通信の魔道具〜緊急事態はなかなか伝わらない〜
建物の一室で魔道具による通話が来たことを表すピーという音が鳴り響いた。
通常、点検以外で鳴ることのない青い丸の紋章が入った石のようなその魔道具を一人の兵士が持ち上げて魔力を通す。
“緊急! こちら王国国境部隊! 攻撃が……あの、国境の壁が崩れて。魔法! でかい火の玉による攻撃で! サウスハード王国から兵が……! 大量に! 急いで兵を送って、送らなければ大変な事に!”
要領を得ない兵士の通信。焦って震えた声。
明らかに異常事態が発生した事が伝わった。
何が起きたか理解するのに時間はかかったが、魔道具を持つ兵士の顔色が無くなっていく。
「これは……大変だ!」
慌ただしく部屋を飛び出し、近くの部屋で仲間と談笑している上司へ報告する。
「緊急事態! 侵略が発生! サウスハード王国側の国境部隊より通信! 国境の壁が魔法による攻撃で破壊され、王国から兵が大量になだれ込んだとのことです!」
「……」
ハキハキと間違えないように、先程受け取った情報をわかりやすくまとめて伝えている。
かなり頭が回るのだろう。
上司である兵士は沈黙の後に笑い始めた。
「ハッハッハッ!! なんだその冗談は。俺たちは今大事な話をしてるんだ。まあまあ面白いが、後にしてくれ」
「冗談ではありません! 今魔道具から――」
「聞こえなかったか? 後にしてくれと言ったんだが? 早く部屋から出て――ぐぎゃぁ!」
真面目に報告をしていた兵士の拳が椅子に座る上司の顔面を捉える。
椅子から落ちて地面を転がった。
「なにをする! 貴様!」
周りにいた上司と談笑していた兵士たちが手に剣をもって立ち上がった。
地面に寝転んだ上司はいまだに立てない。思いっきり殴ったのだろう。
「冗談ではない!! 1秒でも早く上に報告を!!」
あまりにも鬼気迫る顔と怒号。
この場にいる全員に緊急事態が伝わった瞬間だった。




