訪問者③
……何時間も登った気がする。
それは突然。
どんよりした空気が晴れて振り向くと、木の葉の間から絶景が見えた。
「わぁ」
……って、あれ?
気づいてしまった。
私……元いた所に登ってるって思ってたけど、反対側の……「神域」へと続く山へ登ってる……?! ような……気も……。
遠く、小さく村らしきものが見える。私の村だ。
「ここまで登ったのに?!」
血を吐きそうな思いで心の叫びを言い捨てた。
既にさっき落ちた崖の上より高い位置まで登ってしまったらしい。と、いう事は。もう半分も登れば……。
ごくりと喉を鳴らす。
私は選択を迫られた。引き返すか、進んでこの先に何があるのかこの目で確かめるか。
私は――……。
そして私は「神域」を目にする事になる。
「神域」……広がる「禁域」の死の森の中央、山の頂に在るとされる神様の住む神聖な聖域。
子供の頃からどんな所か想像したりしていたが、そのどの想像よりも心を動かされた。
高い山の頂はぐるり、それよりやや低い位置にある「神域」を囲んでいる。私が見下ろしている所から右手奥の方にもう一つ、この「禁域」の山に比べたら小さな山が存在し錆びた色の……廃城があった。
その山の麓には「神域」の大半を占める湖……。碧に澄んでいて綺麗な色……。
廃城の側には花があちらこちらに咲いていて、遠目から見てもうっとりとため息の出そうな景色だ。
「ここは天国? 私は死んだの?」
一度崖から落ちたのを思い出して。
「うん。これは多分、死んでる」
独り頷く。
自分が今生きてるのを疑うくらい。
晴れ渡る空の下、その景色は心に焼き付いた。
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