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ゲス・シンパシー

 俺を呼ぶ声の方を見ると、そこにはドザえもんがいた。

 足早にこちらに進んで来るのが見えて、その後ろにはオリビアが続いていたが、なんだか歩き方がおかしい。俺から見てドザえもんの後ろにチョコチョコと隠れながらこちらに近づいているように見えるのだ。

 何故、そのような様子を見せているのか?

 それは、俺と女神の近くまで来た時に俺は気付いた。


「あれ? オリビア、その胸とお尻を隠していた黒い炎の鎧はどうしたんだい?」


 見ると恥ずかしい部分を着物の代わりにギリギリ隠していた黒い炎は消えていて、以前と同じような手拭いをその身体の前で広げている。


「うっ、うるさいっ!!!

 こっちを見るなっ! この変態っ!!!」


 俺はそう言われてさらにマジマジとその様子を観察した。それをあっかんべーで返す半裸のオリビア。

 すると、代わりに答えたのは女神の持つシリー。


「それは、ここが地獄だからかもしれません。

 ここには、現世にあった魔法の原動力となりえる魔素が全く検出できませんでした。

 黒い炎の鎧は、強力とはいえ魔法のひとつなので現出させること自体が無理なのだと思います」


 そして、今度はドザえもんが誇らしげに言う。


「僕も始め見たときは驚いて、鼻血を3L程流してしまったよ。

 だけど、そこは子供たちの憧れる存在であるボク。

 全身青タイツの紳士としてこのポケットからその手拭いを取り出してオリビアさんに貸してあげたんだよ」


「うーん、言ってることがよく分らんのだが……。

 それにしても、その手拭い、昔にオリビアが使っていた柄とソックリだな?」


 そう尋ねると、ドザエもんの白塗りの顔が一気に青ざめた。


 ピロリロリン♪


 俺の頭の中で高い電子音が鳴る。

 この音は俺の第六感が閃いた時になるオノマトペ。

 俺は、ニュータイプだったのだ。

 このドザエモンが貸したという手拭い、実はオリビアが持っていたものである。

 以前、ドザエモンは留守を狙ってオリビアの部屋に忍び込み、オリビアの下着を盗もうと企てたものの、いざ洋服タンスを開けたらこの手拭いしか入っていなかったのだ。

 少しだけクンクン鼻先へ持って来ると、女性特有のいい匂いがする。

 目的のものはなかったが、なんとなくその手拭いをポケットにしまい込んでしまったドザエモン。

 その過去の出来事が映像として俺の頭の中に流れた。


 あらためて青ざめたドザエもんの顔を見ると、片目をしばたいて必死になってウィンクしている。

 それは、「お願いだから、黙ってて下さい」とモールス信号を送ってるように感じた俺。

 同じように俺も片目をしばたいてモールス信号を返信した。


「大丈夫だ。問題ない。

 俺も、こっちのオリビアの方が大好きだ」


 ちなみに、俺もドザエもんもモールス信号を使うことはできない。

 あくまでもそんな感じがするだけの、ゲス・シンパシー。




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