初心者②
『スコアボードを終了します』というメッセージが表示され、それまで見えていた画面は全て閉じるように消えた。
「え!?」
急に消えてしまった『スコアボード』に唖然としていると。
「結芽〜。何か僕の情報見ようとしたでしょ。プライバシーの侵害だよー」
と清志朗君がわざとらしく被害者ぶってみせた。
という事は、清志朗君が自分の情報を見られたくなくてボードを消したって事だろうか!?
そんな事ってできるの!??
目を丸くして彼を見ていると。
「どうせボードが消えたとか……だろ? 君を見てたらだいたい分かるよ。君が見ていた『スコアボード』にも、制限時間とかあるんじゃないかな? 例えば……『基本コマンド』はモコたんの小説の一話につき一回までしか使えないって言ってたから……。もしかしたら君が『スコアボード』を読んでるうちに次の話へ切り替わったのかもね」
なるほど。そう考えると辻褄が合うような気もする。どこら辺で次の話に切り替わるのかはモコたんのみぞ知る、だけど。
「ああっ!」
私は気が付いて声を上げてしまう。
「建物の情報……見ておけばよかった……」
「そういえば、そうだね」
建物の側にも何やらボードが出てはいたのだが初めての『スコアボード』使用に、手前にあった兵士やら自分やらの情報を先に読んでいた。
「……!」
そしてある事に思い至る。
「そうだ! 次の話に切り替わったのだとしたら、また『基本コマンド』使えないかな?」
「……やってみれば?」
清志朗君は笑顔のままそう言った。何か含みがある?
「『基本コマンド』!」
両手を前に出し、唱える(鉛筆は右手親指に挟んで持っている)。
…………。
何も起こらない。
「出ない!? 何で?」
「やっぱり」
こうなる事を予見していたかのように、そう口にした清志朗君。
「さっきも君、既に『基本コマンド』って言っててその時出ていなかったから出ないだろうなとは思ってたよ。これは僕の推測だけど……仮に『基本コマンド』を一話分の話の終わりまで使って次の話の頭でそのコマンドが終了した時、その終了した話中は『基本コマンド』は使えないのかもしれない。終了した時の話も『基本コマンド』を使用した事とカウントされてしまうんじゃないかな? ……何か双六とかの一回休みのマスみたいだね」
おかしそうに笑う彼。
「それで結芽、何か使えそうな情報はあったの?」
問われ、うーんと唸る。
兵士たちがそれぞれ水虫と虫歯の持病があるくらいしか。……大した情報は得られなかったと思う。
諦めて首を振る。
「ふーん。じゃあこの後どうするのさ」
清志朗君は再び頭の後ろで手を組んで、目を細める。
その時兵士たちの守る、問題の扉が内側から開かれた。
「これは……。外で話し声がすると思ったら、ルミフィスティアではありませんか」
ぞわ。
……!?
何だろう。体が勝手に……鳥肌が立つ。
扉から現れた男は、黄土色のストレートのショートヘアで目がニヤついている。厚ぼったい貴族風の服を着ていて、身分はそれなりに高そうだ。
「ボクに会いに来てくれたのかな? 嬉しいなぁ」
兵士たちが左右に道を空け、その間を進んで来る。私の手前までやって来て、あろう事か私の顎をくい、と指で持ち上げた。
ゾワゾワゾワ。
顔にも少し鳥肌が立つ。
この人は……誰……!??
「やだなぁ。そんなに見つめて。いくら婚約者であるボクの事が好きだからって、流石にこのボクでも照れてしまうよ」
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