狭間の迷宮 壊れた羅針盤
居間のソファーに腰を下ろして、一人ポーッと空を見つめている。
いや、本当に見ていたのはあの日の事。十万年後の世界でアークと想いが通じて抱きしめられた満月の夜を思い返していた。
現代に戻ってからもアークの事が頭から離れない。もう何度目か。また思い返してしまい……。
「キャー!」
ソファーに置いてあるクッションをバフンバフン叩いた。
弟がテレビでゲームしながら、またやってるよって目で見てきたけど気にしない。
廊下を洗濯物の籠を抱えた一高が通りかかりジトーーーっとした視線を送られたけど、やっぱり気にしない。
魂の半分として私の身体の中に存在するお姫様、ルミフィスティアは私の中から一部始終を見ていたので知っている。
『よかったわね』
『ありがとう』
祝福され思わず微笑んで……はた、と気づく。
あれっ? でもルミフィスティアはジーラ(一高)の事が好きだよね? 絶対にそうだと思う。
それで体を共有している私がもしアークと結ばれたら……。
んん? ルミフィスティアの恋は叶わないって事なんじゃ……。
私は先程まで舞い上がっていた気持ちも引っ込み、頭を抱えて悩み出した。
「……っ!??」
でもルミフィスティアの恋を応援したら私がアークと結ばれない訳で。
「??!」
『絶体絶命恋心』とかいうタイトルの曲がテレビから流れ出した。弟がゲームを止めてチャンネルを歌番組に替えたからだ。
「崖っぷちの愛は背徳〜」
「??!??」
歌手が歌っている変な歌詞と思考が混ざって余計に混乱した。
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