鍵の持ち主
「えっ!? 私っ?!!」
急にルミフィスティアの支配が弱まって表層意識に浮かび上がって来た。
「あれ、ルミ引っ込んだな」
隣のスーツの男性が窮屈そうに自らのネクタイを緩めている。
何かアークが難しい事言ってたような気がする。それで何故か私の話題が出て……私、以前アークに何か言ったっけ?
それにしても……私ったら……意識をルミフィスティアに奪われていたとはいえ、は……初めてのキスを……、この隣の知らないオジサンと……。
口元を押さえ横目でスーツの男性を見たら、端からジト目でこちらも見られており言われた。
「オジサンで悪かったな」
「心を読まれた!?」
「何考えてんのかくらい分かるさ。判り易いな、あんた」
「え!?」
思わず顔に手をやる。プッと笑われた。
(私ってそんなに判りやすいかなぁ?)
彼の無邪気な笑顔は若々しく、二十代……もしかすると十代にも見える。
「あんたもオレみたいに別の奴の魂を入れられたクチかな? ルミフィスティアの……」
「えっと……?」
「オレ……って言っても、その頃は一高なんだけど……小さい頃、池で溺れててさ……もうダメかもしれないって思ったんだけどアイツが現れた」
遠く思い出すように柔らかく眼を細め『使者様』(奥にいるルミフィスティアが教えてくれた)は続ける。
「元の一高の、溺れて死にかけてた魂にアイツが持ってきたこれまた死にかけてたオレ……ジーラの魂をぶち込まれて生き長らえた訳。お互いに。アイツは魂じゃなくて波調って呼んでるらしいな。それがヤツには見えるらしい。……で、一高の中にオレの意識が燻ってはいたけどこうやって思い出せたのはあんたを見つけたからだ」
真剣に見つめられた。
「あんたの中の、ルミに気付いたからだ」
むむぅ。話を聞けば聞く程、私の中でアークが超人となっていく。魂の行く末を決めるなんて神様の領域でしょ!
「そう言えばルミフィスティアはいつから私の中にいたんだろう。私が彼女の中にいなかったっけ?? 最初」
歩道橋の階段を、猫の仔を摘むように少年ごと白衣とトレーナーの首根っこを掴んで下りて来たアーク。
「彼女……ルミフィスティアは永い眠りの途中、波調がとても小さくなった事があり今日死ぬ筈だった結芽の波調と非常に似通っていたので結芽の波調をルミフィスティアに融合させました」
今、聞き捨てならないワードが出てきたぞ!
「死ぬ筈だったって、どういう事?」
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