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新世界に月は歌う ※現在改稿中です。  作者: 猫都299
新世界に月は歌う③ 闇夜の星
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闇夜の星④


「ルミフィスティア、お前の家族を殺したのはオレだ」


「!?」


「東には邪魔な存在だったんだ」


「何で私に……何で付き合ってくれたのですか? 同情? 贖罪のため?」


「憎い西の姫だからな。付き合って汚してボロ雑巾のように心もズタズタにしてから捨ててやろうと思ってただけさ」


「…………!!!」


 ニヤリと笑って残酷な台詞せりふを吐くオレに、口元に両手を当てた彼女は言葉もなく目を見開く。


 泣いている彼女に手を差し伸べたいのを必死に堪え


「チャンスをやろう、ルミフィスティア。明日の夜、オレの家の離れ……オレたちの部屋の周囲の人払いをしておく。一度だけ……復讐の機会をやろう」


 オレは……復讐の為に彼女が戻って来てくれる事に最後の……全てを賭けた。







 窓から入る外灯の光で、電気を消した暗い部屋はぼんやり明るい。


 ベッドで仰向けになって天井を見つめ、考えている。彼女は来るだろうか。




「……来たか」




 ガタ。


 戸が開いて彼女が現れた。胸に両手でナイフを握り締めている。


「来なよ。そんな遠くにいたら、オレを殺せないだろ? オレは動かないから安心して。但し、一発で確実に殺してくれ。チャンスはその一回きりだ。それを失敗したら……分かってるよな?」


 もちろん、その時はオレはルミフィスティアを一生離さない。彼女が嫌がっても泣き叫んでも、閉じ込めてでもオレの側に置いておく。……オレだけのものにする。


 彼女は震える足でベッドの足元まで来て、膝立ちでオレを跨いだ。胸に持っていたナイフをオレに向ける。


(それでいい……)


 彼女は来てくれた。オレを殺しに。

 彼女の手に掛かって死ぬのなら、悪くない。


 目を閉じた。




「ジーラ様……」


 呼ばれて目を開けると、ルミフィスティアはナイフの刃を自らの喉元に当て、こちらを見つめていた。


「お願いがあります」


 迷いのない強い瞳で見下ろされた。


 一瞬、彼女のその美しさに言葉も忘れ見入ってしまった。

 けれど、彼女の顎の下に当てられているナイフに内心相当焦っていた。


「オイオイ。その命と引き換えに取り引きか? オレが大人しく殺されないとでも考えたのか?」


 底冷えするような視線を向け尋ねる。


「とは言え同じ至宝同士だった縁もある。特別に聞いてやるよ。何が望みだ?」


 きっと、私にもう二度と関わらないでとか、そういうのかもしれない……。

 彼女は優しいから、オレを殺すのを躊躇ってくれたのだろう。

 絶望に薄く笑いかけた時……。




「私を汚して下さい」






 …………。




「は?」


 目を丸くして聞き返す。

 意味が……呑み込めなかった。


 まったく予想していなかった「お願い」に耳を疑ったが……。


「私を汚して……ボロ雑巾のように心をズタズタにしてあなたのあとを刻み付けて下さい」


「!?」


 彼女は目に溜まった涙をこぼれさせながら、決死の様相で言い切った。



読んで頂きありがとうございます。

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