花冠の主(あるじ)
なんやかんやで、元の廃墟の城へ帰って来た。
ミズさんが
「どうせオレが無理やり結芽を元の時代に戻そうとしても、アンタが阻止するだろう? はぁぁ~」
とアークに溜め息をつきながらエイジャの村まで送ってくれた。ミズさんとエイジャとはその村で別れた。
両腕に私を抱え、無言で山を登るアーク。話しかけ辛い雰囲気に、私も口を閉ざしている。
いつもの廃墟の城の前、石畳の広場に着くと以前見た事のある鳥が飛んで来た。
「ギャッ、ギャッ!」
大きめの包みを受け取ったアークはそれを私に手渡した。何だろう?
「これは……?」
「支度が終わったら、呼んで下さい。迎えに行きます」
私はいつもお風呂代わりに水浴びしていた泉で体を念入りに洗い、アークに手渡されたワンピースに袖を通した。裾が長く、生地は真っ白で水色のレースや星のような小花の刺繍が所々に散りばめられている。とても綺麗だ。もしかしてここへの帰り際、東の都の服屋にアークが寄り道していたのは、このワンピースを買う為だったのだろうか。
アークに手を引かれやってきたのは、森の奥。一面に大小様々な淡い色の花の咲く少し開けた場所だった。森にこんな美しい場所があったなんて。感嘆していると、アークが更に奥へ案内してくれた。
ん? 何だか見た事のある木……。
「あっ! ここって……」
二年前にルミフィスティアの魂の奥に眠る前、最後に来た場所だ。この木の下で泣いてたっけ。
その木の手前に切り株があって、その上に花で作られた冠が二つ置かれていた。白い大きな花と、黄色の小さな花、紫のヒラヒラした花……丁寧に編み込まれている。
「受け取って下さい」
アークが自ら作ったのだろうか?
少し屈むと、頭に載せてくれた。
「ありがとう……」
私も屈んだ彼に花冠を載せる。
(捜しに来てくれてありがとう)
手を取り合って見つめ合った。
二人だけの小さな結婚式だった。
読んで頂きありがとうございます。
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72.花冠の主
読んで下さってありがとうございます!
この章もあと何話かで終わります。次章から創作方法を変えようと考えておりまして、混沌とする予定です。
最後があるか、どう転ぶか分からなくなっていきますが、お付き合い頂けると幸いです。
(前書きを再掲載しました。2022.2.12)