依頼が来た
「お、よかった。本当に居てくれて」
ぼーっと子どもたちを眺めるだけの俺の前に現れた。
確か、メルトリゥとか呼ばれてた金髪の男だ。
今日はメンバーを連れていないようだな。
「どうだ? 鍛冶場は用意できそうか」
結構時間がかかっていたところをみると、用意できなかった可能性もあるかと思ってこちらから聞いてみた。
「ああ、いや。鍛冶場は直ぐに決まったんだが、コレをメンバーで集めてて遅くなったんだ」
そう言って渡してきた物はひん曲がり3等分に引き裂かれたようなタワーシールドの残骸だった。
一体なにがあったらこうなるのだろうか。まあ、詮索はやめておこう。
「よかったら盾を作るのに使ってくれないか。……今ではそんなだけど、結構良い盾だったんだよ。ゴザーも気に入ってたしさ」
「なるほど。わかった、ありがたく使わせてもらおう」
「鍛冶場はしばらく休みの鍛冶場があったんで明日から3日貸し切りにさせてもらってるんだ。そこを使ってもらったらと思うんだが……そういえば君の予定を確認してなかった。しまったな……」
口に出したとおりにしまったというような顔で固まった。
むしろ今からでもよかった、暇すぎるから。
それに3日も借りたのか。まだ鍛冶スキルを使ってないからなんとも言えないな。それぐらいかかるものなのかもしれない。
「いや、明日だな。大丈夫だ」
使って良い鍛冶場の場所を聞いてその家の鍵まで渡してもらった。
……不用心じゃないか? それほど知りもしないやつに家の鍵を渡すとか。
まあいいか。
鍵を渡すとメルトリゥは去っていった。
あ、報酬について話してなかった。できてからでもいいか。
向こうも信用してるみたいだし、こっちも踏み倒されないと信用しよう。
また一人の時間がやってきた。
何か作ろうにも材料も何もないので、渡されたタワーシールドの残骸をパズルのように組み合わせてみる。
パズルといっても3ピースしかないからすぐだ。
だいたいどんな盾なのかわかった。
タワーシールドなのは聞いた通り、1m80cmはありそうなファンタジーな盾だ。重さ的にも元の世界では使い物にならないレベルだろう。
ゆるくカーブした長方形型の盾だ。地面に刺すタイプじゃない。
持ち手部分も裂けてぐにゃぐにゃになっているが、そこそこ太い鉄の棒が両手で持てるように横向きに付いていたのがわかった。
凄まじい攻撃を受けたんだな。
少なくともこれよりは良い盾を作ってあげたい。
これと同じような盾にするべきか、冒険して違う形にするか。
後はどれだけの時間がかかるか……。
「なあなあ! みどりのクチバシとともだちなの!?」
メルトリゥが去った後に子どもたちの壁ができていた。
ああ、そういえばアイツらなんか人気があるんだったか。
木の玉を買ってくれた子どもが困った顔をしてこっちを見ている。
これは仕方ないだろう。かわいそうに。どうすることもできずに泣きそうになっている。
こんなことで怒りはせんよ。安心せい。
どうせ客も来ないし、子どもたちの相手でもしていよう。
「友達じゃないぞ。知り合いだ」
「すげぇ! しりあいだって!」
キャーキャーワーワー。
知り合いでもすごいことらしい。
緑のクチバシのおこぼれをもらって俺も人気者だな。
やることないしどうせ客も来ないしで俺も子どもたちと遊ぶか。
「よし、じゃあお前たち。こいつを自由に使っていいぞ!」
そう言って色の付いた積み木を指した。
子どもたちの顔をみるとキョトンとした顔をしている。
「なにこれ。なげるの?」
「投げちゃだめだ。絶対に。こうやって……」
積み上がった積み木からいくつか取って積み上げる。
「はい、お城〜」
「すっげぇ!」
適当にお城のように組み上げただけだが、大喜びしてくれた。
見た目は……お世辞にも良くない。まあ、子どもたちが喜んでるからいいんだが。
「そして〜」
指でつついてバラバラに崩す。
「ああー!!」
「こうやって崩すんだ。そうしたらまた新しい物が作れるだろう?」
いつまでも完成したものを置いておくわけにもいかないから、ここまでがルールだと教える。
そして争奪戦が始まった。
かなりの積み木を作ったから無くなることはないだろう。
これで暇じゃなくなると喜んでいたが、今度は忙しすぎる事態になってしまった。
「これどう!? すごい?」
「みてみて! こっち!」
「ねえねえ!! わたしがさき!!」
体が揺さぶられる。
俺は引率の先生じゃねぇ! と怒鳴るわけにもいかず。
「お、スゴイな」「天才か?」「これ程とは」「やるな!」と適当な返事を繰り返す。
もう店どころではない。
これはこれで楽しくはあるので、まあいいか。




