再び、残された三人
王に続き、兵士たちもゾロゾロ退出して行く。怪我をして蹲っていた覆面の男は他の兵士に支えられながら自ら歩き出て行った。
部屋に残る私たち三人。
「……」
「……」
「……」
何て切り出せばいいか考えて無言になる。他の二人も沈黙している。
ジーラに聞きたい事がある気がするのだが、まだ頭の中でまとまっていない。それに私が尋ねたところで直接通じないからまどろっこしい。
内心考えあぐねていると、ジーラが私の前に立った。
「ルミフィスティア姫」
床に片膝を突いた彼の紫の瞳が、私の瞳を捕らえた。
「どうかオレと一緒に東の国へ来てほしい。絶対……悪いようにはしないから」
さっきこの国の王様が「東の国の要求」とか「ルミフィスティアを差し出す」とか言ってたので、ルミフィスティアは東の国へ行く事が決まったのだろう。
ここで断っても多分何らかの形で連れて行かれる気がする。彼の言葉は私の意志の確認の為と、彼の『お願い』なのだと思う。
「……アークも一緒に行くなら……」
私の返答に、ジーラが清志朗君を見る。
清志朗君は首を竦めて私の言いたい事を伝えてくれる。
「この国の秘宝の側に『アークA‐02』という機械人形がいる筈なんだ。彼女は彼も連れて行きたいそうだよ」
「それは興味深いな」
ジーラは面白そうに目を細めた。
「それから……」
私はジーラに真剣な顔で告げる。
「私はルミフィスティアじゃないから。体はルミフィスティアなんだけど、中身は逢坂結芽だから」
この時代のジーラは私たちとまだ出会っておらず、当然私の事も知らないだろう。
ちら、と清志朗君を見る。
「ハイハイ……。私はルミフィスティアじゃないから。体はルミフィスティアなんだけど、中身は逢坂結芽だから」
もう面倒くさくなった顔で、そのままの言葉を伝える清志朗君。
「やはり。そうだろうな」
驚かずに頷いているジーラ。
「あのネコも貴方の事を『結芽』と違う名前で呼んでいたし、最初に廊下で会った時に一瞬で別人に替わった印象があったんだ。前の貴方はすぐに『至宝』だと分かったが、今の貴方は……半分だけ『至宝』であるような印象だ」
「そんな事も分かるの?」
「そんな事も分かるの?」
私の言葉に、すかさず清志朗君が同じ言葉を繰り返す。
「ああ。至宝同士はお互いが至宝である事や、何となくだが相手の性質も感じ取る事ができる」
「へぇー、そうなんだ。……でも、本物のルミフィスティアじゃないのに私が東の国に行って大丈夫かな? 詐欺だって言われない?」
さっきと同じように、私の言葉を清志朗君がそのまま伝えると……。
「構わない。オレが何とかするさ。それで戦争を回避できるなら、どうって事ない」
と、ジーラは優しい目をして微笑った。
うーん。これは……。
普段、鋭い雰囲気の人が時折見せる穏やかな一面……。
私の知ってる一高もこんな人ではあるかもしれないけど、今目の前にいるこの人の容姿は一高と違うので何か変な感じだ。
まぁ、私にはアークがいるので彼にときめいたりとか、断じてありませんけど!
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