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薬はまだか!!!!

「薬は届いたか!!」



出ていったのはついさっきだ。まだいくらも経っていない。


受付にいる線の細い男は、あ然として固まっている。


届くわけがないだろうと。



「届いたか、と聞いている!」


「い、いえいえ、まだ今しばらくはかかるかと――」


「今しばらくとはいつまで待てばいい!!」


「それは……今しばらくとしか、我々も言いようがございませんが」


「わかった。俺が薬を錬金術ギルドへ取りに行く。それは別に構わないだろう?」



しばらく受付の男がどうするべきか考えていると、後ろから大きな老人が顔をのぞかせた。



「まあ、いいんじゃないか? まだできとるとは思わんが」


「サトールさん……」



サトールと呼ばれた老人の助けで受付の男が、ほっと胸をなでおろす。


構わない事を伝えると、待たされていたのにイライラしていたのか何も言わずに走り去っていった。



「やれやれ、2級といえども未熟も未熟。まだまだ青いのぉ」



大きな体で肩をすくめながら、みんなに聞こえるように大きな声を出した。


ギルド職員も受付の順番を飛ばされたハンターも、サトールの一言で溜飲りゅういんを下げる。


みんなメルトリゥの身勝手な行動に少なからずストレスを感じていたようだった。



――――――――

――――――

――――



メルトリゥは自分のせいで酷い傷を負わせてしまった仲間の苦痛を早く取り除いてやりたいだけだった。


なぜ、回復士がいないのか。


高級な薬がないのか。


この街のために危険をおかしてまで来たのに、そんなに他人事なのか。


感じたことのない怒りと解決できない自分への不甲斐ふがいなさ、この全ての憤りを発散することができないもどかしさで頭がどうにかなりそうだった。


気づいたら錬金術ギルドの扉を破壊していたが、そんなことはどうでも良かった。



「薬はまだないのか!!」



怒号に近い声。


別にギルドの職員が悪いわけではない。それは頭でわかっていても、どうすることもできなかった。


暴れだしたい気持ちをどうにか抑え込もうとするも、さっきの疑問が湧いてくる。


なぜ、回復士がいないのか。回復士さえいれば金を積んでどうにかなったのに。金はあるんだ。どうにかなると思っていた。


回復薬もない。いくつも回ってもどこにもない。錬金術ギルドがすぐに手配できないということは、ギルドの在庫にすらない。ふつふつと怒りが湧いてくる。



「なんでこの街の店はゴミみたいな回復薬しか置いてないんだ!」



考えるのをやめることにしたようだ。怒りしか出てこないのだから。



「これはメルトリゥ様。ギルドの代理で?」


「そうだ。ギルドが緊急の薬の手配をしたと聞いてきた! まだなのか?」


「いえ、丁度今そちらのアカ様から納品いただいたばかりですよ」



受付が指す方には全身を鎧に身を包んだ男がいた。


メルトリゥは彼に見覚えがあった。不思議な装備をした奴で忘れようとしても中々難しいのではないだろうか。



「ん? あのときの、鎧男」



向こうがあの時こちらに気づいた様子が無かったのに気づいたメルトリゥはしまった、と思う。


それは相手がハンターでも冒険者でも商人でも農民でも、あの時あそこにいましたよね、というのはよほど気心の知れている仲以外ではありえない詮索せんさく行為だった。人には知られたくない秘密な事をしている場合があるのだから。



「会ったことはないと思うが?」



声色こわいろに感情がこもっていない。


メルトリゥにはそれが怒っているように感じた。



「いやいや、こちらが勝手に見ただけだ。少し印象に残っていただけだから、気にしないでくれ」



メルトリゥの焦りや怒りが少し落ち着いてきたように感じる。



「……そうか」



それだけ発した鎧男は何も喋らなくなった。


第一印象は最悪だ。かなり警戒している、とメルトリゥは考えていた。


気まずい空気に耐えかねたメルトリゥは、受付の言っていた事を思い出して口を開いた。



「錬金術師だったか。薬は間違いないのか?」


「それは俺にはわからない。怪我けが具合ぐあいもわからないしな」


「我々錬金術ギルドも依頼以上のしなを納品いただいたのは間違いないと思います」



まだ動揺しているようだ。薬の是非をここで確認しても仕方がない事に言われて気づいた。


受付が緑の液体の入った回復薬をメルトリゥの前に置いた。


毒々しい薬にメルトリゥの顔が引きつる。


栓がしてあるはずの瓶から、草の香りがメルトリゥの鼻まで届いた。



「これは……飲ませればいい、のか?」



副作用がありそうな見た目と匂いにメルトリゥは困惑しているようだ。



「飲みたければ飲んでもいいが、体に直接かけても効果は変わらんよ」


「そうか、わかった。僕は急いで仲間の元に戻らせてもらう!」



仲間が待っている。


思い出したメルトリゥは壊れた扉に視線を一瞬向けたが仲間を優先しようと走り去っていった。

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