闇夜の星②
結芽に再会した日、人間と機械人形との間に子供ができるのか疑問を持った結芽にジーラ様は「今、研究中」と意味ありげに笑い、何か誤解を招きそうなので否定したけど……。
ジーラ様といい雰囲気にはなるものの、その……触れられた事は一度もない。
キスも最初の『エナジーチャージ』後、一度もありはしないし手さえ……繋いだ事はない。
結芽の結婚式の後から彼の家の離れに住まわせてもらっているが、同じベッドで寝ていても何も起こらなかった。
私、大切にされているのかな? と思った事もあったが……やがてそれは、私……嫌われてるのかな? 彼の好みじゃなかったのかな? 付き合ってみたら思ってたのと違った……みたいな? という思考に変わっていった。
一度真意を確かめようと詰め寄ってみた事もあったが、明らかに視線を逸らされ目も合わせてくれなくなった。
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内面とは別の外面の仮面を被った者がここに一人、苦しんでいた。
彼は未だ、仮面を脱げずにいた。
「タイミングを逃したっ!」
ルミフィスティアが離れに備えられていた風呂に入っている間、頭を抱えて天井に焦燥を言葉に変え吐き出した。
打ち明けられるか! こんな事……。がっかりされるに決まっている……。
アークには散々結芽ごとルミフィスティアはもらう的に煽ったりしていたけど……。生まれてこの方……前の人生も含め、女性と付き合ったりとか……経験がない。つまり……どうしていいのか分からなくなったり、照れや恥ずかしさで先に進む勇気も今はない。
そう。オレは虚勢を張っていたのだ。恋愛事に耐性がないのだ(外面は余裕ぶっこいてるけど)。
本当はルミフィスティアの手を握ろうとする事でさえ、崖から下の見えない滝つぼにダイブするくらい必死なのを何とか隠していた。
(散々アークをヘタレ呼ばわりしてたけど、オレの方がよっぽどヘタレじゃん)
笑えてくる。
猛アタックしてきていた美紡子には「こんな僕を好きでいてくれるなんてありがたいけど……でも、この人じゃないんだよなぁ」とずっとなし寄りのなしで、毎回断るのも申し訳ないので避けたりしていた。
夢に出て来るルミフィスティアに懸想していた。彼女の優しさや手の温もりを思い返す度に胸が苦しくなる。
その彼女に告白された時、心の中では舞い踊る程の歓喜で全身痺れたように動けなくなった。
「待つ」と言ったのは、ルミフィスティアの為だけじゃない。こちらとしても好都合だった。…………一旦オレの心を落ち着け、準備する為の時間がいる。
彼女といると変に緊張してしまってろくに喋れなくなるし目も合わせられなくなるし、いつだったか彼女に詰め寄られた時
(オイオイオイ……近い…………っ!!!)
と思わず顔が赤らむのを隠す為、あからさまに横を向いてしまった。
こんな余裕のないオレと知られれば、きっとすぐに愛想尽かされてしまうだろう。
それに、オレには不安があった。
ルミフィスティアの家族……西の王と王妃や許婚……彼らを殺したのは自分だと、死んでも言えそうにない。嫌われ恨まれ捨てられるだろう……。運が良ければ復讐の為に戻って来てくれるかもしれないけど。
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