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戦力はない。戦況は最悪。策もない。だが、諦めるわけにはいかなかった。

金属と金属が激しくぶつかり合って火花が散る。



「どうしたぁ! はぁはぁ……おら! ぐぇぇ……」



目の前の敵へ上段から力いっぱい斬りかかると、そのすきを狙われ横から別の兵士が槍で深く鎧の隙間へ刺しこみ、絶命した。


この場は一対一ではないのだ。一対複数と考えて戦い、できるだけ味方と連携しながら戦わなくては生き残れない。


目の前や横の敵だけが全てではない。遠距離から矢は飛んでくる。そのさらに遠方から魔法も飛んでくる。


警戒をおこたった者から地面へ倒れていく。



「魔法が来るぞー!」



ガンガンと遠くで太鼓たいこを叩く音が聞こえてくる。


遠距離から敵の動向を見張る者からの信号だ。敵の攻撃を一人で全て把握はあくすることは不可能。戦場では全員の目として動くだけの味方も存在した。


全員の警戒が遠方にうつる。


魔法が来ることがわかってもどこに飛んでくるかは自分の目で見て、かわさなくてはならない。


幸い、魔法による攻撃は雷属性や光属性を除いて発動から着弾まで少しだけ時間がある。ベテランになれば敵兵の動きからある程度の予想を立てる事も可能だ。味方を巻き込むような攻撃は、よほどのことが無ければしないのだから。


兵士の警戒の中、人の頭ほどの火球が上空に複数発生する。


その数100。それが避けにくい曲線を描いて飛んでくる。


直線だと軌道を読みやすいが、曲線となるとそれだけで滞空たいくう時間が長くなり当たる可能性が増える。


それが100だ。


広い戦場といえど開けた場所であるここでは身を隠す場所もなく、かなりの数を被弾し、戦線が崩壊ほうかいするのは目に見えている。


戦況が決まってしまう攻撃だが、一方だけに魔術師がいるわけではない。魔術師によるシールドがエリア全体に張られる。長時間張り続けられるものではないが、火球100を一度に防ぐには十分な威力を発揮する。



「ここを抜かれるわけにはいかない……どうする。なにか考えろ俺!」



指揮官は戦況を見て爪を噛んだ。この後ろには村がある。領民が住んでいる。勢いがすごく、逃げる時間すら稼げそうにない。


数も気迫も何もかも負けている。敵は魔術師もしっかり揃えて、兵士も装備はいいものばかりだ。


対する味方は突然の攻撃に急ごしらえで集めた少ない兵士と戦線が崩壊した瞬間に逃げ出す事を条件として高い金で雇ったハンターの魔術師しかいない。


何もかもが突然だった。指揮官に策はない。


だが、諦めるわけにもいかなかった。

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