5 世界の終わりの守護者<1>(※視点【一高】)
※視点【一高】
世界の終わりは、突然やって来た。
ニュースで流れた光景を呆然と思い返す。人々も車も駅も大混乱だった。
慌しい中、僕のいるカフェも例外ではなく店員のお姉さんは右往左往……客は大半逃げ出してそこいらのテーブルには食べかけのオムライスやカレーだとかが置いてきぼりだ。
そんな中で僕は――……スーツに手提げカバンという出立ちの三十代半ばのサラリーマンで一応出勤前だったんだけど、もうなんだか諦めた気分になっていてスマホでニュースを見ていた。
ニュースキャスターの背後ではスタッフらしき人影がウロウロと画面に出たり入ったりしている。
「落ち着いていらっしゃいますが、大丈夫ですか?」
店員の一人に気遣われた。話し掛けてきたのは僕より十歳以上若く見える女性だった。
こんな事態になって自身もパニックになっているだろうに優しい子だ。
「大丈夫。もう少ししたら出て行くから。君は早く逃げた方がいい」
微笑んで口にした。女性店員はペコリと頭を下げた後、足早に店の奥へ姿を消した。溜め息を吐いてテーブルに頬杖をついた。顔には少なからず疲れが滲んでいたかもしれない。何日か前に一緒に飲んでいた友人に隈があると指摘された事を思い出していた。
落ち着いていると言われたがそうではなく、諦めからくる脱力に似ている。
『遂に来たか』
心の内に思う。
何故なのかはっきりと分からないけれど、幼少の頃に池で死にかけた時からずっと……この世界に馴染めていないような不思議な感覚を持つようになった。
それはふとした折り現れ、寂しさだったり憂いだったり憧憬めいた感傷が浮かんだりする。
知らない、会ったこともない女神のように神々しい女性が度々夢に出て来て……ともすると泣きながら目が覚める。
自分がこの世界で生きている未来が想像できない。実感もないのだ。
だから何となくこんな日が来るんじゃないかと薄々想像していた。
「やっぱり」という感想を持つ。
駅地下のカフェはガラス張りになっていて外の通路を行き交う人々が早足に通り過ぎるのを眺めていた。
「どうなってるんだ」とか「西口はダメだ」といった怒号の中、一人の少女がカフェの前を横切った。
目を逸らせない。勢いよく席を立った。押し寄せる感情の波に呑まれる前に走り出した。熱のような焦燥に駆られて呟く。
「嘘だろ……彼女だ」
追記2024.11.19
タイトル、後書きを修正しました。「※視点【一高】※」「々」「と」「に」「……」「熱のような焦燥に駆られて呟く。」を追加、「うまく」を削除、「、」を「……」、「言ってみたが」を「口にした」、「〝」を「『」「〟」を「』」、「が」を「けれど」、「だったり」を「めいた感傷が浮かんだり」、「きたり」を「来て」、「、」を「……」、「たこと」を「る事」、「って」を「と」、「とか」を「といった」、「僕は目が離せず、席を勢いよく立ち上がると追って走り出した」を「目を逸らせない。勢いよく席を立った。押し寄せる感情の波に呑まれる前に走り出した」に修正しました。
「い」を追加、「事もあった」を削除、「かは」を「なのか」、「そう思っただけだった」を「心の内に思う」「見て」を「眺めて」に修正しました。タイトルを変更しました。
タイトルを変更しました。「※」を削除しました。
タイトルを変更しました。「(かずたか)」を追加、「君も自分の身の安全を第一に考えてね」を「。君は早く逃げた方がいい」、「顔には少なからず疲れが滲み出ていたかもしれない。何日か前に一緒に飲んでいた友人に隈があると指摘され、その事を思い出した」を「女性店員はペコリと頭を下げた後、足早に店の奥へ姿を消した。溜め息を吐いてテーブルに頬杖をついた。顔には少なからず疲れが滲んでいたかもしれない。何日か前に一緒に飲んでいた友人に隈があると指摘された事を思い出していた」、「様みたい」を「のよう」、「なのだ」を「という感想を持つ」、「さん」を「らしき人影」、「ニュースも」を「ニュースで流れた光景を呆然と思い返す。」に修正、「ニュースの現場でさえはっきりした状況が掴めていないようだった」を削除しました。「店員さんに気遣われた」を「店員の一人に気遣われた。話し掛けてきたのは僕より十歳以上若く見える女性だった」に修正しました。