渦中の人②
「何だ……、組織と関係あるって言えなかったのは、タイミングがだな……」
一高は口の中でゴニョゴニョ呟いた。
さっき歩道橋の上で戦っていた時は底知れぬ強さを見せつけどこまでも余裕しゃくしゃくだったのに、急に歯切れが悪くなり弱気さをちらつかせている。
話を聞いてみると彼は実家が組織と関係ある事を知らなかったと言う。大手ロボット等製造関係の会社の会長が祖父なのは認識していたが、組織の存在さえ知らされていなかった。もちろん『革命』の事も一切。
ルミフィスティアの魂に再会した時、一高の魂に埋もれていたジーラの意識が目覚め、実家と組織の関係に気付き出した。そして父親を問い詰めた。池で溺れた時アークによってジーラと魂を一つにされた為自分であって自分じゃない気がしていたのだが、家族や親戚は溺れたショックで混乱していると思い更なる負担にならないよう今まで本当の事を告げなかったのだという話だった。
そして……組織支部は地震によって消滅したのではなく、証拠隠滅の為破壊されたという真実。上からの指令で好き勝手にアークに命令し暴れていた由治の事後処理は大変だったらしい。世間から隠す為、由治は屋敷に閉じ込められていた。組織の息の掛かった者が潜む政界や財界等にも手を回して何とか事件を揉み消し、表向きは被害者は地震によって死んだ事になっている。
(因みに八蘇美紡子は一高の父の弟の娘……つまり、いとこらしい)
「…………っ」
あまりの情報の重さに言葉を失っていると、ここぞとばかりに八蘇美紡子が一高に尋ねる。くっつこうとするミズを手でグイグイ押し離しながら。
「さっき名前の出てきたルミフィスティアって……一高様の想い人なのですか?! しかもお名前から察するに、日本人じゃないのですかっ!?」
「あれ? 何日か前の朝、家の前でじゃれあってただろ?」
「えっ? 家の前……」
彼女は口元に手を当て、難しい顔をし……唐突に視線を上げる。
「あの……小娘ですの?」
みるみる赤くなっていく頬を両手で包み、彼の想い人は自分じゃないとかぬかしておいてよくも……とぶつぶつ呟いて彼女は
「あんのクソガキ……許しませんわ!!!」
地を這うような空恐ろしい声を出した。鬼の形相で、怒りに燃えた眼は据わっている。
ミズはそんな彼女を微笑ましく見守っていた。
「怒っている美紡子も新鮮だね」
★~★~★~★~★~★~★~★~★~★
「うん……。美紡子はちゃんといた……生きてた………………会えた……っ」
意識を十万年後の世界に戻した俺は、あまりの嬉しさに泣けてくる。
「……って、あれ!?」
改造されていた寝台から起き上がると誰も周囲におらず、急ぎ外に出る。
「ミズさん!」
山の方から村娘……エイジャが駆け下りて来た。膝に手をやり、息を切らしている。
「やっぱり……女神様は戻っていませんか?」
「女神……あの女の事か」
金髪の、少し前まで殺そうとしていた人物を思い返す。
「いなくなっちゃったんです! 今、神様が一人で捜しています」
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