気苦労の絶えない仲間②
気味の悪い光景に悪寒がする。
「何……? あの生き物……!!」
はっきり言って、気持ち悪い。犬の首に巻き付いた蛇が「シャー!」と威嚇すると、犬が「ギャッオ!」と鳴いて飛び跳ねこちらへ突進して来た。
私の三メートル程前にいるジーラに跳び掛かる。
「……っ、ジーラっ!!」
彼がユラッと前方へ動き、光が走った。剣を薙いだ時に反射した光だと、後から気付いた。
ジーラが斬った瞬間、空中の闇が蠢いて斬られた生き物を呑み込んだ。
「……っ!?」
何が起きたのだろうか。突然、謎の生き物が空中で消えたように見えた。
「ハハッ! これはまた……楽しめそうだ」
ジーラの本当に楽しそうな笑い声に、この人はこんな時に何を言ってるの? と唇を噛んだ。
だって……今、空中で消えた気持ちの悪い生き物が……何十匹も周囲の森から出て来ていたから。
「蛇犬の巣穴かな? ここって。細かいのは君に任せるよ」
ジーラに背を向けたままでニコニコしていた清志朗君だったが、スッと目が細くなる。
「僕は、こっちの方が楽しそうだから」
やっぱり、私の後ろに何かいるんですね?
もう怖くて振り返るどころか一ミリも動けない。
「▲%○」
……! 聞いた事のない言葉が、後ろの方から聞こえる。
「×%■○▲!」
何て言ってるのか分からない。
「こんな所に……人型の魔物が出るなんてね」
! ……魔物?
清志朗君……私の後ろにそんなのいるの??
……じゃあ、もしかして『蛇犬』って言ってた前方の気持ち悪い生き物は、人型じゃない魔物って事ですか?
この時代って魔物が存在するの? モコたんと初めて出会った時、ジーラがモコたんの事を魔物じゃないかと警戒してた事もあったけど……本当に魔物っていたんですね!!
「アーク、結芽を頼んだよ」
言い終わるより早く、清志朗君は地を蹴り私の座っている岩の横を足掛かりに跳んだ。
「●×! ▲○!」
振り返ろうとした私の眼は、右横の数メートル離れた茂みから出てきた蛇犬を見つけてしまう。それと目が合い硬直する。
蛇が威嚇する。犬が鳴く。距離を詰められ、跳び掛られる。
動けず目を閉じると「ギャイン」と蛇犬の鳴き声がした。
薄っすら目を開けるとアークの背中があった。アークの前方で、蛇犬が闇に呑まれる。
あの生き物は一体……どこへ消えてるんだろう? 考えたが、今はそれどころじゃない。
私の後方に跳んだ筈の清志朗君がいない。
見渡すが、どこにもいない。
不安になってジーラを見ると、数十匹いた蛇犬はいつの間にか一匹だけになっていた。襲い掛かった蛇犬に一振りし、彼は剣を鞘に納めた。空中で消える魔物。
「清志朗君が……いなくなってしまって……!」
言葉は伝わらないと分かっていたが、ジーラに助けを求める。
「僕なら大丈夫だよ」
「ひぁっ!」
突然現れた清志朗君に、心臓が飛び出そうなくらい驚く。
「えっ!? ……どこから……えっ?」
「この世界には、不思議な事がいっぱいあるんだよ?」
片目を閉じて茶化した清志朗君の額に、大粒の汗が浮かんでいる。彼が押さえている左肩から血が滲んでいる。
「ごめんジーラ……奴を逃した……。もう一人仲間がいた……」
そして何故かアークの顔を見上げて嘆息した。
読んで頂きありがとうございます。
もしよければ下の「☆☆☆☆☆」から評価・応援して頂けると励みになります。ブックマークもとても嬉しいのでどうかよろしくお願いします……!