剣と戦士
--西の村への道中--
「剣ってのは結構難しくてね、ただ振ればいいってもんじゃないんだよね」
戦士さんは苦手な剣のことを得意げに説明している。
武器にも種類がたくさんあるらしく、さすが戦士というべきか、そのあたりのことには詳しい。
「そういえば、このあいだの盗賊さん達は、剣じゃなくて木の棒みたいなの持ってましたね、あんなのでも戦えるんですか?」
「あぁ、あれは棍棒だね!あなどっちゃいけないよ
棍棒ってのは、手に入れやすいし、自分の手に馴染むよう加工もしやすい、それに棍棒で剣の攻撃を受け止められると刃が刺さって剣を奪われかねないし、
さらに、戦士みたいにしっかりと装備を着けている人には、剣で切る攻撃をするより、棍棒で衝撃を与えたほうがダメージが大きいしね」
「それなら戦士さんも棍棒を持ったほうがいいんじゃないですか?」
「え?あ、いやぁー、でもほら、戦士って言ったらやっぱり剣じゃない・・・?それに剣って、カッコイイし!」
どうやら戦士さんは見た目を重視するタイプらしい。
「もしお金がたくさんあったら、金属のカッコイイ鎧を全身にまといたいね!あ、あと大きなカッコイイ盾と、いやでも大きな両手剣もいいなぁ!」
「・・・そういえば、おじいさんは持ってなかったんですか?えっと戦士の装備?みたいなのわ?」
「うーん、家にはなかったかなぁ?剣だけは大事にしてたの覚えてるけど、その剣もどこにいったのやら、でもやっぱり新しくてカッコイイのがいいよね!」
戦士さんは新しいもの好きでもあるらしい。
「ふと思ったんですけど、戦士って職業ですよね?普段は何をやってる人たちなんですか?」
「え・・・?っと・・・、なんだろうね・・・あは、あははは・・・」
「・・・?」
「いや、ほら、じーちゃん達の世代は魔王ってのがいたじゃない?だから結構仕事は多かったんだけど、今は力仕事全般かなぁ・・・?」
「魔王・・・ですか・・・?」
「うん、今はまだ次の魔王が出てきてないから、戦士としての仕事は少ないかなぁ?」
「戦士さんは戦士としての仕事が無い時は何をしているんですか?」
「えぇっと・・・木こりとか?物の運搬とか、狩りの手伝いとか・・・?」
どうやら今現在の戦士達の仕事は、日雇い労働のような仕組みらしい。
組合に街や個人が仕事を依頼し、戦士たちが依頼を受けるようになっている。
名のある戦士は、組合から指名が入ったりもする。
他にも、錬金術師や魔術師などの依頼も豊富だが、力仕事の依頼が圧倒的に多い。
言い方を変えれば、他の職に適さなかった人材が戦士になるようだ。
農業などの職は、若者に人気が無く、戦士になりたい若者も結構いるようだ。
とは言うものの、実際に戦士というのは自称戦士が多い。
戦士さんもその部類に入る。
なぜ戦士になりたい人が多いのかというと、戦士は夢のある仕事のようだ。
まず見た目がカッコイイし、有名になれる。
悪党や人々に危害を与える猛獣を倒す、すると戦士としての名が上がる。
名が上がれば、組合からの依頼も増え、報酬も高くなる。
さらに有名になれば国や街、お貴族様のお抱え戦士にもなれる、お金にも困らないし、さぞモテるであろう。
(少し違うかもしれないけど、プロスポーツ選手のような立ち位置)
なので、平民から戦士を目指す人は多い。
「なる、ほど・・・いろんなことやるんですね、戦士って」
「あはは、まぁーね、でも、いろいろ経験できて楽しいよ」
「このあいだの盗賊さん達との戦い、あーゆーのは怖くないんですか?」
「んー、まぁ怖いかな!でも報酬もいいし、カッコイイ戦士になるには、怖いものにも立ち向かわないとね!!」
「たしかに、怖いものに立ち向かわないといけませんよね、私は、逃げてばっかりです」
「いいんじゃないかな!僕も1人じゃどうしようも無い時は逃げるだろうし、それにちょっと見ててよ」
戦士さんは腰の剣を抜き、道脇に生えていた細い木の幹に狙いをさだめる。
そしてかまえ、剣を振り下ろす。
『ガサッ!!』
木の幹は折れたものの、切断はされていない、皮や繊維がつながっている。
「うーん、本当だったら綺麗に切断できるんだけどね。
まぁ、何が言いたいのかというと、僕も剣とちゃんと向き合ってないんだよね
剣が苦手で、剣の練習からずっと逃げてる、でもこれはきっと剣が悪いんだ!って勝手に思ってるよ!アハハ!」
「でも私、得意なこともないし、本当にいろんなことから逃げてきて、今ここにいるんです」
「得意なことがない!?そんなことないよ!あんなすごい魔法初めてみた!僕には一生かかってもできないよ!」
「でも、でも!あれも私の力じゃないというか、誰かにもらったものっていうか・・・たぶん・・・」
「僕も同じだよ!僕も親が誰かわからないけど、他の人より大きな体をもらったよ!じいちゃんも体は戦士に向いてるって言ってくれたしね!
それにおじょーちゃんは、君のことを知っている人がいない場所に1人で出てきたんだろ?
なら、新しい世界に生まれ変わったようなもんだよ!君が逃げてきたなんて知る人もいないんだ、
今は一人じゃないし、これから僕と一緒に何かに立ち向かおうよ!」
「は、はい!」
戦士さんの熱い語り聞き、戦士さんの言う通りだと思った。
この場所は本当に新しい世界で、自分は生まれ変わった。
過去のことなんて気にすることはない。
「よし、僕もなんだかやる気が出てきたな!でも剣はうまくなる気がしないなぁ・・・本当に棍棒のほうが会ってるかも・・・」
錬金術でいい剣は作れないかなとも思ったが、剣は手間のかかるものだと知っているし、素人が作って実戦で折れたりしても困るので今はやめておいた。
「ちなみにその剣はあんまり良いものではないんですか?」
「あ、これ?うん、全然良くないよ!なんか山に落ちてたのを自分で頑張って研いだんだ!全然切れないよ、アハハ!」
「じゃぁ、普通にいい剣を買えば、もっと上手になるんじゃ・・・」
「いやぁー、それが剣は本当に下手くそで、じーちゃんのいい剣を借りても同じ結果だったよ。それに、いい剣はやっぱり高いんだよ・・・」
戦士さんはため息をつくが、ふと思い出す。
「あれ?ちょっとまてよ。おじょーちゃん、昨日の夜、壁を金貨に変えてたよね・・・?」
「あ、あえへぇ・・・?」
まずい、自分が偽金作りの犯人だとばれてしまう。
汗が出る、冷や汗がたくさん出る。
なにか言い訳しようかと思ったより先に戦士さんが話し始める。
「おじょーちゃん、もしかしてだよ・・・お金作れるなら大金持ちになれるんじゃないか!?どこかの街の壁をちょっと借りて!」
戦士さんは単純だった。
壁があれば金貨が作れると思っているようだ。
脳まで筋肉なのだろう。
「あは、あはははは・・・い、いやー、ほら、でもあれはたしかに金貨なんですけど、魔法印のほうが・・・」(金貨には鍛冶師による魔法印が付けられている)
「あちゃーー!そうかーー!やっぱりそううまくいかないよねーー!」
「そ、そうなんです!あの時とっさに金貨に変えただけで、普段は絶対にしないんですよ!そう、たまたま盗賊さん達のことを思い出して、
あの、その、あの人達のマネして、偽金で注意を引くことができればって、おも、おもおもおもってぇ・・・・です!」
必死に言い訳をしようと、思ってもいなかったことを説明する。
「なる、ほど・・・賢いんだね、おじょーちゃん!いやまぁ、あれだけの魔法が使えるんだからそうだよね・・・」
「ハハ、アハハ・・・はいぃ、まぁ・・・」
「まぁでも、悪いことはよくないよね、でもさ、自分で金貨を作って、魔法印も付けれるのは悪いことなのだろうか?」
「ど、どうでしょうね・・・でも街の壁を壊しちゃうのは良くないですね・・・」
「確かに!」
なんとか戦士さんにはバレなかった。
「あ、あと、なんですけど・・・私の、魔法?のことは他の人には内緒にしといてほしいんです・・・」
「うん?あー、そうだね、おじょーちゃんがやったって知れたら大事だしね、わかった、約束するよ!」
「えへ、へへへ、ありがとうございます」
「そうだ、そろそろ村が見えてくる頃だよ!」
--西の村へ--




