運命を握る者③
何の変哲もない、ただの使い過ぎた鉛筆に見える。短いので字を書き辛そうだ。
それでも実はすごいアイテムかもしれないとよく見てみると、真ん中らへんに小さい穴が何個か空いている。これは……。
昔、小学生の頃に私もやってた。六角の鉛筆の六面それぞれにサイコロの目のように穴を空け、転がして遊んでたっけ。
鉛筆には細かい傷が多く、使い古された印象だ。
「この鉛筆を振れば……まさか魔法が使えるとか?」
魔法の杖みたいに。いささか短いが。
自分でもそれはないと思い、笑いかけた。だが。
「さすが結芽ですニャン。我の主人公は飲み込みが早くて助かりますニャン」
「え!!?」
正解だったの!!?
この短い鉛筆を振って魔法を使う……考えてみたけど、様にならない。
苦い顔の私に、ネコが補足する。
「何か勘違いしているみたいなので言っときますニャン。これはサイコロの要領で使いますニャン。ちょっと今手元にサイコロが見当たらないのでそれを使って下さいニャン。言っておきますけど一応神聖な神器という体ですので、大切に扱って下さいニャン。むやみに振ってはいけませんですニャン」
もう一度、手の中のちまっとした鉛筆を見やる。
「結芽、『基本コマンド』と唱えて下さいニャン」
「『基本コマンド』?」
ネコの指示した言葉を繰り返すと、目の前によくゲームのRPGとかで出てくるようなウィンドウが現れた。
「おおう?!」
画面には、
1アドバイス
2自力で何とかする
3スコアボード
4マップ
5魅了
6エナジーチャージ
と書いてあった。
「!??!?!」
「内容を簡単に説明しますと、1のアドバイスは我からのヒントや助言を得られますニャン。2の自力で何とかするは使っても何も起こらないので言わばハズレコマンドですニャン。3のスコアボードは対人対物もしくは自分の情報を見る事ができますニャン。4のマップは千里眼みたいなものですニャン。5の魅了は使うと相手の好感度が上がって操りやすくなったりしますニャン。6のエナジーチャージはご存知のとおり相手や自分を回復しますニャン」
コマンドが六つ。
「まさか……?」
「はいですニャン。その鉛筆を振って、出た目のコマンドが実行されますニャン。困った時とかに使ってもいいですニャン。但し、今我が書いているこの世界の物語の一話につき一回までしか使えないという制約がありますので注意して下さいニャン。因みに現在、途中に挟んだあらすじを入れて七十八話目ですニャン。まあ、使えない時は『基本コマンド』画面は開きませんので留意して下さいニャン。そして一番大事な事……この鉛筆の本体は別の次元にいる我の本体が実際に持っていますニャン。どういう事かと言うと……我の本体が鉛筆を振って出た目が、結芽が出す目という事になりますニャン。つまりこれは我と結芽の真剣な、この物語の行く末を決める儀式……なのですニャン。もちろん結末はまだ……決まっていませんニャン」
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