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見出だす者


 部屋に入ると、気怠そうにベッドサイドに腰掛けるジーラと目が合った。

 私は目を逸らして「ちょっと着替えてくる!」と部屋の奥へ進み、窓の近くにある風呂とトイレの戸を開けた。


「?」


 下着を着替えながら思う。ジーラの目が私に何か問いたそうな感じに見えたのだ。思いっきり逸らしてしまったけど。


 小部屋を出て手に持っていた紙袋を自分の寝るベッドの枕元に置き、その横に畳んだチュニックを並べた。


「私、もう寝るね! 明日早いんだよね? お先に……」


 ベッドと寝具の間に身を滑り込ませる。


「お、おやすみなさ〜い」


 ? 尚もジーラに注がれている視線が痛い。何故!? 左頬がチクチクする錯覚を覚える。

 戸惑っていると、清志朗君が話しかけてきた。


「……あー、結芽? ジーラに君の事を尋ねられたんだけど……君から答えてくれる? 一応プライベートな事だから本人に聞いてって言ってたんだ」


「な……なに?」


 私は上半身を起こして視線を清志朗君からジーラへ移した。

 ジーラの視線が外れた。ベッドに座ったまま前屈みに手を組み、アークの方を見ている。

 アークは戸口の横にこちらを向いて立ったまま、目線だけをジーラに向けた。


「アーク。お前と結芽はどういった関係なんだ?」


「秘匿事項デス。管理者キーガ必要デス」


「!!」


 ジーラの問いに、アークが何だか懐かしい台詞を吐く。私は驚いて口元を押さえた。


「さっき思い付いて聞いてみたら、こんな調子なんだ。清志朗に聞いても貴方に聞けって言われるし。……結芽。貴方とアークは、どういった関係なんだ?」


「それは……」


 その時コマンド画面が目の前に現れ、ビクッと体が震える。


 ……っ! 久々でびっくりしたぁ!!! でもよく考えたら昨日ぶりくらいかな?


 黒背景、白文字でこう書かれていた。


《運命の分岐点》

1結婚してます。

2未来と過去の彼と結婚してます。

3結婚したようで結婚できていません。

4あなたに関係ありませんよね?

5秘密です。教えたくありません。

6何でそんな事聞くんですか?



「え!? ここってそんな運命が分岐しちゃうところなの!??」


 既に画面をジーラに見られているので、分岐とか意味ないのでは……? と考えたが、ジーラは首を捻っている。


「何て書いてあるんだ?」


「!!」


 そうか。この文字……日本語で書かれているから彼には読めないのだ。


 この受け答えで運命が分岐するなんて……何故? って思いながらも、チュニックのポケットに入れていた鉛筆を取り出す。

 早くしないと、みんな寝る時間が遅くなっちゃう。


「うーん」


 正直、どの選択肢でもいいと思うんだ。


 まさかジーラが私の事を好きとかでもないだろうし。


 彼にはルミフィスティアがいるし、私にもアークがいる。

 ジーラの事は嫌いではないが、恋愛的な感情はない。最初の出会いが違っていたら……例えばルミフィスティアやアークより先に私たちが出会っていたら、もしかしたら彼を好きだったかもしれない。




 ……あれ? もしかして……今の状況って……そうなってたりしてない?



 彼の初めて会ったルミフィスティアって……今、私だったりしてるよね? あれえ???



 冷や汗がダラダラ頬を伝う。



 私の場合は違うけど、ジーラにとって今の私は…………初めて会った『ルミフィスティア』なんだ。ルミフィスティアの大事なポジションを私が奪っている。




 この時、私はやっと清志朗君の言っていた問題点に気付き始めていた。


 そのねじれに、気付くのがちょっと遅かったかもしれない。



読んで頂きありがとうございます。

もしよければ下の「☆☆☆☆☆」から評価・応援して頂けると励みになります。ブックマークもとても嬉しいのでどうかよろしくお願いします……!

――――――――――――――――――――

100.見出だす者

今晩は、樹みのりです。あらすじも入れて百話目になりました。ここまで続けられたのも読んで下さった皆様のお陰です。ブックマーク、評価も本当にありがとうございます!


(前書きを再掲載しました。2022.2.12)

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