恋心の行方③
一高は白のタキシード姿で、アークは普通の……礼服。
……そっか。ルミフィスティアは私の言った通り、一高を選んだ。
ちょっとだけ肩を落としたけど、外には出さないで登場した二人を迎えた。
弟と場所を交代した一高が、二人で永遠の愛を誓い合う為の一段高い場所から手を差し出す。
私は躊躇いながらも、彼の手を取ろうとした。
(これは罰。今更、アークと結婚したいなんて……言えない)
自分の気持ちに嘘をついていたツケが回ってきたんだ。
手を重ねる直前
『また自分の気持ちに嘘をつくの?』
声が聞こえた。
ルミフィスティアじゃない、私の心の声。
私は――……。
一高に伸ばしていた手を止めた。
振り返ってアークに抱きつくと戸惑ったような一瞬の間の後、きつく抱きしめ返された。
「結芽、あなたの事を愛しています。神に……いいえ。悪魔でも何に誓っても構わない。必ず幸せにします」
跪いたアークが手を差し出した。瞳と瞳が合って、彼は今にも泣きそうな顔だった。
私も涙が溢れて頬を伝ったのが分かった。幾つも幾つも。
「はい」
アークの手を取った。
「私もあなたを幸せにします」
私は、私の意志で彼を選んだのだ。
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『もうっ! くっつくの遅いよっ!』
私の中のルミフィスティアが怒る真似をした。
『ごめんね……ルミフィスティア……色々と……』
『謝らないで……でも、そうね。もう突然いなくならないって誓うなら許してもいいわよ?』
『そんな事でいいの?』
私はちょっと笑った。
『今までお世話になったわ。私……新しい体に移される事になったの……』
突然の衝撃発言に息を呑んだ。戸惑っていると……、
『心配しないで。一高様の傍だから大丈夫よ』
と微笑まれた。
『私、ちゃんとあなたとの約束守ったわ。ジーラ様に告白したの。ジーラ様は結芽……あなたの事が好きなのではと思ってたから、ずっと言えなかったけど……。新しい体に移るまで待っててくれるって約束してくれたの』
ふふふっと笑い、その後……私を抱きしめた。
私も抱きしめ返した。
『ありがとう……』
『じゃあね』
それからルミフィスティアの気配は消え、二度と私の中に彼女が現れる事はなかった。
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