運命の結び目
「アーク、そいつも殺っちまえ」
白衣の少年の無情な声に赤髪のアークと思われる人物はスッと右手を前に……私へ向けてかざした。
「命令を遂行します」
彼の瞳は虚に陰り、私と話していた時より機械的な冷たい印象がした。
まだ夢を見ているのだろうか。どっちが夢で、どっちが現実なのかさえ分からない。
助けてくれてた人が今、私を殺そうとしてる。
苦しくて、胸を押さえる。あ、ヤバい。これ、過呼吸ってやつかな? 焦ってうまく息、できない……。
「ルミフィスティア!」
え……と思った時、衝撃は横から来た。
荒く突き飛ばされ、倒れた私の上に覆い被さるように盾となった人物。
攻撃を受けた衝撃があった。私を庇った人は苦しげに呻いて青白くなった額には汗が浮かんでいる。
彼はやっとの様子で口を開いた。
「ごめ……」
…………彼を! 知っている……!!!
魂が奥底から叫びを上げたと思った。
(やっと……やっと会えた……)
私じゃない誰かがそう感じていた。
あまりの展開に私は動けず彼の瞳から目が離せなかった。
零れた涙が頬を濡らした。
「護れなくて、ごめんな」
苦しげな表情で少し微笑み、私の頬の涙を拭ってそのままぐったり私の上に倒れ込んだ。
そ……んなっ。やっと……会えたのに……?
「誰だぁ、そいつ。知り合い? よく自分の命犠牲にできるよな。そんなに、死んでまで誰かを庇おうなんて理解できねーよ」
白衣の少年がケタケタ笑っている。
「まぁどうせ庇ったって意味なかったけどな」
私は……いいえ。私の中にいたもう一人の私、ルミフィスティアは怒っていた。
……死なせないーーーーー!
昏い息吹が私の全身を支配していく感覚。私の過去も未来も、今はルミフィスティアのものだ。
「エナジーチャージ」
怒りから低く発した声も聞く者を惹きつけるような気高さが宿る。
ルミフィスティアに支配された私は私の上に倒れている男の頬に手を添え、その唇に自らの唇を重ねた。
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