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集いし悪魔たち


 逢坂家の居間。平日の夕方。

 帰って来た結芽の弟はゲームの準備に取りかかっている。

 今日の朝目覚める筈だった結芽が目を覚まさず、未来の自分とも交信できない。こんな事は初めてで戸惑った。

 一高はまだ会社で仕事中だったので、とりあえず由治とミズに来てもらっていた。

 そこで一旦ミズが「俺、未来あっちのアークの様子見てくるわ」と言い、ソファに座ったまま動きを止めた。そして……。


 フリーズしていたミズの口の端から血が垂れ出した。


「ミズさん!?」


 いきなりな事に結芽の弟が心配する。

 そしてミズは唐突にカッと目を見開いて、


「俺に言わせるんかいっ!!」


 誰にか分からないツッコミを入れた。


「おっと。結芽の口癖が移ってるぞ」


 彼は自分にもツッコミつつ切れている口の端に気付いて血を親指で掬いペロッと舐め、そのまま爪を噛んでいる。


「やー、マジ言いにくいわー」


 ブツブツ何か呟いた後、私に目を細めて告げる。


「あー、何だ。未来のアークがアンタに……宣戦布告してきたぞ。結芽はずっとあっちにいる事になるかもしれない……」


「は?」


 話を見守っていた結芽の弟が聞き返す。


「このまま魂が戻らなかったら……こちらの結芽の体はいずれ死んでしまうだろうと未来のアークが言ってた」


 そんな……。本当に未来の自分がそんな事を? だったら、自分はどうすれば……彼の思惑に勝てるのだろうか。

 結芽を死なせる訳にはいかない。けれど勝算は……ない。


 何も妙案を思い付けないまま藁にも縋る思いで、ずっと気になっていた自分たちの情報を覗いている人物……彼に接触してみる事にした。



★~★~★~★~★~★~★~★~★~★



 下校時刻。またクラスで逢坂……あの不思議な歌の鼻歌を刻んでいた奴の悪口とか、勝手なイメージの噂が飛び交っている。

 そういえば今日、休んでたな。

 クラスでも派手な部類のツインテールの女子が特にうるさい。


「私のおねーちゃんが一年の時アイツも一緒のクラスで、根暗な奴とばかりつるんでた根暗な奴だから話さない方がいいって! だから話しかけられても無視してやったの! 清野もそう思うよね!?」


 親しくもないのに呼び捨てされイライラているのに、あまつさえ彼女は勝手にオレの肩に手を置いてくる。


 うっぜー。もう我慢ならん。


 こっちは真剣に考えなきゃならない事があるっていうのに。数日前、高太郎と一高兄ちゃんが話していたのはオレの事だ。もしかしてオレ? って大事なトコなのに……。



 同意を求められていたので、


「うるせーな。あんま話した事もないくせにどういう奴か分かるんだ、お前。すごく信憑性に欠けると思うけどな」


 と、ある程度怒りを抑えて(それでも少し滲んでたかも)言ってやる。


 彼女は顔を真っ赤にして、それから二度とオレに寄り付かなくなった。ああ、スッキリした。



 帰ろうと教室を出た。廊下の窓から校門に人影が見える。女子がモデルみたいでかっこいいとか騒いでいる。あれは……。



 校門で待つ人物に話しかけた。


「やあ? はじめまして、かな? アークA‐02」



★~★~★~★~★~★~★~★~★~★



 私、一高、ミズ、由治、美紡子、清野、高太郎(清野の信者でボディガードと一高が説明していた)、一高の父親というメンバーで緊急会議が開かれた。場所は一高の実家だ。


 十万年分の知識と引き替えに。そう、あの結婚式の日……悪魔にだって誓うと決めたのだから。


 畳の敷かれた広間はシンと静まった。信じきれないと驚愕する者も多く何れにしても皆、有効な策を思い付けないでいた。

 結芽本人も帰る気がないようだとのミズの言葉に、絶望的な未来を予感した時……。


 ガシャンッ。


 音がして襖を開けると、八人分のお茶と湯呑みを畳に落としたままルミフィスティアがこちらを見ていた。


「結芽が……戻って来ない……?」



読んで頂きありがとうございます。

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