識者③
「そらぁ、太陽も消えちゃう訳だわぁ」
一人、訳の分からない納得をしてポケーっと空を眺めた。朱い色は段々と暗く灰色がかって、夜の訪れを予感させた。
この人が言っている事が正しければ、私は異世界転生って言うより遥か未来に来てしまったって事なのだろうか? 未来人になって。
途方もなさすぎて驚愕していたが、逆に現実味がなくて落ち着いてきた。
「?」
青年が疑問を持ったように首を傾げてみせた。
「太陽は消えていません。どういう事ですか?」
「えっ、太陽……こんな雲もなく見晴らしもいいのに見つけられなかったし……あの山の裏に出てるってこと……?」
さっき下って来た山を指す。
「いいえ」
青年は首を振った。
「約五万年前、太陽の熱で地上の高温期が続くようになり我々と当時発展し栄えた文明の技術によって太陽と地球の間、地球の大気に過剰な太陽光を遮る微粒子を配し循環・維持する事で地上の温度をある程度コントロールし一定に保つ仕組みの構築に成功し、当時の文明ではこれを日本語で言うところの『自動還浄化システム』と呼びその後も派生した様々な問題を打開するシステムの総称として用いられるように――」
「まーって!」
私は右手で自分の額を押さえて彼の話を遮った。
中学生だった頃の社会担当の先生の早口な授業を聞いているみたいだった。
テストで出るとしたら多分『自動還浄化システム』辺りは確実に出るだろう。
って違う。危うく現実逃避するところだった。
「つまり、何らかの物質によって太陽光をある程度遮断しているから太陽が隠されてるって訳ね」
「大まかに言えば、そうです」
何てこったい! 未来ではそんな事があってたのね……。で、どうにか解決しちゃうなんて五万年前の文明すごい。
「雲も見当たらないけど、雨って今の時代も降ってるの?」
思いついて聞いてみると、
「この地では降らないように設定されていますが、他の地域では降るよう設定されている所もあります」
と返答され、この人は……神様か何かなの? と壮大すぎる説明に気後れしっぱなしで気がつけば辺りはとっぷり暗くなっていた。
満天の星が広い空にキラキラ輝き、あまりの美しさに言葉を失くして魅入ってしまった。
「綺麗ね……」
青年は黙っている。
「星は太陽と違って、ちゃんと見えるのね?」
と聞くと、
「約五万年前、過剰な太陽光の遮断に伴い夜間の星も見えなくなったと苦情が多く寄せられ大幅なシステム改変が行われました。夜間は微粒子を維持するエネルギー波を弱める事で星が見えるよう配慮されています」
「そ……そう……」
もう圧倒されるばかりだった。
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