運命を握る者
「? ……どうされました?」
黒衣の青年が私の顔色を心配している。
「えっと……」
広い廊下の壁に縦長の長方形に空いた窓から風が入る。窓の外に目をやると、何だか見た事あるような山並み。そして湖。
「?」
デジャヴ?
もっとよく見ようと窓辺に寄る。
やっぱり。湖の色は違うが、山並みは同じ。
ここは……あの廃墟の城の近く?
下を見ると石畳の広場もある。位置的にここは……あの『うらしま君』が置いてあった部屋よりも高く、しかも別の建物のようだった。
もしかして……十万年後の未来にあった廃墟の……廃墟になる前の城!?
そしてルミフィスティアが存在するという事は……彼女が『うらしま君』で眠りに就く前の時間……?
「何で……?」
呟くが、当然その答えを与える者はいない。
……そう思っていた。
「やー、困った。困ったね」
「!?」
廊下の突き当たりの角から十三、十四歳くらいの少年が姿を現した。
西洋の貴族のような服で、肩の辺りで切り揃えられた髪は薄茶色でサラサラ。
腕の中に彼の髪色と似た色の、非常にモコモコした毛の……ネコを抱えている。
「はじめまして、結芽さん。……お互い困っちゃいますよね、こんな状況」
「……どちら様ですか?」
突然話しかけてきた少年を訝しむ。私の名前を知っているのも怪しかった。
「ああ。警戒しなくても大丈夫ですよ。危害を加えたりしません……今は」
ニコッと笑う彼は、見た目は少年なのにどこか年配の人のような落ち着きがあった。最後に加えた一言がとても物騒だ。
黒衣の青年が、彼から私を隠すように私の前に立つ。私からは青年の背中で少年が見えなくなる位置だ。
青年の右腕の辺りから顔を出して前方の少年を窺う。少年とは三、四メートルくらい離れている。
「アンタ……何者? 徒者じゃないな」
青年が緊張感の籠った声で問う。
少年はニコッと笑う。
「僕は清志朗といいます。あとは秘密です」
「……!?」
聞き覚えのある名前に、私は目を見開く。だがそれ以上に驚いたのは。
「わた……我はこの世界の神の化身……なのです……ニャン。よろしくです……ニャン!」
少年に抱えられたネコが喋った……その事。
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76.運命を握る者
ここまで読んで頂きありがとうございます!
ブックマーク、評価も本当にありがとうございます!
この章から創作方法を変えますので、結末まで辿り着けるか未定です。物語も様相がガラッと変わってしまうかもしれません。
それでも是非一緒に、結末までお付き合い頂ければ……と思います。
(前書きを再掲載しました。2022.2.12)