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禁則事項
「だけど、クレジットカードが使えればこっちのものだ。
おいっ! 女神っ!
さっきの『転移』はなしで、やっぱり『転生』にしてくれ。
この際、三万五千円なんて気にしている場合じゃないからな」
「えええええええ、今から変えるんですか〜?
それは、ちょっと面倒くさ……。
いえ、やっぱり駄目でした。
『禁則事項です』」
「おい、お前、いま面倒くさいから嫌だって言いかけてたよな?」
「禁則事項です」
「だって、さっきお前は……、」
「禁則事項です」
「あいうえお、かきくけこ」
「禁則事項です」
この女神、面倒くさいばっかりに何がなんでもやり直す気がないようだ。
うーん、悔しい。悔し過ぎる。
だが、何の力もなく異世界に放り出される前で、クレジットカードの存在に気付けた事をもっと有効に使うべきだと悟った。
「うーん、じゃあ、もう分かったよ。もう『転移』で良いから。
その代わり俺に、もの凄い力を授けてくれ」
「はい、わかりました」
女神がそう答えると、俺の半歩前の一点から緑色の光が輝き始めた。