鍵の持ち主②
「言葉通りです。前回のこの日、あなたは一旦死にました。一高も。私に殺されて」
「オイオイ」
すかさず『使者様』ことジーラが呆れてツッコむ。
「まぁ私もこの頃は自我が確立されていませんでしたし組織……私の開発者の一人である彼の命令は絶対でしたから」
左手に吊り下げてる白衣の少年に目線を落とす。
さっきまで手足をバタバタさせて逃れようとしていたが、もう諦めたのかぐったりしている(大丈夫かな?)。
「組織は全世界に点在しており今日から続く『革命』によって世界の人口は激減し現文明は衰退します」
ごくり。
私は話の行方に集中した。
「そして約十万年後。ルミフィスティアが結芽の波調により助かり、やがて目を覚ましました。その頃ルミフィスティアの波調は結芽の波調の中で眠っていたようです」
「オレは? 何であの時……オマエと初めて会った時ルミの側で死んだのに、よりにもよってこんなひょろっちい、ダッサイおっさんになってんの?」
自分の事なのにひどい言いようだな……。
「オマエの話じゃこっちの方が過去らしいじゃん。何でお前、過去や未来に行けんの?」
「行けはしません」
ジーラの問いにアークは首を振った。
「ですがその間、私はずっと存在しています。つまり……過去や未来の自分と交信できた、という事です」
ニッコリ笑うアーク。
「はぁ?」
ジーラが理解できんと言わんばかりに片眉を上げる。
「これは約五万年後に確立された技術なのですが、交信だけではなく波調も送れるのです」
「そういう事か。過去のオマエに、オレの魂……波調ってやつを送ったんだな」
アークが頷く。
「じゃあ私も?」
尋ねると彼は再び頷いた。
「ジーラの身体は滅びて一高の肉体しか残ってないのでこちらの時代に留めておく事になりますが、結芽とルミフィスティアは……」
「身体が二体ある」
私の言葉にアークが続ける。
「とりあえず結芽がルミフィスティアの身体で眠った時に元の時代、元の身体に戻したんです。でも当初は今日助ける気はなかったんですよ」
私とジーラから睨まれるアーク。
「……でも……。結芽が私を『管理者』という鎖から解き放ってくれた時の条件がありましたので」
「え?」
私は記憶を辿り――……。
〜〜〜〜あー。あの時か。
未来の満月。
『あなたが人間でも人間じゃなくても、どっちでも構わないよ』
『私を助けてくれるならね』
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