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新世界に月は歌う ※現在改稿中です。  作者: 猫都299
新世界に月は歌う③ 闇夜の星
61/151

闇夜の星⑤


「自分が……何を言っているのか、分かっているのか?」


「……もちろんです。せめて……あなたの思い出があれば、私……それを胸に歩いて行けると思うんです」


 彼女は涙を払う為に目を閉じた。

 その一瞬の隙を、オレは見逃さなかった。

 ナイフを持つ彼女の手を掴み、それを取り上げ床に投げた。


 カラン、と遠くで音がする。

 上半身を起こしたオレは、彼女の手首を掴んだまま反対の手で彼女の顎を持ち上げた。

 よかった、やいばあとは付いていない。

 そのまま至近距離から顔を見下ろす。


「……チャンスをふいにした事、一生後悔するぞ」


 ルミフィスティアは首を振る。


「オレはお前を、もう二度と放してやる気はない。どこかに閉じ込めてしまおうか?」


 脅してやる。

 彼女は堪らず、といった感じで涙を一気に溢れさせた。


(怖いだろ? だからもう、オレに優しくしないでくれ)


 さっきの言葉で、彼女がそれでもオレの事を大切に想ってくれていた事を知った。

 けれど、オレは善い人間じゃない。

 彼女にはもっと心根の優しい奴の方が似合いなのかもしれない。


「すっ、すみません、うっうっうっ」


 嗚咽する彼女。


「うっ嬉しくって」


「は?」


 嬉しがられる要素、どこかにあったか?


「私も……もう放しません。あなたが泣いて許してって言っても、放しませんから!!」


 泣き顔で笑った彼女は、間違いなく世界で一番美しかった。





 そして。オレに訪れる試練。

 ベッドに仰向けに横たわる彼女。さっきと体勢が逆転している二人。


「どうぞ。汚してボロ雑巾のように心もズタズタに……」


「わーっ!! 分かったから、もう言うな」


 恥ずかしさに頭を抱えて狼狽えるオレ。


「……そんな事、オレにできる訳ないだろ……」


「何故ですか?」


「……言わせるのか」


 ハーと長い溜息をついてしまう。


 うん。オレが悪い。恥ずかしくて本人に一度も言った事がなかった、たった二文字の言葉がこうも喉に張り付いて重いものだったとは。緊張する。


 最小限の小さな声で済むように、彼女の耳元に顔を近付け、伝えた。



「好きだ」



読んで頂きありがとうございます。

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――――――――――――――――――――

61.闇夜の星⑤

こんにちは。樹みのりです。この話で三章「新世界に月は歌う③ 闇夜の星」は最終話です。お付き合い頂きありがとうございました! 続きが書けたらまた投稿すると思うので、そのまま連載中にしておきます。

よろしくお願いします。


(前書きを再掲載しました。2022.2.12)

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