私が微笑の聖女と言われたのは訳がありました…。殿下にいつも笑っていて気持ち悪いから婚約破棄して、表情がくるくる変わってかわいい妹と婚約したいといわれ、大切なものを妹にとられ続けた私は絶望し…
「いつも笑っていて気持ち悪い」
私は婚約者の殿下にこう言われました。
悲しい、寂しいなどの感情はありますがどうしたってそのような顔ができないのです。
これには訳がありました…。
いつも悲しい顔で笑っていたお母さま。お父様は政略結婚で愛がないと言い切りいつも愛人のところに通っていました。
お母さまはお父様に辛気臭い顔をするなとなじられいつも笑うようになったのです。
私も笑っていてと言われずっと微笑んでいました。
そのお母さまが亡くなり、私は涙さえ流さない冷たい子だといわれ悲しい顔すらできないことに気が付いたのです。
愛人は腹違いの妹を連れて乗り込んできて我が物顔に女主人として振舞いました。
私は離れに捨て置かれ父は妹がいつもお姉さまがいじめるの~と言って泣きつくたびに私を冷たく見て平手で頬を打ち私を蹴り飛ばしたのです。
本当に私の子か? と言われることすらありました。
「今日も顔にあざがついてる。私をいじめるからよお姉さま!」
妹と継母が離れにきて大切な母の形見の鏡を持っていきました。
いやだといえば父にお姉さまがいじめると妹が言うからです。
殴られけられ、食事すら与えられない日々がはじまるからです。
何も感じないようにしていつも笑っていればいい。
私は15で聖女に選ばれ神殿に迎え入れられたとき、こんなとこに来たくなかったと同僚が言っているのを聞いてここは天国だと思ったほどです。
どんな修行もあの地獄の日々と比べたら…。
「聖女にお前のような出来損ないの妹いじめの女が選ばれるとは…」
父は最後私に言って冷たい目で睨みました。
継母と妹はあんたが聖女なんて何かの間違いよと怒り狂っていました。
「…聖女とは己の寿命を削り、癒しを行う存在ですか」
「そうです。だから平均寿命は30歳ほどです。最年長の聖女で28歳です」
聖女と呼ばれる人は十人ほどいてその人たちも若くして死んでいくと聞きました。
そして最年少の私が王太子の婚約者に選定されたのです。
寿命が短いと聞いてもそうかと思っただけでした。
私の心はもう何も感じなくなっていたのです。
「お前みたいなやつが婚約者なんて最悪だ! 私には真実愛する人がいるんだ!」
殿下は私を見ていやそうに顔を歪めました。お父様が私を見る目にそれはよく似ておりました。なので私は心の傷など殿下にお話もできず。
離れの宮を与えられ、放置されていました。
半年後、殿下に呼び出され私は…。
「ミレニア・カラード。お前は妹のミランダをいじめていたそうだな。その罪により婚約破棄し辺境送りにする!」
私は殿下に宣言されたのです。何も感じません。
予測はしていました。にやにやと笑う妹が横に立っています。
「私をいつも虐めて愛人の子って言いましたよね。お姉さま!」
「……」
「お母さまはいつも愛人と言われて泣いていましたわ!」
それは逆でした。お父様の子じゃないといわれお母さまのことをいつも愛されてもいない妻だと継母はなじったのです。
「まだ笑うのか気持ち悪い! お前みたいなやつ本当に気持ち悪いんだよ。くるくると表情が変わるりすのようなミランダのほうがかわいらしい! 泣いてみろよ!」
私は衛兵に棒でぶたれても笑っていました。
確かに気持ち悪いと私も思います。
でも心が凍って泣くことすらできません。
私は辺境行きの馬車に乗せられました。そして途中で盗賊に襲われて、首領の前にひきずりだされました。
魔法使い崩れの人のようでしたが知性があり盗賊たちとおっても統率がとれているようでした。
「肝が据わった女だな囚われてもなお笑うとは」
「笑いたくて笑っているのではありませんわ…」
「え?」
私はここであらいざらいぶちまけてしまおうと私の生涯をこの見も知らぬ盗賊の長に話してしまったのです。
目を丸くして聞いてる長。
「お前…ひどい人生を送ってきたのだな」
「…でも盗賊のあなたと比べればまだましな人生かもしれませんわ」
「いや俺よりもひどいなそれ」
私はなぜか盗賊の首領にまで同情されました。しかも配下の人まで泣いています。
結構この人たち情に厚いのですか?
「いや一応盗賊といっても実は……」
話を聞くと隣国の偵察部隊で盗賊に身をやつしているとか…聖女が辺境送りになると聞いてその身柄を確保しに来たと聞いて驚きました。
「私の力は…」
「まあそんな力いらんと俺たちの上もいいそうだし一応ついてきてくれるか?」
私はルランと名乗った首領に連れられ隣国の城に行きました。そしてルランは宮廷魔法使いでその主は王太子と聞いて二度驚きました。
私はそこで人として扱われ、ルランの手伝いをすることになったのです。
私は魔法使いとしての適性もあったようで。
「聖女っていうのはひどい扱いを受けているんだな」
「まあそうですわねえ。でも屋敷にいた時よりはましでしたわ」
私は我が国のわかるだけの情報を話しました。だって良い思い出なんて一つもないところですし…。
あの妹と元婚約者のことはかなり実は恨んでいたことが分かったのです。
隣国の王と王太子はその情報をもとに我が祖国を攻め落とし、ルランと私も同行しました。
ルランがケガなどをしたら癒したいと思ったのです。
「…ひい、笑わずの聖女だ!」
「裏切り者だ!」
「お姉さま、助けてくださいまし、お願いです。お姉さま!」
私は笑いもせず命乞いをする妹と元婚約者たちを見ていました。
「助けてくれ、な? 私はこれにたぶらかされただけなんだ! 真実愛しているのは君だけだ!」
私は首を落とすか? どうするかとルランに尋ねられどちらでもいいと答えたのです。
父はルランの千年牢に入れられて永久に闇の中さまよい続ける刑罰をうけたのです。
でも王族は殺さないと示しがつきません。
元婚約者と妹は首を落とされ、その首は王城をかざりました。
私はただそれを見ているだけでした。
「どうだ?」
「なんとも思いませんわ。ルランが無事でよかったと思うだけです」
「そうか……」
私はルランに抱きしめられ首だけになった妹と元婚約者を憎いと思っていた気持ちが消えていくのを感じていました。悲しいなんて全く感じません。
でもルランが死んだら悲しいです。
私は……初めて心の底から笑いルランもそんな私を見て微笑んだのでありました。
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