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訪問者②


 肩下までの短め。明るい夕焼けにも似た色の髪を両サイドの高い位置で縛って三つ編みにする。

 裾の短い動き易い狩人の仕事着にしている服に着替え、弓矢を準備する。

 家の戸を開けると空はどんよりと雨が降りそうな気配を漂わせている。


「んー、まぁ大丈夫か。そんなに遠くに行かないし」


 軽く考えて今日の狩場へ向かった。




「大物だわ! 今日は絶対にご馳走よ!」


 狩場にしている森を、大きな鹿を追って走る。

 急に、鹿の動きが止まった。

 狙って……矢を放つ!


「あっ!」


 逃げられた! と思って木々の間を走る。鹿が逃げて行った方へ――。


「えっ?」


 足元の山道がなくなった。その瞬間、後方を見ると鹿が絶壁の足場みたいな岩の上に留まってこっちを見ている。


「ちょ、まっ」


 私は崖に生えている木に強かにぶつかりながら落下して行った。

 そこから記憶が途切れてしまった。




「……っ、痛……い」


 水音に目を覚ますと……細い川の側の、土と枯れ草の溜まった場所に寝ていた事を知る。


「私っ……落ちて……」


 全身が痛い。どこかに怪我をしていないか、体を確かめる。全体的に打身はあるが骨が折れるとか、そんな大きな怪我はないようなのでひとまず安心する。


「あれ? これ……」


 左腕に白い布が巻かれていた。少しずらして見ると腕に怪我をしていて、そこから血が出ていた。誰か……通りかかった人が手当てしてくれたのかな。

 そこまで考えて。ここら辺の森に谷と言えば一ヶ所しかない事を思い出す。


「はは……は……」


 引きつった顔で笑うが、あんまりな事態に青ざめてゆく。

 どうやら獲物を追うのに夢中で、うっかり谷から落ちてしまったらしい。そして今いるのが絶対に入ってはならないとされる「禁域」だ。

 薄暗い谷底で、水の音だけが響いている。


「……」


 とてつもなく恐ろしくなって。


 がむしゃらに帰ろうと谷を登った。


読んで頂きありがとうございます。

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