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次の街へ

「次の街は数日かかるから本当はあの街で準備してから行けたらいいんだけど」

「す、すみません・・・私のせいで・・・」

「あ、いや、ごめんね、大丈夫だから!」


食料も少しあるし、寝床も錬金術で確保できる。

ポーション(治療薬)や包帯、欲を言うともう少し食料がほしいところ。

道中狩りも可能だが、時間もかかるし、確実性がない。


「あとランプの燃料と、地図とコンパスが欲しいかな」

「確かに・・・(乗り合い馬車みたいなの無いのかな)」

「でも本当に大丈夫!もしかしたら途中の村で譲ってもらえるかもしれないし、次の街は行ったことあるからね!」


それなら安心だ。

しかし、街までずっと道がつながっていたらいいのだが、そういうわけでもないため、せめてコンパスがほしかったようだ。


「コンパスって、あの北を示すやつですよね?」

「え?なにそれ?何に使うの?」

「え?どっちか北かわかるじゃないですか・・・?」

「そんなコンパスもあるのかい?僕が欲しいのは精霊石のやつだよー」

「精霊石・・・!」


この世界のコンパスは精霊石を使っているらしい。

精霊が多い場所は土地が豊かで、人間にも動物にも過ごしやすい場所のようだ。

そういった場所には街が作られ、その土地で取れた精霊石でコンパスを作る。

精霊は帰巣本能があるらしく、街で作ったコンパスを他の街で売る、それを旅人が購入(レンタルもあるよ)し、コンパスが作られた街を目指すという仕組み。

使い方は、良く知るコンパスと同じで街の方角を指し示す、近くなると光が強くなったりするやつもあるようだ。


「へぇ!精霊って面白いですね!(私も産まれた場所に戻れるかな)」(※錬金術師は限りなく人間に近い精霊)

「ふふ、これくらいは旅をしている人にとって常識だよおじょーちゃんー」


戦士さんは得意気だ。


「僕だけ街に戻って買い物してきてもいいけど、時間もかかるし、おじょーちゃんも一人にしておけないからね」

「・・・!(恥ずかしいセリフだな)」

「じゃぁ次の街を目指そっか!きっとどうにかなるよ!」

「はいー!」


そして次の街を目指す。



--お昼ごろ--



「んーーーー!燻製おいしぃぃぃぃ!!」

「うん、これはイケるね!すぐ無くなっちゃいそうだよ!」


前に戦士さんからもらったガッチガチの干し肉とは全然違う。

程よく硬くそして柔らかく、味もしっかりとしている。


「も、もういっこください!もういっこ!」

「はいはいー、僕ももういっこ食べよっと!」


とにかくこの世界で食べるものはなんでも美味しい。

前の世界では、もっと美味しいものがあったはずだが、そう感じられなかった。

そう感じる余裕がなかったのかもしれない。


「ふぅー、あっと、しまったなぁ」

「どうしました?」

「うーん、水も必要だよねぇ、水筒持ってなかったよ」

「あぁ、たしかに必要ですね、私もお水飲みたいです」

「とりあえずもう少ししたら川があるからそこまで行こう」

「はーい」


--川--


『ジャバジャバ』

「ふー、お水おいしー」

「うーん、しばらくは川沿いに進めば水に困らないけど、次の村と方向が外れちゃうんだよね」

「次の村まで我慢ってことですね」

「あ、おじょーちゃんの魔法で水筒みたいなの作れない!?」

「え・・・うーん、でき・・・ると・・・思いますけど・・・・見ないでくださいね・・・?」

「え、えぇー、う、うん、見ないよ」


疑う錬金術師となぜ見せたくないのか疑問に思う戦士さんであった。


木の枝(腕より少し太いくらいの枝)を戦士さんが取ってきた。


「おじょーちゃん、これくらいでどう?」

「あ、はい、いいと思います」

「じゃぁ、お願いね!」


と、言うと、戦士さんは後ろを向き、うつ伏せになり、顔を伏せている。

戦士さんに背中を向け、錬金術を使う前に戦士さんがこちらを見ていないかチラッと確認する。


(よし、見てない!)

(水筒だからー、こんなものかな?)


「戦士さーん、できましたよー!」


ガバッと起き上がる戦士さん。


「どうですか!」

「おぉ!!おぉ・・・?ちっちゃく、ない?」

「え?そうですか?」


その水筒は、前世で仕事に行くときに便利な、カバンにも入るようなコンパクトなサイズだった。


「これなら戦士さんのカバンにも入りますし、便利ですよ!」


錬金術師は、この旅での水の大切さをまだ理解していない。


「う、うーん、もうちょっとこれくらいの大きさがほしいかなぁ?」


戦士さんは手で丸を書く。


「え?丸いほうがいいですか?」

「あ、いや、形はおまかせで!でも、数日水が手に入らない場合もあるし、もっと大きい方がいいかな?」

「なる、ほど・・・わかりました!」


余っていた木の枝と、作ったばかりの水筒をくっつけて、新しい水筒を作った。


隠すのを忘れて戦士さんの眼の前で錬成してしまった。


(おぉ、すごい!)


戦士さんは嬉しそうだった。


「どうでしょう!」

「うん、いいね!変わった形だけど!」


新しい水筒は、5リットルは入りそうだ。

五角形のような形で、上にキャップがついている。

(内側は密度を高くし、水を通さず腐りにくくし、外側はできるだけ軽く仕上がっています)


「えっとー、あ、戦士さんあれもお願いします!」

「わかった!」


戦士さんは木のつたを引きちぎった。

それを錬金術師にわたす。


「ありがとうございます、えっと、これをー・・・あ、見ないでくださいね!」

(さっき見てしまったことは黙っておこう。)


そっと後ろを向く戦士さん。


「はい、できましたよー!どうですかー!」

「おぉ、いいね!」


紐を付けて、ショルダーバックのように水筒を持っているのを見せつけてくる錬金術師。


「これでお水問題も解決ですね!」

「さすがだね!」

「さっそくお水を入れちゃいます!」


キャップは引き抜くだけの構造になっているため少し力を入れて引っ張る。


『キュポンッ』

『ジャブ・・・コポコポコポ』


水筒を水につけ、水をいっぱいまで入れる。


「よし!うっ、せ、戦士さん、ちょっと・・・」


水筒に水を入れたせいで持ち上がらない。


「はは、ちょっとまってね!よいしょっと」


軽々と持ち上げる戦士さん。


『キュキュッ』


しっかりキャップを閉め、立ち上がる錬金術師。


「うっ」

「大丈夫かい?僕が持つよ?」

「い、いえ、いけます・・・」


生まれたてで体も小さく、筋肉もすくない錬金術師には結構重かった。


「よ、よーし、いきましょーー!」

「本当に、大丈夫かい・・・?」

「も、もちろーん!」


二人は再び次の街を目指す。


--夕方--


「よいしょ・・・よいしょ・・・」

「おじょーちゃん、今日はこのあたりで泊まろうか?」

「は、はい、そうしましょう・・・」


錬金術師は水筒を置き、草むらに倒れ込む。


「はぁ・・・疲れた・・・」

「お疲れ様!晩ごはんは僕が準備するから、おじょーちゃんは寝床を作ってくれるかい?」

「は、はい・・・」

「あ、ちょっと休んでからにしようか、まだ日暮れまで少し時間もあるしね」

「は、はぁい・・・」


かなり疲れた錬金術師、横になったまま動かない。


「このあたりは人里から離れてるし(盗賊も何もないとこにはいない)、水場が無くて獣も少ないから安心してね」

「そ、そうなんですねぇ・・・よかったぁ・・・」


もう気力しかなさそうだ。

それを横目に木を集め、火を起こす準備を始める戦士さん。

拳より大きい石を集め、円のように並べていき、その中心に薪を並べる。

見慣れた木の繊維を丸め、並べた薪の下側に入れる。

かなり手際がいい、そしてそれを倒れたまま見ている錬金術師。


『シャッ、シャッ』


戦士さんが指パッチンのような仕草をし、薪に息を吹きかけると火がついたのだ。


「え?火がついた!魔法!?」

「え?あはは、違うよー、これを使ってるんだよ」


戦士さんがグローブを見せつけてくる。

それをよく見る錬金術師、だが特に変わったところは無い?


「ほら、ここを見て」


グローブの右親指の第一関節から付け根ほどに、黒い金属のようなものがついている。

それに、中指の左腹あたりにも同じようなものがついていた。


「この金属をこすり合わせると火花が出るんだよ、便利でしょ!

 暗い場所で、手探りだけでランプをつけないといけない時とか便利だよ」


要するに、メタルマッチのようなものだ。

戦士さんはこういう便利グッズも好きなようだ。

ちなみに、指パッチンのようにつける人もいれば、デコピンのような動作で火をつける人もいるようです。


「よし、これで火は大丈夫だね、お嬢ちゃん、水筒借りるね」

「はいー」


戦士さんは水筒を片手でひょいと持ち上げた。

そして腰のカバンから小さなフライパンを出す。

それに少しだけ水を入れ、火で温めはじめる。

水が沸騰したらくるくると油を引くように水を回し、キレイ(除菌もかねて)にする。

調理用のナイフを取り出して、沸騰した残りのお湯をかけ(除菌もかねて)キレイにする。

フライパンの水分を完全に飛ばし、もらったイノシシ肉の燻製の油身部分をフライパンに塗っていく。


『ジュッ・・・ジュゥゥゥゥ』


煙があがり、いい匂いがしてきた。


「あぁぁ・・・いい、匂い・・・」

「うんうん、やっぱ燻製と言っても焼いたほうがいいよねぇ!」


ずるずると這いながら近づいてくる錬金術師。


「はい、味見してみてー、熱いから気をつけてね」


小さいナイフで燻製をさし、錬金術師の顔の前に近づける。


「フー、フー!はふっ!はぅ!」


あつあつの燻製を口に入れる、その表情は熱さと旨さがあわさったような顔だった。


「おいひぃ、ですーー!」

「よかった!あとでスープにもしてみようか!」

「いいですね!」


--日暮れ--


『ズズズッ』


自作のお椀でスープを飲み干した錬金術師。


「おいしかった~」

「体は回復したかい?」

「はい、もう元気元気!いい寝床作っちゃいますよー!」

「お、それは楽しみだねぇ!」

「でも、少し休憩してからにします!」

「ははは」


しかし、そのままうとうとしてしまい、横になり寝てしまう錬金術師。


(今日は頑張ってくれてたみたいだし、だいぶ疲れたんだろうね。

 まぁ、ここは安全そうだから問題ないか、たまの野宿も悪くないしね)


戦士さんは、まるまっている錬金術師のケープをかけ直した。

そして、火が消えないよう薪を焚べ、自分も眠りにつく。


--朝方--


「うぅ・・・はっ!寝床!あれ?朝・・・?」


焚き火はもう消えかかっているが、まだついている。

どうやら戦士さんが夜中に何度か薪を焚べていてくれたようだ。


「うぅ、申し訳ないことをした・・・とりあえず、薪をのっけておこう」


戦士さんが起きるまで薪を焚べる錬金術師。


『パチッパチ』


気持ちのいい朝に、薪が燃える音だけが聞こえる。


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