私の傍にいる人
結婚式は無事(?)終わり、家に戻って来た。因みに一高はそのままの足でそそくさと実家へ帰って行った。
「疲れたー」
弟がどかっとソファに腰を下ろした。
「一時はどうなる事かとヒヤヒヤしたけど」
私とアークに視線を向け
「二人共、お幸せにね」
とニヤニヤした笑いを浮かべた。
「?」
部屋に戻ると戸をノックする音。
「結芽、私です。ちょっと話があります」
アークが私の部屋を訪ねるなんて珍しい。何事だろうと思い「どうぞ」と部屋の畳に椅子から座布団を持ってきて、彼を座らせた。
「すみませんでした」
土下座。アークは畳に顔を突っ伏したまま続ける。
「あなたのこれからの人生を私が奪ってしまって……。あなたが一高の事を好きなのは知っていますが、どうしても……私を好きになってほしかった。他の何を捨ててでも、あなただけは……あなたの手は離したくありません」
「???!?」
とんでもない事を口走る彼に、頭の処理が追いつかない。変な事言ってたぞ……。
「私が……一高の事を好き!?」
どうしてそういう思考になったのか。もしかして二年間もずっとそう勘違いしていたのだろうか、この人は……。
「あなたって、意外なところで鈍感なのね……」
少し笑ってしまった。
私も人の事言えないか。散々迷って、やっと辿り着いた答え。
思いついて言ってみた。
「ねぇ、目、閉じて」
アークは瞬きをして私の顔を見た。その真意を探ろうとするように。
結婚式では彼におでこにキスされた。人前だし、ちょっと恥ずかしく思ったけど。
今は、ここには二人きり。
私の気持ちを伝えるように。
瞼を閉じたアークに、ゆっくりと唇を近付けた。
★~★~★~★~★~★~★~★~★~★
姉の結婚式で中断していたゲームを進めようと、テレビを点け準備する。
やー、オレ今日いい仕事したわー。
姉の幸せそうな顔を思い出し、自然と笑顔になる。気苦労の多そうだったアークも報われてホッとした。
「もう、末永く幸せでいてほしいよ。いつだったか、二人ギスギスしてた時はこっちがハラハラしてたもんな!」
「……そうだな」
父がしんみりした顔で同意した。
「何だよ! 父さん。姉ちゃん帰って来たんだから、そんな寂しそうな顔すんなって! 当分この家に住むだろうし……喜ぼうぜ! アークも一高さんというお邪魔虫が帰ったから、今頃二階でいちゃついてるんじゃね?」
つい言ってしまって、あっと思った。
結婚式で飲み過ぎて既に赤ら顔だった父は「うううっ」と嬉しさ半分寂しさいっぱいといった顔をして日本酒の瓶に手を掛けた。「飲み過ぎよ」と母に手をはたかれていたが。
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