視た者
ジーラが清志朗君の怪我の具合を確認し、止血している。
「機械人形も普通に……怪我とかするんだな。医者に診せた方がいいかもしれない」
「ほっといたら、何れ治るよ」
何て事ない風に、平気そうに振る舞っていた清志朗君だが顔色は悪い。
「清志朗君。できるか分からないけど『エナジーチャージ』を試してみてもいい?」
「それって、もしかして……」
「うん」
『基本コマンド』6番目の『エナジーチャージ』。過去、死にかけた一高をルミフィスティアが『エナジーチャージ』で治した事もある。清志朗君の怪我にも効くかもしれない。
ただ……他の1から5のコマンドの目が出る可能性もある。
でも、やってみる価値はあると思う。
「『基本コマンド』」
目の前に黒い背景、白文字のいつもの画面が現れる。
1アドバイス
2自力で何とかする
3スコアボード
4マップ
5魅了
6エナジーチャージ
これで『基本コマンド』三回目のチャレンジだけど、今回都合よく『6エナジーチャージ』を選べるか自信はない。でも、気持ちは全力で臨む。
山の斜面の、比較的平らになっている土の上に膝を折る。
「…………」
(当たれ……! 6番……!!!)
両手に握った鉛筆を捧げ持ち、目を閉じる。
次に目を開いた時、地面にひょいと落とした。手から離れた鉛筆は音も立てず木の根に跳ねて転がり、止まった。
両手をついて、その間にある鉛筆の目を確認する。
「…………4!??」
4って言ったら……マップ?!!
その時、頭がぐわんっと揺れた気がした。
私の異変に気付いて清志朗君が近くで顔を覗いているようだったが、そちらは余り見えなくて。今、私が見ていたのはまだ遠くにある筈の崖の岩肌だった。
「!?」
首を横に向けて辺りを見ると、やはり森ではなく海のような場所だったり、後ろの今まで下って来た山の上と思う方を向くと、さっきまで私たちがいた石造りの城と思われる建物が見える。
「!? !?」
とりあえず、心を落ち着ける為に目を閉じた。
……そっか。『マップ』……千里眼みたいなものってモコたんが言ってた。もっと地図っぽいやつを想像していた。
目を開けると、森が見えた。
「えっ?」
……いつもの見ているような視界に戻ったんじゃない。
『森』が私の下にある。つまり、『森』を上から見ているのだ。
視線をずらすと崖が見えたので、ここは……さっきいた森の上空……?
崖の上にはまた森が広がり、川があり、町らしきものが見える。大きな川や砂漠、沼……いつかアークと、ミズさんやエイジャとも旅した場所かもしれない。
その先に意識を集中すると、山の上に巨大な城があった。山自体が城の基盤になっているようで、裾野から町が続いている。見惚れてしまう程の白い城には、色の綺麗な石の細工やその石で舗装された道だとか、至る所が美しかった。
大きな満月に照らされ浮かび上がり、幻想的な絵画のようだ。
思わず溜息をつく。
もしかしなくても……ここが東の王国……だよね? 以前未来で見た『東の都』の城も素敵だったが、この城はもっと……思ってもみないくらい圧倒された。
この城が特に目立つけど、他にも城らしきものがあった。左方の遠くで赤いものが揺らめいて「何だろう?」と目を凝らして見つけた。
「……燃えてる……」
その城の周囲の町からも煙が上がっている。幾つも、幾つも……。
「大変!」
上空でわちゃわちゃ慌てる。どうにか助けたいけど、どうする事もできない。
あれっ? よく考えたら私、今空を飛んでるの?
両手を見つめる。半分透けている。まるでお化けになったみたいだ。
どうやって元の場所に戻ればいいんだっけ? うーん。とりあえず、元いた森を思い描いてみる。
あっ! 清志朗君たちが見える。目を瞑って座っている私の前で手を振ったり、顔を覗き込んだりしてる。
彼らをその後ろから眺める。不思議な感覚だ。
目を閉じている私の後方に立っていたアークがふっと顔を上げてこっちを見た。
瞳が合った。
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