ミッチーとの遭遇
翌日の朝
俺達三人は、仕事をもらう為に冒険者ギルドじゃなく、へローワークの玄関に来ていた。
手拭いを手放し黒い炎で局部を覆ったオリビアは、初めての訪問である。
「何か嫌な予感がするが……」
俺は、恐る恐る扉を開けた。
「ハハッ(笑)
ようこそ! へローワーク・ワールドへ!」
かん高い声で扉の前に待ち構えていたのは、例の黒いネズミの着ぐるみだった。
それを見た刹那、オリビアが猛スピードで後ろに下がって叫んだ。
「二人共、下がれっ!!! モンスターだっ!!!」
俺と女神は、上を見て、顔を見合わせ、最後に黒いネズミを見た。
「もしかして、僕がモンスターだと思ってるのかい?
ハハッ(笑)
これは、笑えるジョークだね。
確かに僕は人気者スターだからね」
「モンスター以外にこんなにも邪悪そうな黒い巨大なネズミがいるものか?
言葉を喋るし知能はあるな。
悪魔クラスなら厄介だ! 早くこっちへ!」
完全に勘違いしているオリビアに、俺は事実を伝えようと口を開いた。
「大丈夫だよ、オリビア。
これは、まあ見ようによってはモンスターに見えなくもないけど、ただの着ぐるみだよ。
この中にはちゃんとヒトが……」
ヒトが入っていると説明しようとした瞬間、引きつった顔の黒いネズミが俺の首を猛烈な勢いで絞めてきた。
「ハハッ(笑)
何を言い出す気なんだい? 君は?!
僕の中には、誰も入っちゃいないよ! 誰も!
これは本物の生身の体だからね。
それとも妙なことを言って、このまま地獄へ落ちたいのかい?」
絞める力は、だんだん強くなり意識が遠のく。
「わたしのダーリンに何するんですかっ!!!」
チ―――ンッ!!!!!
女神に股間を思い切り蹴り上げられたネズミは、その場へ崩れ落ちて動かなくなった。




