見落とされた影
あの日。
駅の歩道橋で捕まり、アークと一高って奴の手でボクは警察に引き渡された。
アークを開発した生みの親の一人であるボクに対してヒドイ仕打ちだよ、ホント。
ボクは体力がない方だから大人しく捕まってやったけど。
アークがボクの命令に背くなんて……とショックを受けてたっけな。
問題は……(いや、ボクだけ何で警察に引き渡されてんのってのも問題ではあるが)……その後だ。
一旦パトカーに乗せられたが、おかしい。
町内をぐるりと回ってある屋敷の前に停車した。そしてその屋敷の奥にある鍵付きの部屋に閉じ込められた。
その部屋は結構広く、防音なようで叫んでみても外からの反応はない。
研究所と似ている造りで組織の関係者の屋敷だと気づいた。
床に大きな布が広げられ何かに掛けられている。何を隠しているんだろう? とめくると……。
「ひっ!」
布の下に、たくさんの死体が並んでいた。
……じゃなくて。それは見間違いで死体だと勘違いした物は、まだ起動前の機械人形だった。
「なんだ。驚かすんじゃねーよ。バーカ、バーカ!」
機械人形に八つ当たりする。無意識に、小刻みに震え出した肩を押さえる。
何とか不安な気持を宥めようと奥歯を噛み締めた。
あれからずっとここに閉じ込められて、何日経った?
食事は三度、運ばれて来る。風呂とトイレは目隠し・耳栓で手を引き連れて行かれる。
組織は失敗したボクを果たして生かしておくだろうか? 怖い。
そして……今日。食事を持って来た奴……。
アイツ……アイツは……っ!!
恐怖に縮めた背をブルブル震わせて、揺れる己の肩を必死に抱きしめた。
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