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違和感の正体


 私と一高、二人で夕食の材料を買い出しに行った帰り道。


「お前、あいつ……結芽の事、諦めたんだ? ま、強力なライバルが減ってオレは楽だけど……何か拍子抜けだなぁ。お前がそんな腑抜けなら遠慮なくオレがもらうけど。ルミを、結芽ごと……」


 ざわっとした心を抑え、歩道橋の真ん中で足を止めた。

 二週間前、敵として一時は対峙した駅前の歩道橋だった。僅か二週間で何事もなかったかのように辺りは元のような街並みを取り戻しつつあった。車は行き交い通行人もたくさん歩いている。

 急に足を止めた私たちを訝しみながら、後ろを歩いていた通行人が私たちの脇を足早に避けて去った。


「ジーラ。私は心は人間でも体は違います。寿命も全然違いますし、大切な彼女の時間を奪う訳にはいきません」


 伏せていた眼を上げ、彼の眼を見る。


「あなたなら……きっと彼女を守って、幸せにしてくれるでしょう」


 いきなり……こぶしが私の頬を掠め、赤い髪がチッと音を立て数本切れ飛んだ。

 瞬間に避けて躱していなかったら怪我どころでは済まない攻撃に、私は一高をきつく睨んだ。


「ジーラ……」


 その時。


「見つけた、ぞっ、とぉ」


 上から降って来た声を見るより早く。


 ドンッ!!


 歩道橋を揺るがせ、一高と向き合う私の後ろに着地した人物。

 その腕の中には泡を吹いてぐったりしている見たことのある少年を抱えている。


「アーク、未来のオマエから聞いてるだろ? 早く美紡子に会わせろよ」


 ミズC‐03は未来で見た時より生き生きとした表情でそう言って立ち上がった。


 彼の声に我に返り、口の端の泡を手の甲で拭った不健康そうな少年……二週間前、警察に引き渡した筈の自分の開発者の一人、七辻ななつじ由治ゆうじがこっちを見てビクッとした。明らかに怯えたように震え出し……。


 さっと靄が晴れるように理解した。


「ずっと疑問に思っていました。結芽とルミフィスティアのように分かれた思考ではなく統一されたものとなった魂……ジーラと一高の接点……そして」


 池で子供だった一高を助けた時、スッと吸い寄せられるようにジーラの波調が一高の波調に重なる現象を見た。


「あなたを助けた池は……組織の隠れ家にあった事」


「あーバレちゃったかぁ」


 ジーラ……一高は、そんなに重くない秘密であるかのようにあっけらかんと笑った。


「もう待たねぇからな」


 アークとミズが話し終わるのをわざわざ待ったのだと言いたげに、彼は時計を見た。


「早くしないと、アイツが向こうから帰って来るだろ?」


 アイツとはルミフィスティアの事か。まさか結芽の事では……。

 一高は私の顔色を読んでニヤ、と不敵に笑う。


「もちろん二人共だよ」


 思わず頭にカッと血が昇る。

 彼はやれやれと頭を掻くと、左手に持っていた買い物袋をその場にドサッと置いた。


「次は殺すつもりで行く」


 彼の口が、細い三日月の形に笑みを刻んだ。



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