恋心の行方②
式場は水を打ったようにシーンと静まった。
ハッ! 思わず出てきてしまった……!!!
でも、ひとまずよかったと心を落ち着けた。弟と結婚なんて、例え未来で法律が許す事があったとしても、絶っっっ対に嫌だ。断じて認められませんとも。
「姉貴……」
弟が呆然とこちらを見る。
「その粗雑な口の悪さとツッコミ…………間違いなく、姉貴だ……」
参列席からのパチパチと……やがて盛大になった拍手で会場は溢れた。
「なっ!? 何!?」
参列席の前の方にいた父と母が涙目で教えてくれる。
「ルミちゃんに全部聞いたのよ。結芽ちゃんの様子が明らかに別人で、変だと思ってたの。信じられるまで時間がかかったけど、確かにそうだなって納得したの。ルミちゃんも優しくていい子だけど、私たちの娘はあなたなのよ、結芽。勝手にいなくならないで」
母にぎゅうっと抱きしめられた。お母さんってこんなに……力が強かったんだって、初めて知った。
父がハンカチで鼻水を拭っている。言葉にならない様子で目を潤ませていた。
「分かった……ごめんね、お母さん、お父さん、皆……。…………でも何で弟と結婚?」
「フッ、騙されてやんの。これは姉貴を誘き寄せる罠だよ」
「な……っ!?」
「姉貴と結婚なんてこっちだって死んでもゴメンだけど、一高さんとルミフィスティアさんが結婚すると思ってる姉貴には突っ込まずにはいられない展開だろ?」
「ぐっ……! まぁ……ね……」
餌に食らいついた魚状態だ。まんまと釣り上げられてしまった。
「大体、姉弟で結婚できる筈ないじゃん」
やっぱり抜けてんなーと笑われた。
「だってルミフィスティアと私は別人だから。もしかして彼女が間違ってアンタを選んじゃったのかと思って焦ったよ」
「失礼だなっ」
弟の口調は怒ってたけど、顔は笑ってた。
「あれ? そういえばアンタ、背伸びた?」
ちょっと前まで同じくらいだったのが、私が若干斜め上を向かないと視線が合わない。
「当たり前だろ? 姉貴がいない間に、もう二年も経ったんだから」
「何ですと!?」
え!? え!? ちょっと待って。じゃあ、アークは……? 一高とルミフィスティアの関係は……?
その時後方の大きな扉が開かれ、二人の男性が入って来た。参列席から歓声が上がる。
「一高………………アーク」
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