好敵手
何か最近、アークが余所余所しい。十万年後の未来でもそう感じた。
この前の満月の日の事で気恥ずかしいのかなぁと思ったが何だか素っ気ないようにも思う。
何か私、嫌われるような事したかな……? いっぱい思い当たるんだけど。質問攻め、会話の途中で遮って話す、好き過ぎて見つめてしまってアークがこちらを見ると慌てて視線を逸らす(挙動不審)……。
アークも私の事好きなのかなって思ったのは私の勘違いだったのかも……。そしたら私は自意識過剰な彼に好意を寄せてる妄想女って思われてる事もあるかもしれない訳で。
一時期お花畑で緩々だった顔は、ここ数日曇ってため息が多くなった。
考えるのにクタクタになって、意識をルミフィスティアに替わってもらう事が多くなった。
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「一高様……その女は誰ですの?」
早朝……細い道路にある電柱の陰から赤いマニキュアを塗った爪をギリギリ噛みつつ、道の反対側にある民家から出て来た少女を睨みつけた。
先週、一高様が家を出て会社の近くの知り合いの家に居候しているという話を聞きつけた私は、まさか女性の家じゃないでしょうね……いやいや、生まれて三十五年……素材も育ちも良いのに何故か浮いた話が一つも出ていなかった一高様に限ってそのような事は……と思いつつも女の勘が妙にざわついて今朝、調査の為に四時からここでその家を見張っていた。
そして朝七時。紺のセーラー服を着た少女が学校に行く為だろう玄関の戸を開けて出て来た。
「な……!? 高校生??!」
家の者に頼み、事前に調査をさせていた内容で四人家族の姉の存在が怪しいと睨んでいた。まさか……高校生だったなんて。
「一高様……いくら何でも、それは犯罪ですわ」
口元を押さえ呟く。
一高様は三十五歳。彼女は多く見積もっても十八歳にも見えない。この組み合わせはありえない……周囲が反対するだろうと少しほっとしたのだが……しかし。彼女の瑞々しい透明感のある肌を見てしまい、若さでは勝つ事ができないと思い知らされてしまう。
私ももう二十八歳。そろそろ結婚を本気で考えなければいけない歳だ。
今まで良さそうな話は幾つもあった。でも、それらを全て断ったのは一人の……とても大好きな人がいるからだ。そう。一高様だ。
そうこうしているうちに例の彼女が家の門扉を出てカシャンと閉めた。
行ってしまう! と焦った私は気付いたら振り返った彼女の前に仁王立ちで腕を組み、まるで汚い物でも見るかのような目付きで彼女に言い放った。
「一高様は私のよ! 急にポッと出のアンタなんかに盗られてたまるもんですか!! この泥棒ネコ!!!」
そしてフンッとばかりに鼻息荒く、カチューシャで留めた自慢の長い黒髪を肩の後ろへ払った。
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