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すれ違いと自信と失墜

「痛っ!」



カリンが木の影から押されるように飛び出した。


まだ距離はあるものの目の前には魔物の群れ。カリンと魔物たちの目が合った。



「おい! 何やなってんだよ!」


「後ろから……プチプチ!?」



カリンを押した者の正体はプチプチだった。不意打ちで攻撃した事を誇らしそうに地面をはねている。


シールが魔力を貯めて魔法をカリンへ発動する。



「スピードアップ! もう無理だ。逃げよう」


「私が攻撃すればいいんでしょ。ちょっと待ってなさい」



カリンの体に魔力が貯まっていく。


すかさずゲドルがカリンを掴んで引っ張った。


詠唱に失敗したカリンの体から煙が上がる。



「ちょっとなに――」


「もうやめろよ! この魔物の数を相手にどうするんだよ! 俺たちお前に振り回されてるんだぞ! わかってるのか!」



まだ距離はあったが、ムーンフェイスには魔法による攻撃があった。


ゲドルたちは名前と姿かたちしか知らなかった。どんな方法でどんな攻撃をしてどんな動きをするのかを全く知らないのだ。


ハンターとして経験があれば知らない敵と戦うということは十分警戒しなくてはならない場面だが、彼らは警戒をしなかった。



「立て直して出直そ……ぎぃぃ!!」



ゲドルが歯を食いしばりながら悲鳴をあげた。


ムーンフェイスによる光属性の魔法を遠距離から浴びる。


逃げようと後ろを向いたところを撃たれ、装備していた皮の鎧の背中部分は焼けて丸い形にくり抜かれたように溶けていた。


その奥の本体、ゲドルの皮膚を焼いた。



「ゲドル!! シール、ゲドルが! どうにかして!」


「隠れて! 早くゲドルを連れて木の影に!」



カリンはシールに言われるがままゲドルを引きずるように木の影へと移動する。



「ど、どうしよう、どうしよう……背中が大変……」



ゲドルの皮膚は黒く焦げて出血も見られた。



「ぐ、ぐぐぎぎ、に、逃げろ。俺は体に力が入らない……」


「カリン! こっちにゲドルと一緒に来て! 早く!」


「無理よ! ゲドルを抱えてなんて歩けない!」



シールは少しだけ離れた位置まで移動していた。


木の向こう側からケテケテの足音とプチプチの体を弾ませる音が近づいている。


ゲドルたちからは確認しようがないが、ムーンフェイスも近づいているだろう。


その時、シュッと風を切る音がゲドルたちの耳に届いた。


その数7回。


足音が止まった。


しばらく何が起こったかわからずゲドルを抱えて身動きを止めたカリンの元に木の上から人が飛び降りてきた。



「……大丈夫? ひどい怪我。メルトリゥが来るからそのままで」



木の上から飛び降りてきた影は緑のクチバシの弓使いアタリだった。矢を魔物から引き抜いて矢じりが潰れてないか確認して矢筒やづつへとしまっている。


一本も目標から外してはおらず、垂直に入った矢にダメージは見られない。



「大丈夫かい? ここは今変異種が多い。気をつけないといけないよ」


「はい……」



メルトリゥの有名人オーラに圧倒されたカリンは返事しかできない。


メルトリゥが緑の液体の入った小瓶を腰の皮ポーチから取り出した。



「ぎぎ……」


「ひどい傷だ。これをかけてやるといい。すごく効く回復薬だ。多分……いや、絶対治る」


「あ、あの! 私達お返しできるものが――」


「いらないよ。そもそもそれはタダ同然で手に入れたようなものだからね。気に病む必要もない」



メルトリゥの後ろから緑のクチバシのメンバーが追いついて森の奥へと姿を消した。


カリンはその後ろ姿を目で追いながら薬を手のひらで握りしめる。


シールが走り寄ってきて「カリン!? 薬を握りしめてなにしてんの!? もらった薬を早く塗らなきゃ!」という声が森にむなしく響いた。

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