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初めての報酬

-昼も過ぎた頃--


「んーーーー、今日もお昼過ぎまでよく寝れたなぁ、お腹すいた」


空き家を借りて昼過ぎまで寝ていた。

近くで寝ていたはずの戦士さんはいなくなっていた。

外からいい香りがするので出てみると、戦士さんと村人達が朝食という名の昼食を食べていた。


「お、魔術師さんも起きたか!昨日と同じもんだけど、よかったら食べるかい?」

「いただきます!!」


そそくさと戦士さんの隣に座る。


「おはよ、おじょーちゃん、ちゃんと眠れたかい?」

「あはは、昨日のことでちょっとモヤモヤしちゃってたけど、おいしいもの食べたしよく眠れました」

「それはよかった」


大切な兜を半分頭にひっかけてかぶるように食事を取る戦士さん。

妙な者を見るように顔を覗き込む初級魔術師。


「それ、脱がないんですか・・・?」

「大事な兜だからね!それに、急に敵が襲ってきてもすぐかぶれるようにしておかなきゃ!戦士の心得だよ!」


だいぶ兜が気に入っているようだ。


「ほら、魔術師さんも食ってくれ!」

「あ、ありがとうございます!」


あったかい肉スープ、昨日たべたけどその味は格別だった。


「そうだ、あんたら旅の最中なんだろ?もう行っちまうのかい?」


二人は顔を見合わせる。


「あ、いえ、特にまだ決めてないんです」

「そうかい!じゃぁもう1日泊まって行かないかい?余った肉を燻製にしてるとこなんだ、よかったら持っていってくれよ」

「え、いいんですか!やったねおじょーちゃん!」

「燻製・・・おいしそう・・・」

「まぁ、大した報酬も払えねぇからな、そうだ、先にこれを渡しておくよ」


小さな包に銀貨と銅貨が数枚ずつ。

数日分の食事代にはなりそうだ。


「あ、ありがとうございます!」


再び顔を見合わせる二人。

ふたりともニッコリとする。

その様子を見て村人もニッコリ。


「うーん、手持ちのお金と合わせたら腕の防具も新調できそうだなぁ・・・」

「ダメです、このお金は初めての報酬なんだから大事に使います!」

「え、えぇ・・・右腕だけでも・・・」


そんなこんなお話しながら昼食を終える。


「さて、どうしよっか?」

「あ、一応あなぼこ直しておいたほうがいいですよね」


村人に見られないよう穴をふさぐ。(魔法見られたくないからこっそり)

どこからともなく鉱石を取り出し、穴の中にほおりこむ初級魔術師。

それを土に変換しなおす。

(土を鉱石に変換して穴を開けました)


戦士さんは驚いたような、理解しようと考えているように首を傾げている。


「どういう魔法なんだろ・・・」

「え!?見ました!?えっち!」

「え、えぇぇ・・・そうだ、お嬢ちゃんの魔法で壁も直せるんじゃないの?」

「・・・・いや、です・・・でも、時間もありますし、直すの手伝いましょうか」


二人は村の周りにある石壁の修繕を手伝う。

石壁は、両手で持てるくらいの大きさの石を丁寧に積み上げて作った石垣。

イノシシに突き飛ばされただけなので、積み上げることで元通りになる。


『ガコッ、ガコ』


「なかなか難しいですね、うまく、重ならないです」

「あはは、おじょーちゃんには難しいもね!こういうのはね、しっかり土台の石の形を見て次に乗せる石を決めるんだよ」


戦士さんは得意げだ。


「それに、ただ乗せるだけじゃなくて、こう少しずらしたり、角度を変えてみたりして積み上げるんだよ、あと隙間に小さい石を入れたりね」

「ふ、ふーん、そうなんですねぇ・・・」


初級魔術師は聞いた内容を全く参考にせず、こっそり石の形を変え、重ねて行く。


「あ!ずるい!」


すぐ戦士さんにばれた。


「い、いいんですー!」

「魔法使わないって言ってたのにー」

「そ、それよりぃー、戦士さん昨日なんでイノシシに向かって行っちゃったんですかぁ・・・?」


話をそらす初級魔術師。


「あ、アハハ、なんか行けるかなと思って・・・それに動物は人間と違って行動がわかりやすいからね!」

「そうなんですかー、取っ組み合いしてるときはびっくりしちゃいましたよ」

「ハハ、まぁ、じぃーちゃんも同じようにイノシシ捕まえたこともあるし、突進してくる前に抑え込めばなんとかなるかなって!」


元いた世界の人間と、筋肉の付き具合も違うのだろうか。

それともさすが戦士さんというべきであろうか。

しかしうまく話をそらすことに成功した。

引き続きガコガコと石を積み上げる。


--だいたい壁を治し終わったしあたりも薄暗く--


「こんなもんかな!おじょーちゃんもお疲れ!」

「うぅ・・・もう、腕があがりませぇーーん・・・」

「ハハハ、おじょーちゃんも僕みたいに鍛えないとねっ!」


ムキッと腕を見せる戦士さん、その腕は本当にムキムキだっ。


(そんなゴツくはなりたくないかな)


そう思う初級魔術師だった。


「おーい、おふたりさん!」


村人が近づいてくる。


「おぉ、もう壁を治してくれたのかい!助かるよ!さぁ、食事の準備ができたから来てくれ!」

「わぁーい」


村人達全員と一緒に食事をする。

本日はイノシシの豚骨スープに、村で取れた野菜を干した物を入れたやつ。

昨日のスープより味が出ていて野菜もとてもおいしい。


「はわぁ~、おいしいぃ」

(お米も食べたい・・・)

「うん、野菜も入っててすごくおいしいですねこれ!街の料理よりおいしいかも!」

「ハハ、あんた、褒め上手だな!」


実際においしい。

初級魔術師はともかく、戦士さんもここ最近あまり良いものを食べてなかったのかもしれない。


--食事も終わりかけて--


「そうだ、イノシシの牙と皮、これはあんたらのもんだ、報酬としてってとこだな、だが皮は、まだなめすまで時間がかかるんだ」


村人は、イノシシの大きな牙を2つ差し出してきた。

二人は顔を見合わせる。

初級魔術師は戦士さんのほうを向き、顔をふるふるした。

戦士さんも意味を汲み取りうなずく。


「いえ、その牙と皮は村のために使ってください、報酬もしっかりもらっていますからね!」

「そうかい、何から何まで、感謝するよ!」


(あ、皮で新しい鞄作ればよかったな)


そう思う初級魔術師であった。


--夜中頃--


(寝れない・・・)


外に出て空を見上げる。

とても綺麗だ。

この世界に来て初めての夜を思い出す。


(ここに来ていろいろ大変な目にあったけど、今日は良い1日だったかな)


経験したことないことだらけ、でも、元いた世界より全然いいかもしれない。

なぜなら、今は自分で考えて行動できるからだ。

食事だって美味しいし楽しみ、それに自分のために食事をとっている。

小さい頃から親の言いなり、聞かなければ暴力、食事も最低限、そのうち空腹を満たすだけの行為となっていった。

(友達に料理を作ってあげていたこともあり、料理は多少できる、だが、割りと質素な物が多い)


(あの時、お金持ちになりたいってお願いしたけど、こうやって何も気にせずのんびりするのもいいな)


お金持ちになるのもいろいろ考えないといけないし、お金持ちになってからもいろいろ考えないといけない。

ずっと悩みながら生きてきた初級魔術師にとっては、先のことを考えない行き当たりばったりの旅があってるかもしれない。


(今更だけど、本当に別の世界で、変な魔法も教えてもらって、あの人にはちょっと感謝かな、もっといろいろ教えておいてほしかったけど!)


「やぁ、寝れないのかい?」

「あ、戦士さんも?」

「だねぇー、最近この時間はずっと起きてたからね、アハハ」

「確かに、はじめて、、、久しぶりにゆっくりした夜かもしれません」


しばし無言になる二人。


「もしさ、おじょーちゃん、無理してるなら言ってね!」

「え?無理?はしてませんよ?」

「それなら、よかった!ほら、僕はこんなんだし、女の子と一緒に旅するなんてこともあまりなかったし、具合というか加減がわからないというか」

(あんまり?ということはあったのかな・・・?)

「今日も石積み大変だったよね?ちょっと無理させちゃったかなって」


思い出したとたん腕が痛くなる。


「うーん、たしかに腕は痛いですね・・・でも、大丈夫ですよ、気を使っていただき、ありがとうございます」

「そうかい、うん・・・あ、僕のことは気にしなくてもいいからね!」

「ふふ、わかりました!」

「あ、でも、防具とかかっこいい装備があったらちょっと気にかけてくれたら・・・」

「まぁ、考えておきますね!」

「お、お願いします!」


二人は笑い合う。


「さて、明日からどこに向かおうかな、どんなとこに行きたいとかあるかい?」

「そうですねぇ・・・見てみたいもの・・・・あの、魔王城とか・・・あるんですか?」

「おぉ、魔王城、いいね!僕も行ってみたかったんだ!」

(あるんだ・・・)

「でも、この大陸じゃぁないから簡単には行けないかな!でも、それまでにいろんな村や街もあるし、目指してみようか!」

「え、えぇ!じょ、じょうだんですよ!だって、魔王城とか、いっぱい魔物みたいなのいるんじゃないんですか!」

「?いや?いないよ?観光地だもん」


数十年前に勇者によって魔王は討伐された。

その後、魔王城は人間によって観光地にされたのだ。

魔王の残滓ざんしが感じられると、パワースポット的な存在になっているんだとか。


「よし!じゃぁ決定だね!」

「は、はいぃ」


変なことを言ってしまったなと思う初級魔術師。

しかし、観光地なら問題ないかとも思った。

少し寒くなってきたので寝床に戻り眠りについた。



--すっかり朝日も登った頃--


『コンコン』

「お二人さん、起きているかい?」

「ん・・・?はぁい・・・」


眠い目をこすりながら寝床から出てみると村人が来ていた。


「あ、起こしてしまったか、悪いな!」

「あ、いえいえお気になさらず」

「ほら、昨日言ってた燻製だ、しばらくは持つが、早めに食ってくれよ」

「わはぁ!ありがとうございます!絶対美味しいですねこれ!」

「はは、味は保証するぜ!」


その声を聞き起きてくる戦士さん


「あ、ありがとうございます・・・」

「見てください、美味しそうでしょう」

「うん?あぁ、絶対美味しいねこれ」

「ですよね!」


村人も嬉しそうだ。


「お二人さんは今日出立かい?」

「はい、魔王城に行ってみようかと」

「お、そりゃぁいい!楽しんできてくれよ!」

「はい!」


村人も良いと言っているのでとても良いところなんだろう。

そしてすっかり目も覚めたので旅立ちの準備。

といっても着の身着のまま、そんなに持ち物もない。

村人に挨拶をして旅立つ。


「ありがとな!戦士さん!魔術師さん!」

「さよならー!!」

「行ってきますねー!」



--二人は旅立った--



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