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犯罪者よ小説になろう!

作者: ヒロモト

『極卒出版社は今すぐ潰れろ。俺に殺さたくなければ』


『この本を被害者の家族が読んだらどう思うのだろう……心が痛い』


『倫理観とかないんか?』


『このハッシュダグを拡散お願いします!#私達は極卒出版社の本を買いません』


多少の殺害予告はあるが、ネットは相変わらず平和だ。

さて。結果は分かりきってるが先週の売上げランキングもついでに見てみるか。


3位……あの子は泥の味がした(極卒出版)


2位……親が悪い(極卒出版)


1位……今も悲鳴を思い出す(極卒出版)


ははは。大ベストセラーだ。

我が社は出版不況知らずだな。

人を殺して喰った男の小説。詐欺グループの元リーダーの少年の小説。そして小学生連続通り魔事件の犯人の小説が表彰台独占だ。

人は結局、過激でゲスな話が好きなのだ。

恋愛詳説をメインで売ってた時の何百倍も我が社の売り上げは伸びている。

被害者家族に訴えられようが、通り魔事件の犯人の小説はイケメン俳優を主人公にした映画が公開されるので損より得が遥かに多い。

犯人自体も「精神疾患の疑いのあるイケメン」なのが良かった。

犯人もまた被害者などと減罪を主張する弁護人。熱狂的な信者。

流れは完全にこちらに来ている。


「編集長。例の近親相姦殺人のクソ野郎のバーチャル配信者としての初ライブですが……」


「あん?五万人ぐらいは集まったか?なんちって」


「いえ。三十万人です」


「ブホッ!」


若い編集と5分ぐらい笑いあった。

コメント欄はこの世の終わりぐらいには荒れに荒れたらしいが、見てる時点でそいつらの負けだ。

犯罪者ビジネスは止められないなぁ。


「ほえっ!?」


「どうしました?編集長?」


『今も悲鳴を思い出す』を書いた、通り魔事件の犯人が刺されて死んだとネットニュースの速報があった。

犯人はネットの掲示板に犯行を予告する書き込みをしていただと?

名前は『正義の虎』


「なんかこいつ聞いたことあるな」


ああ。たった今ネットで見た日本語のおかしい殺害予告の書き込みした男のアカウント名じゃないか。

狙いは俺達じゃなくてイケメンの方だったか。


「うわぁ!うちの稼ぎ頭が殺られたかぁ!ヤバいすね。編集長」


「ヤバくねぇよ。ドラマチックな死に方だ。あいつは神格化されるぞ。映画もヒット間違いなしだ」


デスクの電話はいつも鳴りっぱなしだが俺は出ない。

ほとんど苦情と殺害予告だからな。

呼び出し音と留守電メッセージがここのBGMだ。

しかし電話からビジネスの匂いがプンプンしたので俺は数年ぶりに電話に出た。


「こちら極卒」


『俺だ!正義の虎だ!ニュースを見ただろう!?』


「無職か?」


『……え?』


「ちゃんと仕事してる奴は犯罪をしないって持論があってな。9割方無職だと思うがどうだ?」


『うるさい!正義は執行された!』


そこから何やらごちゃごちゃと政府の陰謀論だのワクチンはスキルス癌を誘発させるだの今年のタイガースはどーのこーのうるさかったので俺は本題を切り出した。


「俺は感動した。お前。本を書かないか?世間の奴らにお前の正義って奴を伝える手伝いを俺にさせてくれ。政府の陰謀に気が付かないバカ達にお前の賢さを思い知らせてやろう。お前は『特別』で『選ばれた』人間なんだ」


『……あのぉ……えっとぉ』


ネットでも現実でも素直に自分の意見を聞いて、讃えてくれる人間はいなかったのだろう。

声が嬉しそうだ。

俺は次の金のなる木を見つけた。



「ところでお前。イケメンか?」


『……イケメン?』



「未成年ならなお良いな」


















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