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歌の刻み手


「アンタは……誰だ?」



 復学した高校で二年生として再出発する事になった私……逢坂結芽は、もう十八歳だ。

 ルミフィスティアの意識の中で眠っている間に二年くらい経っていて、その間行けていなかった学校にまた通い出した。まぁ、元々休みがちではあったんだけど……。


 休みがちだった理由。当時一年生だった私はクラスでいじめられていた女子を庇い、巻き添えで嫌がらせされるようになった。よくあるパターンかもしれない。そして学校がつまらなくなった。


 彼女たちは今年卒業しただろう。よかった、顔を合わせなくて。


 そう考えながら桜舞う陽気にフンフン鼻歌を口ずさみ廊下を軽快に歩いていると、いきなり後ろから手首を掴む人物がいた。

 そして冒頭の一言を投げ掛けられた。



「その歌……っ、どこで……!!!」


 手首を掴んだまま、同じ二年の男子(上履きが同じ緑だから分かった)が言いかけたが


清野きよの。次の授業、外だろ? 早く着替えて行こーぜ」


 と、他の二人の男子に絡まれ口籠もっている。そのうちの一人が掴み掴まれた私たちの手を見て


「あれ……お邪魔だった?」


 とバツが悪そうに頭を掻いた。


「……別に」


 明らかに機嫌が悪そうに手を放し、二人と共に教室へ戻って行った。


 ……? ビックリしたー。歌? 口ずさんでいたのは『七つの島国』ですが……。

 彼が知っている筈もないし、単に旋律に興味を持ったのかな? と思っていた。



★~★~★~★~★~★~★~★~★~★



「フンフンフフフン、フンフンフーン」


 俺は……信じられないものを聞いて、由治と共に震え上がった。

 あの一高が……鼻歌を歌っている!??


「ミズ……彼に一体何が起きたんだ? あれは機嫌が良いのか? 悪いのか? 恐すぎるんですけど」


 由治が顔をゾッと強張らせて俺に尋ねてきた。

 そんな俺たちのやり取りにも気付かず、今いるこの屋敷の庭の花を愛でながら一高は呟く。


「ああ……世界は何て素晴らしいんだろう……」


 流石に鳥肌で背中をゾクッとさせながらも、勘のいい俺は察した。


「ははぁ……一高……アンタもだいぶ分かり易くなったな……」


「へ?」


「けど心臓に悪いから鼻歌はやめてくれ」


「ん? ああスマン?」


 本人は上の空で分かっていない様子だった。


読んで頂きありがとうございます。

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