふふ」
衛兵が証明書を受取、それを確認する。
「ふむふむ、なるほど、問題ないですね、そちらのお嬢さんもいいかい?」
(ど、どうしよう!身分証明書なんて持っていない!)
あせる錬金術師、そこに戦士さんが助け舟を出す。
「僕はこちらのお嬢様に雇われた戦士でして、旅の途中で盗賊に会い、お嬢様の荷物をすべて盗まれてしまったんです・・・」
突然嘘をつきはじめた戦士さんだが、それに合わせる錬金術師。
「は、はい、その通りでして、えへ、へへ・・・・」
「そうだったのですね、それなのに私に食料まで恵んでいただけるなんて、うぅ・・・」
わかってかわかっていないのか、シスターさんも話にのっかってきた。
「・・・そうかい、怖かったろうに、まぁ特に荷物ももってなさそうだし」
そう言いながら衛兵は錬金術師の頭から足、そして背中のほうもぐるっと見回し、問題ないことを確認する。
「よし、大丈夫そうだね、さぁ、街でゆっくり休むといい、おつかれさん」
無事通りてくれた。
「よかったね!」
戦士さんはなぜか嬉しそうだった。




