狩る者
約三万年前。この地に栄えていた国があった。
その国が東にある大国に侵攻される直前、不吉な予兆を世界中の多くの者が目にした。
今まで見た事などある筈もない伝説上のものとされていた『太陽』が、うっすらと昼の空に浮かび上がったのだ。
人々に忘れ去られたこの地の別名……『約束の地』……。
五万年前の人類が未来の人々の為に残した希望の地。
五万年前の栄智を結集して造られた次代の『自動還浄化システム』の要がこの地だった。
五万年前では既に数万年後には『自動還浄化システム』を維持する為のエネルギーが枯渇する事を予測していた。実際それから二万年後には再び高温期が到来し約半数の人類は死滅している。東の王国も疲弊し当然、戦を続ける余力もなくなった。世界中の人々が人類の滅亡を予感した。
だが、かつての文明が残したこの地のシステムにより人類滅亡を免れる事となる。
『自動還浄化システム』等維持の為の動力源は世界中の地下を廻っている。そして必要とされるエネルギーを生み出す源、特殊な酸を空気中に存在する物質に触れさせる事によってあらゆるシステムの操作や管理を可能にしていた。
この地に存在する湖はその酸の新しい容器の役割を果たす。数万年かけて地下に溜まった酸を注ぎ高温期を脱するシステムを維持している。
雨や風は酸の成分に影響を及ぼすとされ天候操作が行われている。
今から三万年前、この湖に酸が注がれ元からあった物質と反応し毒素が大量に発生した。動植物も死滅し高温期も重なり、一帯は死地と化した。その時発生した毒霧は空気より重い性質があった為、湖を囲う山々の一ヶ所だけ山がなく湖の酸が流れ落ちる滝から下方の谷へと流れた。谷は永い間毒霧に覆われていた。
一、二万年後には毒霧も収まり草木も生えるようになったが、しばらく虫も寄り付かない状態だった。これが『死の森』の由来である。
かつての西の国が在った場所。
山の頂から廃墟の城を見下ろす。
村の食堂で冒険者と名乗った人物は妖しげに光る眼を細め、舌なめずりをした。
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