黒い魔物、総攻撃戦
ゴザーが地面へ盾を刺して構える。
盾役に攻撃を集中させて、攻撃役が一気に削り切る。
全員にサポーターがバフを追加して、後ろに下がった。普通の依頼ならサポーターといえど貴重な戦力なので攻撃に加わるが、危険度の高い依頼は戦闘には参加しないことが基本だ。
「長期戦は絶対無理、時間がかかればかかるほど不利になるわ。いいわね……」
ゴザーが石を黒い魔物へと投げる。
石が当たる瞬間、聞いたことの無いような衝突音と衝撃波があたりを流れる。衝撃波の影響はあたりの木の葉を散らすほどだ。
新調した盾は固く、ゴザーへの衝撃は前回より少ない。
「耐えれるわ!」
「火炎熱波斬!」
大剣を持った腕が丸太のように太い男が斬りかかる。振り上げた剣が炎を帯びて一回り大きくなる。
男の剣が魔物へ届くより早く2撃目がゴザーの盾を襲った。
凄まじい音が響く。後何回耐えれるのか誰にも分からないほど恐ろしい音だ。
「……攻撃が早すぎる」
矢を放つより2撃目が早い。木の上で矢を放とうと構えていた者が誰に言うでもなく呟いて矢を放つ。
火炎熱波斬が魔物の皮膚を切る。
真っ黒い血が吹き出して地面を黒く濡らした。
「ぐぅおおおおおおおおお!!?」
攻撃が当たった瞬間に、太い腕をした男へと攻撃が飛ぶ。
攻撃したままの大剣を胸の前まで持ってきてガードを入れるが、体がボールのように吹き飛んで後ろの太い木を一本へし折ると止まった。
歯を食いしばりすぎたのか、まともに食らっていないはずの口からは血が滴っている。
手にした大剣はひん曲がり、もう少し大剣の強度が低ければ胸を突き破っていただろう。
ゴザーへの3撃目は大剣の男と同時に攻撃されていた。
「気をつけろ! 同時に2人以上を攻撃できるぞ!!」
口から出た血を拭った男は自分のダメージや剣がダメになったことも後回しにして全員に注意を促す。
その声を聞いた矢を放った木の上の男は後ろへと跳躍した。
距離が少し離れていたのが良かったのだろう。彼が居た木の上部分は一瞬で魔物の攻撃により消え去った。
「魔素の流れを氷の刃へ変換! アイスソード!」
詠唱は魔法使いの派閥により変わる。魔法とはイメージの力が強くでるため、詠唱の種類も沢山あった。
無詠唱の魔法使いもいるが、無詠唱では人に教えることができないため師を持つ基本的な魔法使いは時間を多少取られるが詠唱をする。
放たれた青い氷の刃が魔物に刺さるが、木の上の弓使いへの攻撃とゴザーの構える盾に攻撃を行っていたため魔法使いへの攻撃はなかった。
「2人までしか攻撃できないみたいだ! 盾!!」
ゴザー以外にも盾をメインにするものは多い。
ゴザーのようなタワーシールドではないものの、中量程度の鎧を装備して体の一部を守る程度の大きさの盾を持った者がゴザーの横にならんだ。
「ふぅー。こりゃすげぇこえぇな」
「あたしも、そろそろきっついわね」
ゴザーは既に5発の攻撃を盾で受け止めていた。隣に並ぶ男はバフを受けてはいるものの、1撃、よくて2撃防げればいいほうだ。
隣の男が力まかせに石を投げてヘイトを買う。
狙い通り攻撃が飛んできて足で地面を擦りながらサポーターのいる最後方まで滑っていく。
同時にゴザーの盾も攻撃を受けていた。先程までと明らかに違う音にゴザーが舌打ちをする。
「盾が曲がったわ! もうもたないから早くして!」
ゴザーの盾は見るからにへこんでいた。一発一発、確実にへこんでいたのだ。
「まだ魔力の練りは甘いが仕方あるまい。魔力より作るは土の剣! 百剣!」
「「魔力より作るは土の剣。 百剣」」
ずっと魔力を練り上げていた緑のフードを被った魔術師の杖から魔力が迸り魔物を囲むように土の剣が現れる。
続くようにして後ろに控えた同じフードの魔術師2人も同じ魔法を唱える。
合計300本もの剣が魔物の皮膚を突き破って刺さり、黒い血液が一気に吹き出す。
「魔素の流れを鉄の壁に変換! アイアンウォール!」
百剣を使った魔術師の後ろから緑のクチバシのメンバー、ケイリーがアイアンウォールを唱える。
魔術師を狙った一撃はアイアンウォールに阻まれ、壁は音を立てて砕け散った。
その一撃を最後に動きがほとんど無くなり、近接メンバー全員の総攻撃でとどめを受ける。
その場にいた全員、満身創痍で喜ぶよりも膝に手を置いて肩で息をしていた。




